カテゴリー「ドイツ語児童書」の記事

2018年7月29日 (日)

ドイツ語多読本: Haruo Yamashita / Kazuo Iwamura : Abenteuer am Meer. Sieben kleine Maeuse gehen baden

今の季節にぴったりの海水浴の絵本。
ドイツの絵本は日本人とは別の感性で作られていて、その異国の雰囲気がおもしろみだったりするが、これはオリジナルは日本の絵本。日本人の感覚にぴったり、その心地よさがある。

Haruo Yamashita / Kazuo Iwamura : Abenteuer am Meer. Sieben kleine Maeuse gehen baden

429語

7匹の小ネズミの物語。
夏休みに入り、家族で海水浴へ。前日は浮き輪の用意をするお父さんのまわりでは、子供たちが地べたでクロールしたり、釣りの真似をしたりと、海水浴が楽しみで仕方がない様子。

そして当日、満員電車に揺られ、海に到着すると、すごい人混み。でも、ちょっとした入り江を発見。

お父さんは見張り台がわりの岩の上に陣取り、前日浮き輪に結びつけていた紐をつかんで、浮き輪で海に浮かんで遊んでいる子供たちが沖に流されないように監督。

ひとしきり遊んだら昼ごはん、そうするととうぜん眠くなって昼寝・・・。と、海水浴ではお馴染みの光景が、ほのぼのとした絵柄で生き生きと描かれていている。

ところが、寝ている間に潮が満ちてくる。見張り台の岩の上で寝ていたお父さんが海に取り残されてしまう。お父さんは泳げないのだ・・・。

そんな波乱もありながら、帰りの夕暮れの薄茜色の電車の中で居眠りするネズミたちの姿は本当に微笑ましい。

そんなごく当たり前のお話だが、海水浴の一日を描ききった感があって不思議と満足。

昼ごはんの笹の葉の上におにぎりというのは、ドイツ人にわかるのか? 口に入れているので食べ物だとはわかるだろうが。


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2018年7月22日 (日)

ドイツ語多読本: Chris Haughton: Pssst! Wir haben einen Vogel

静かに、という時は「シッ」と言ったりする。"Pst"。長く伸ばすと"Pssst!"。「シーッ」。

Chris Haughton: Pssst! Wir haben einen Vogel

104語

静かに、という時の身振りは日本と同じらしく、人差し指を立てて口の前に。
4人並んでいるが、大きくなるほど、顔も鼻も大きくなる、いかにも絵本のキャラクター、あるいは人形のような姿がコミカル。

なぜ「シーッ」なんてポーズをしているかというと、表題にもあるように鳥を捕まえようとしているからだ。一番小さいやつだけポーズを取っていないのは・・・。


背景のブルーからもわかるように時は夜、森の中。鳥を発見する4人組。「見ろ、鳥だ」。
だいたい一番小さいやつが間抜けなことをすることになっていて、「やあ、鳥さん」なんて声をかけてしまう。そこで残りの3人は「シーッ」。

抜き足、差し足、忍び足、とばかりに鳥に近づき、一番準備よし、二番準備よし、三番準備よし、と位置につく。そして「行け」と同時に飛びかかる。が、失敗。鳥はすました顔で逃げていく。

今度は木の高いところに鳥を発見。次は三番目に小さいやつが先頭になってチャレンジ。で、また一番小さいのが「やあ、鳥さん」・・・。

と、王道のパターン展開。それで、間抜けな一番小さいやつが最後は手柄を立てたりする、なんてのも児童書では王道の展開だなと思わせておいて、ひとひねり・・・気持ちよく予想を裏切ってくれる。ヒッチコックの「鳥」と言ったら言いすぎだろうが、連想してしまった。

話も絵もシンプルでわかりやすい。鳥に近づいて行く時、跳びかかろうとする時、失敗してぶつかりあったりする時など、それぞれの体の動きも見ていておもしろいし、絵で文もわかるはず。たとえば、schleichenという動詞は、鳥を捕まえようと近づいて行く時の脚の運び方なんだとわかる。そういう時どう体を動かすのかという感覚を通して言葉を知るべきであって、訳語で覚えようというのは心が貧しい。

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2018年7月16日 (月)

ドイツ語多読本: Tomoko Ohmura: Bette anstellen!

行列ができていると、先に何があるのか気になってしまう?

Tomoko Ohmura: Bette anstellen!

309語

最近、ソフトカバーの廉価版が出た。

鳥が「並んでください」と言っているが・・・?

カエルが「並んでください」と書いてある看板を見上げている。鳥が「ようこそ、列の最後についてください」と言うので、並んで見ると・・・

たくさんの動物たちが一列に並んでいる。ヤモリ、ネズミ、モグラ・・・と体が小さいものから順番に。それぞれおしゃべりしたり、待っている間に体操をしていたり、何で並んでいるのかわからないがとりあえず並んでみた、という様子の動物もいたりと様々。ページをめくると、動物は大きくなっていき、肉食獣の間で草食動物が震えていたり、待ちくたびれて大声を出すものもいたり、しりとりを始めたり、と総勢50種類の動物が登場(動物の下にそれぞれ名前が書かれているので、動物が覚えられる)。

ただ並んでいる動物を描いているだけの単純な話でありながら、長い行列によくある光景が展開されていて飽きさせない。それで、いったい何の行列なのか?? という絵本。
とりあえずヒントは、最後に出てくる動物が一番大きい、ということだが、それがみごとなアトラクションを披露する。

しりとりはドイツ語でWörterketteというのだと知った。言葉のチェーン。
単語の最後の音/文字ではなく、合成語の最後の単語を拾っていくもののようだ。絵本ではこんな感じ。
Kindergeburtstag - Geburtstagskuchen - Kuchenteig のようにつなげていく。

でも調べたら、単純に最後の文字を拾ってつなげていくやり方もあるようだ。
Elefant -  Tiger - Raupe みたいに。
こっちのほうが簡単。

あと音節を拾うのもあるようだが、これはすぐに行き詰まりそう。
Elefant - Fantasie - Siemens

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2018年7月 2日 (月)

ドイツ語多読本: Oliver Jeffers: STECKT

ひさしぶりにドイツ語絵本。

凧が木に引っかかってしまったら?
木に登って取ろうとする人もいるだろうが、この絵本のフロイド少年の場合は・・・?

Oliver Jeffers: STECKT

403語

STECKTの文字が文字通り木にsteckenしている表紙。

木に引っかかった凧を取ろうとして、このフロイド少年が考えたのは、片方の靴を脱ぎ、それを凧に向かって投げること。まあ、予想通りうまくいかない。そこでもう一方の靴を引っかかった靴に向かって投げる。それも引っかかる。それでネコのミッチを捕まえて、靴を狙って投げ上げる。そう、当然ネコも木に引っかかる・・・。

それでうんざりしたフロイド少年、もう終わりにしようと、はしごを脇にかかえて戻ってくる。そうそう、はじめからそうしていればよかったんだと思いつつページをめくると・・・

はしごを木に向かって投げるフロイド少年。

おいおい、それも投げるのかよと思わず突っ込みながら笑ってしまった。

その後はもう何かにとりつかれたかのように、次々といろんなものを木に投げていく。人の手で投げられるものから次第にエスカレートして、動物や人はおろか、人間には持ちあげられないもの、それ木より大きいだろ、というものまで投げていく。それはもうファンタジーだが、そんなありえないものが木にささっていく様子は、絵本ならではおもしろさ。

表紙はくすんだ緑色だが、本を開くとページによって背景の色が変わっていたりして意外とカラフル。絵柄はシンプルでコミカル、見やすい。話はシンプルなのでわかりやすいはず。


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2017年6月 6日 (火)

ドイツ語多読本: Andreas H. Schmachtl: Tilda Apfelkern. Viel Wirbel im Heckenrosenweg

ひさしぶりにTilda Apfelkernシリーズから。絵本もあるが、これは文字メインのほう。読み聞かせ用の本だろう。対象年齢は4歳から6歳。

どこか丘の間の小さな村、そのHeckenrosenwegに住む教会ネズミTildaとご近所の動物たちの日常をのんびり描くシリーズ。

Andreas H. Schmachtl: Tilda Apfelkern. Viel Wirbel im Heckenrosenweg

20,000語

電子書籍では、Kindle版は日本ではまだ売っていないが、koboのepub版は買える。

いつもの顔ぶれが登場する安心感とともに、冒険やファンタジーではなく日常生活のこまごまを穏やかに描いていくのが特徴のTilda Apfelkernシリーズ。

この巻も、Tildaをはじめ、隣(お向かい?)の樫の木(だったかな)の根元に住むハリネズミのRupert、同じ木の上に住むリスのEdna母さんと双子のBillyとBenny、郵便局に住むネズミのMollyなど、いつもの面々が話の中心。何かあるごとにTildaの家でお茶を飲んだりお菓子を食べたりする、そういう仲間たち。
この巻でWertierchenというやつには初めて会ったが、別の巻ですでに登場しているようだ(Wertierchenの"wer"は、Werwolfの"wer"と同じ? Werwolfは狼男、狼人間)。

一冊で一つのストーリーになっているというより、エピソードを重ねていくタイプの作り。
主なエピソードは、
・牧師が定年退職、新しい牧師とともに教会ネズミがやってきて、Tildaに立ち退きを求める・・・。
・Tilda、自分の家でペンションをやろうとするが・・・?
・今度はEdnaと組んでペンションを・・・。
・Wertierchenのホームシック、彼を故郷に連れて行こうと海に出ていくものの・・・。
・リスのBillyとBenny、小学校入学・・・。
・ハリネズミのRupert、その緑の上着は・・・?
・幽霊の噂、真相を探りに・・・。
・ペンションに商売がたき出現、偵察に行ってみると・・・。

立ち退きを要求してきたネズミが後半意外なところで再登場してきたり、Wertierchenの帰郷失敗が別のエピソードで補いがついたりと、ゆるやかにエピソードをつなげながら、春から寒くなり始める季節までを描いていく。

上の表紙のイラストを見てもわかるが、草木や花、古い田舎の家の様子など、とても雰囲気のある絵柄で、白いネズミのTildaもかわいらしい。絵が気に入ったら、絵本をおすすめする。最近、判型を小さくして値段も安くした新装版が出たようだ。
たとえば、

などは、家の外の自然よりも、代々Apfelkern家が住む古い家の中の生活感が印象的。

小型新装版は他には
 


などがある。語数は1200〜1400語程度、1ページあたりの語数も多めなので、ドイツ語にまだ慣れてない人は覚悟が必要かも。

あと変わったところでは、Tildaは料理が得意ということもあってか、レシピ本まである。

レシピ本としては2冊めのようだ。レシピ本はさすがに読んでない。

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2017年6月 2日 (金)

ドイツ語多読本: Rüdiger Bertram: Coolman und ich (Band 1)

「クールマンとぼく」シリーズ、第1巻。全部で8巻出ているようだ。
児童書、対象年齢は10歳から。第1巻しか読んでいないが、この巻は個性の強い登場人物たちの紹介と学園ドタバタコメディがメインか? とにかく笑える。

文章の間にイラストではなく数コマのマンガの挿入されている。おもしろいのは、イラストのように本文の内容を視覚化しているのではなく、本文の一部になっていること。マンガ部分が本文の続きになっていて、そのマンガを受けて、また本文が続いていく。マンガで主に活躍するのがCoolman。

Rüdiger Bertram: Coolman und ich (Band 1)

25,000語

Kindle版が日本未発売なので、電子書籍がいいならkoboで。もちろん電子書籍のほうが安い。
Kobo版:Coolman und ich Band 1

一本の道を思い浮かべてくれ、スキーのジャンプ台みたいに急な坂だ。次はゴミ収集のコンテナー、ゴムのキャスター付きのやつ。中はヨーグルト容器のゴミでいっぱい。その腐った臭いがしてきたかい? じゃあ次はそこに首までつかった少年を思い浮かべるんだ。坂を下るゴミ・コンテナーはぐんぐんスピードを上げていき、少年は叫び声をあげる。想像できた? OK、それが僕だ。

と、ブレーキがないまま交差点の信号に向かって、なぜかゴミ収集のコンテナーに乗って猛スピードで下っていくバカバカしくも危機的状況と、それを冷静に描写する軽妙な主人公Kaiの語り口。そのギャップがさらに話に滑稽味を付け加える(上の表紙の画像参照)。冒頭を読んだだけで、これはおもしろそうだと思えるはず。

さらにおかしいのは、黒いアイマスクに胸に「C」マーク、スーパーヒーロー的なコスチュームの男がいっしょに乗っていて、どうも面白がっている様子・・・。まるで意味不明だが、これがクールマン。

クールマンは主人公が4歳の時からいっしょにいるらしいのだが、主人公以外には見えない存在。主人公の両親は役者で劇場を渡り歩く生活、引っ越しを繰り返しているため、主人公には友達がいないらしい。それで、同級生とうまく口をきけなかったりと、人と接することに慣れていない様子。そういう時、クールマンが助けてくれる・・・のではなく、クールマンの言うことに耳を傾けたが最後、逆に面倒な事態が発生、ゴタゴタに巻き込まれてしまう・・・。そんなドタバタ・コメディ。冒頭のゴミ・コンテナー事件も実はクールマンの言うことに従ったためだったりする。

Kaiは事件に巻き込まれていくタイプの主人公で、ちょっと内気だがいたって普通の人間。強烈な個性を放っているのはまわりの登場人物たち。たとえば、クールマンに次いで強烈なのは主人公の姉。黒が好きで、着ているものも部屋の壁もカーテンも黒。変人と思いきや、主人公を不良から助けてくれたりもするが、スーパーでレジのゲートを突破しようとしたりと、いろいろ主人公を面倒に巻き込む。

そんな家族や学校でのおかしな出来事、滑稽な状況を、そこに否応なく巻き込まれていく主人公の視点から描いた話で、語り口もおもしろい。しょっちゅう笑わせられるので、すらすら読めると思う。終わり方は次巻に続く、という感じ。

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2017年4月28日 (金)

Kindleでは売っていないが、Koboでは買えるドイツ語児童書・マンガの出版社

多読となるとやはり児童書は不可欠。マンガも日本語で読んだことがあるものなら、なんとかドイツ語でもいけるかもしれない。

紙の洋書だと取り寄せに時間がかかったりするが、買ってすぐ読めるのが電子書籍の強み。紙の本のように場所も取らない。

でも、日本で買えないドイツ語の電子書籍があって、本当に不便。出版社によって買えるか買えないか決まっていて、児童書とマンガを多く抱えているCarlsen Verlagなどは日本ではいまだに電子書籍が買えない。

ところが、以前は日本では買えなかった出版社の電子書籍がKoboで買えるようになっていることに最近気づいた。じゃあ、Kindle版もあるのかと思ったら、アマゾンでは売っていないという・・・。

というわけで、今のところはkoboでしか売っていない児童書・マンガを出している出版社を紹介。

ドイツのストアからebubの本を直接買ったほうが安かったりするが(ドイツのアマゾンからkindle本は買えない)、楽天なら手軽に買える人もいるかもしれない。

楽天Koboで出版社で検索するには、検索欄に
出版社名:Arena Verlag
のように、頭に「出版社名: 」とつけて入力するといいようだ。日本の出版社にも使えるみたいだ。

○Arena Verlag
「出版社名:Arena Verlag」の検索結果
ここの児童書は昔よく読んだ。Tlida Apfelkernシリーズなどがおすすめ。ムーミンのドイツ語訳などもここ。

○Oetinger Verlag
「出版社名:Oetinger Verlag」の検索結果
こちらも児童書の出版社。"Büchersterne"と表紙にある本は小学生向けのレベル分けされた読み物。でも、いちばんやさしいレベルでも700語、800語以上あるだろうから、むずかしいだろう。絵本も少しあるようだ。

○Egmont
これは以前ドイツ語訳のマンガの紹介をした時(「ドイツ語多読本:ドイツ語訳マンガ」)、楽天Koboでは「お住まいの地域では購入できません」という表示が出て買えなかった出版社。今では買えるようになっていてちょっと驚いた。
この出版社からはマンガ、コミック(海外)、児童書などが手に入る。検索ワードを変えてやると探しやすい。
「出版社名:Egmont Manga.digital」の検索結果
これでマンガがリストアップされる。有名どころでは名探偵コナンとか?

「出版社名:Egmont Schneiderbuch.digital」
こうすると児童書がリストアップ。懐かしいところではEnid Blytonのドイツ語訳など。

「出版社名:Egmont Ehapa Media.digital」
ディズニーのコミックやLucky Luke(ベルギー?)、Asterix(フランス?)などのコミック。

これだけでもけっこうな数だと思うが、それが今のところ日本のアマゾンのkindle本では買えないという・・・。たぶんそのうちkindleでも買えるようになる気はするが、でもちょっとこの差は何なんだ。

絵本は紙の本がいいと思うが、紙の本は邪魔になって仕方がないので、それ以外はもう電子書籍で読みたい。

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2017年4月 5日 (水)

ドイツ語多読本: Erwin Moser: Winzig. Das große Buch vom kleinen Elefanten

Winzigという名の子ゾウの物語。
名前の通り、ゾウにしてはとても小さく、背の高い草の下で眠っている間に、両親の目から見えなくなってしまい、ゾウの群れから見捨てられてしまう・・・。

以前買ったもので、アマゾンの洋書バーゲンコーナーでたまたま見かけたので紹介。
今だと57%引きでかなり安い(400円程度)。バーゲンコーナーの洋書は、待っていると値段が下がっていって、70%以上オフになったりするものもある一方で、突然コーナーから消えるものもある。できるだけ安く買いたいと思うと、買い時がむずかしい。

Erwin Moser: Winzig. Das große Buch vom kleinen Elefanten

3712語

Winzig, der Elefant
Winzig geht in die Wüste
Winzig sucht die Elefanten
Winzig findet seine Eltern
の、1200〜1300語程度の4冊を1巻にまとめて、ソフトカバー版にしたもの。
3歳以上向けの読み聞かせ絵本。

これら元のタイトルを見るとあらすじはわかってしまうが、元の4冊目はタイトルですでに結末を明示しているようなもの。3歳児向けの絵本だし、当然そうなるはずの結末だろう。そこにいたるまでのストーリーを楽しむ。

語数は多めだが、イラストが各ページの半分もしくはそれ以上を占めていて、その場面に合わせた絵になっているので、ストーリーは追いやすく、わからない単語も推測しやいと思う。


印象的なのは第1話冒頭とと最終話の結末。
寝ている間に置き去りにされたWinzig、目覚めてまず感じるのが、何か足りない、という感覚。おかあさん、おとうさんはどこ? と考える知恵すらない子供の無力さ。そして、自分の長い鼻と似た形のものを持った生き物を仲間かもと思ったりするいたいけのなさ。

(表紙の絵もそんなイメージを暗示? ゾウの鼻はドイツ語ではRüsselだが、チョウとかハチの長い口もRüsselだったりする。じゃあ長いのがRüsselなのかと思うと、ブタの鼻もRüsselだったりして、ドイツ人的にはブタの鼻も長いのか、それとも、Rüsselにはもっと別な意味合いがあるのかとも思ったりする。日本語だとゾウだろうとブタだろうと鼻は鼻だから)

あとは、いつものErwin Moserで、いろんな場所に出かけて行っては、いろんな生き物に出会って、冒険・・・。

で、最終話の結末。元のタイトルが示しているように、最後は両親に再会するわけだが、ゾウの習性に反して群れには加わらないWinzig。そのわけは最後までのWinzigの物語をたどってきた人には納得。

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2017年1月22日 (日)

ドイツ語多読本: Lilli L'Arronge: Chaos in Bad Berleburg

ひとつのことから連鎖的に事件発生、カオスが現出する・・・?

Lilli L'Arronge: Chaos in Bad Berleburg

79語

バナナを食べてしまった男の子、皮を道路に捨てる。「そんなことしちゃだめでしょ」と言う(たぶん)姉。どうして?と尋ねる弟に姉は言う、「想像してみて」と・・・。

それで、男の子の頭から浮かんでくる吹き出し、その中にバナナの皮を踏んづけようとしている一本の足。

想像が進み、次には足を滑らせたサラリーマンの全身像、バナナの皮は通りかかったおばあさんに向かって飛んでいく・・・そんな吹き出しになって、男の子はほくそ笑む。

次の吹き出しでは、サラリーマンは転んだはずみに立てかけてあったハシゴの頭をぶつけ、バナナの皮はおばあさんの顔に当たり、買い物袋を落とす、そこに手押し車を押してやってくる男性・・・。

というふうに、想像が進むごとに吹き出しも大きくなり、描かれる人や物もどんどん増えていく。最初は怒っていた姉も想像の加速ととも楽しくなっていき、カオスの度も増していく。最後は想像はページ全体に広がり、吹き出しもなくなって、弟と姉はカオスとなった町の中にいる・・・。そんな絵の構成。

バナナの皮に滑ったらハシゴを倒して、上からペンキ缶が落ちてきて、通りかかった人の頭に・・・。とベタな展開だが、それぞれの出来事が連鎖的にさらに事件を引き起こしていくので、それを一枚の絵にして見せられると、絵のいたるところでドラマが展開していて、とてもにぎやかで楽しい。目で物語を読む絵本。


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2016年12月15日 (木)

ドイツ語多読本: Mandy Sutcliffe: Belle & Boo. Gute Nacht, kleiner Hase

「さあ寝ようか」という時の絵本がなぜかたくさんある。
子供を寝かしつける大人の苦労の裏返しなのか(?)、ベッドに入るまでのルーティーンをたどるような話は多い。これもその一冊。

Mandy Sutcliffe: Belle & Boo. Gute Nacht, kleiner Hase

535語

緑のパジャマの女の子BelleとウサギのBoo。

今日も一日たくさん遊んで楽しかった。でももう眠いな・・・なんて、ぬいぐるみをイスに座らせた丸テーブルでお茶を給仕しているBelleはエプロン姿、窓際でクッションに背をあずけて、あくびをこらえているBoo。そんな最初の場面。もう寝る時間?とBooは聞くけれども、その前にお風呂の時間だよ・・・。

それで、次はバスタブに浸かるBelleと、水が苦手なので石鹸の泡で遊んでいるBooの姿。
で、今度はもうベッドに行く時間?と聞くBooに、もうすぐ、でもその前に人形の髪を梳かさないとだめだよ・・・。そんな感じで、Booがたずねるたびに、ぬいぐるみを寝かしつけなきゃ、寝る前のミルクとクッキーがいるよ、次は歯を磨かなきゃ・・・。

そういう寝る前の様々な事柄が終わって、ようやくベッドに行く時間になったかと思うと、Booの眠気が覚めてしまう。騒いで喉が乾いてしまったのだ。Belleが水を一杯持ってくる間に、Booのほうは、よし隠れて驚かせてやろう、Belleはサプライズが好きだから、なんて隠れ場所を探しだす・・・。
さて、Booはどこに身を隠し、Belleはどうやって見つけ出すのか?

小さな動物とコンビを組んだりすると、子供のほうは大人役を演じるのも定番の役割分担か。
Belleはお母さんのような役回り。そうやって大人の真似をしていろいろなことを学んでいくのだろうが、大人の真似をする子供がまたかわいらしかったりもする。


昔風の懐かしい絵柄な気がするのはBelleの髪型のせい? それにまつげが長い。
背景がクリーム色で、必要最小限の物を穏やかな色使いで端正に描いていて、穏やかな絵本。目にやさしい。女の子だけでなく、絵本を選ぶお母さんにも受けそうな絵本。

オリジナルは英語。日本語訳も出ているので人気作家?

ベルとブゥ おやすみなさいの じかん

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