ドイツ語多読本:Wulf Dorn: Mein böses Herz
ヤング・アダルト向けサイコ・スリラーといったところか。
そろそろ本格的に長編小説にも挑戦してみたい、という人にはよさそう。文章は平易で、ストーリーもサスペンスの緊張感があって、楽に読み進められるはず。
Wulf Dorn: Mein böses Herz
86000語
母親と二人、田舎町に引っ越してきた16歳の女の子Doro。心機一転、新しい生活を始めよう、というのだが、1歳半の弟の死をきっかけに両親は離婚、Doroは弟の幻を見たり、幻聴を聞いたりするようになって入院・・・そんな過去からの決別を意図してのこと。
だが、事件は起こる。引っ越してすぐ、Doroは家の庭で、痩せ衰え、何かに怯えた様子の少年を発見、警察に連絡するが、警察が来たときには少年は消えている。警察も母親も、隣の家に住むDoroのカウンセラーも、少年の存在を信じない。幻覚でも見たのだろう、今でもカウンセリングが必要な状態なわけだし・・・というわけ。
唯一その少年探しを手伝ってくれたのが、カウンセラーの息子のJulian。それはDoroにとって少し救いになるのだが、すぐにまた驚きの事実が判明。Julianがやっているバンドのポスターに問題の少年が写っているのを発見。そして、その少年は先日自殺したというのだ・・・。
Doroは本当に少年を見たのか、それとも幻覚を見たのか?
もちろんDoroは少年の存在を証明しようとする。それは自分が狂っていないことを(自分自身に対しても)証明するための戦いでもあるからだ。
その過程でDoroはまた幻覚や幻聴に悩まされることになる。弟の幻や昆虫の眼をした少女などが現実と地続きに現れてくるので、今は現実なのか幻覚なのか、いつ幻覚の世界に入り込んだのかわからない緊張感がある。
少年探しの行方も気になるが、気になることはまだある。それがストーリーのもうひとつの焦点。
弟が死んだ時、家に両親はおらず、Doroは弟の子守をしていた。そして、その時の記憶を失っている。つまり、自分は弟を殺したのはないか?
そして、少年探しの進展とともに、その時の記憶が少しずつ蘇ってくる・・・。
そんな感じのストーリー。長いが、勢いに乗ってしまえば、飽きずに読めると思う。
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