カテゴリー「ドイツ語児童書」の記事

2017年1月22日 (日)

ドイツ語多読本: Lilli L'Arronge: Chaos in Bad Berleburg

ひとつのことから連鎖的に事件発生、カオスが現出する・・・?

Lilli L'Arronge: Chaos in Bad Berleburg

79語

バナナを食べてしまった男の子、皮を道路に捨てる。「そんなことしちゃだめでしょ」と言う(たぶん)姉。どうして?と尋ねる弟に姉は言う、「想像してみて」と・・・。

それで、男の子の頭から浮かんでくる吹き出し、その中にバナナの皮を踏んづけようとしている一本の足。

想像が進み、次には足を滑らせたサラリーマンの全身像、バナナの皮は通りかかったおばあさんに向かって飛んでいく・・・そんな吹き出しになって、男の子はほくそ笑む。

次の吹き出しでは、サラリーマンは転んだはずみに立てかけてあったハシゴの頭をぶつけ、バナナの皮はおばあさんの顔に当たり、買い物袋を落とす、そこに手押し車を押してやってくる男性・・・。

というふうに、想像が進むごとに吹き出しも大きくなり、描かれる人や物もどんどん増えていく。最初は怒っていた姉も想像の加速ととも楽しくなっていき、カオスの度も増していく。最後は想像はページ全体に広がり、吹き出しもなくなって、弟と姉はカオスとなった町の中にいる・・・。そんな絵の構成。

バナナの皮に滑ったらハシゴを倒して、上からペンキ缶が落ちてきて、通りかかった人の頭に・・・。とベタな展開だが、それぞれの出来事が連鎖的にさらに事件を引き起こしていくので、それを一枚の絵にして見せられると、絵のいたるところでドラマが展開していて、とてもにぎやかで楽しい。目で物語を読む絵本。


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2016年12月15日 (木)

ドイツ語多読本: Mandy Sutcliffe: Belle & Boo. Gute Nacht, kleiner Hase

「さあ寝ようか」という時の絵本がなぜかたくさんある。
子供を寝かしつける大人の苦労の裏返しなのか(?)、ベッドに入るまでのルーティーンをたどるような話は多い。これもその一冊。

Mandy Sutcliffe: Belle & Boo. Gute Nacht, kleiner Hase

535語

緑のパジャマの女の子BelleとウサギのBoo。

今日も一日たくさん遊んで楽しかった。でももう眠いな・・・なんて、ぬいぐるみをイスに座らせた丸テーブルでお茶を給仕しているBelleはエプロン姿、窓際でクッションに背をあずけて、あくびをこらえているBoo。そんな最初の場面。もう寝る時間?とBooは聞くけれども、その前にお風呂の時間だよ・・・。

それで、次はバスタブに浸かるBelleと、水が苦手なので石鹸の泡で遊んでいるBooの姿。
で、今度はもうベッドに行く時間?と聞くBooに、もうすぐ、でもその前に人形の髪を梳かさないとだめだよ・・・。そんな感じで、Booがたずねるたびに、ぬいぐるみを寝かしつけなきゃ、寝る前のミルクとクッキーがいるよ、次は歯を磨かなきゃ・・・。

そういう寝る前の様々な事柄が終わって、ようやくベッドに行く時間になったかと思うと、Booの眠気が覚めてしまう。騒いで喉が乾いてしまったのだ。Belleが水を一杯持ってくる間に、Booのほうは、よし隠れて驚かせてやろう、Belleはサプライズが好きだから、なんて隠れ場所を探しだす・・・。
さて、Booはどこに身を隠し、Belleはどうやって見つけ出すのか?

小さな動物とコンビを組んだりすると、子供のほうは大人役を演じるのも定番の役割分担か。
Belleはお母さんのような役回り。そうやって大人の真似をしていろいろなことを学んでいくのだろうが、大人の真似をする子供がまたかわいらしかったりもする。


昔風の懐かしい絵柄な気がするのはBelleの髪型のせい? それにまつげが長い。
背景がクリーム色で、必要最小限の物を穏やかな色使いで端正に描いていて、穏やかな絵本。目にやさしい。女の子だけでなく、絵本を選ぶお母さんにも受けそうな絵本。

オリジナルは英語。日本語訳も出ているので人気作家?

ベルとブゥ おやすみなさいの じかん

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2016年12月10日 (土)

ドイツ語多読本: Alexis Deacon / Viviane Schwarz: Ich bin Henry Fink

白い紙に拇印を押して、目とくちばし、翼と足を書き込むと、鳥(フィンチ)。
そのアイディアがおもしろい絵本。

Alexis Deacon / Viviane Schwarz: Ich bin Henry Fink

495語

朱色の拇印で描かれたフィンク、その頭から3つ泡がのぼって、タイトルの”ICH BIN HENRY FINK"。つまり、このフィンクが「僕はHenry Finkだ」と考えているところ。
自我の目覚めというか、思考、想像の発見みたいなものをテーマにした絵本か。

フィンクは群れで暮らしていて、一日中とても騒々しい。どのくらいうるさいかというと、自分が考えていることに耳を傾けることもできないくらい。そんな騒がしい毎日の中、1羽のフィンクが夜の静けさに目を覚ます。そして自分が何か考えていることに気づき、耳を傾ける・・・。

それで、いろいろ考え、想像することが楽しいのだと気づく。自分はものを考えた最初のフィンクなんじゃないか、すごいぞ、なんて思ったり。すると、次の日の朝、怪物が現れる。昨晩の想像(その中の一つが怪物退治)を思い出したのか、Henry Finkは怪物に突進、まんまと食べられてしまって、怪物の胃の中に・・・。

後に続くのは腹の中、白い文字と白い線画で描かれる真っ黒なページ。
こうなると考えるのは楽しいどころか、嫌な想像ばかりだし、次第に自分が誰だかわからなくなってくる。
"Bin ich Henry Fink? Ich bin etwas."と考えていると、次にはこのetwas(何か)もなくなって、"Ich bin"だけになって、ついには「僕」すらもなくなって、"Es ist, dachte er."となる。

この時の絵が、生物が生まれてから死ぬまでの一生であり、死んで土に帰り、そこから木が育って、それを虫や鳥が食べ、それをまた上位の動物が食べ、それもいずれは死んで土に戻り・・・という食物連鎖、大いなる自然のサイクルを描いた一枚絵。

こんなふうに自然の摂理を悟り、大いなる自然の闇に戻っていくのかと思いきや、もちろんそんなことはなく、Henry Finkは"Nein!"と叫ぶのだった・・・。

白い背景に朱色の拇印を使って楽しく軽妙に描かれたフィンクの様子と、怪物体内の真っ黒なページのコントラストが印象に残る。


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2016年12月 6日 (火)

ドイツ語多読本: Michael Roher: Fridolin Franse frisiert

美容師Fridolin Franseがヘアメイク。といっても、幻想と奇想を目で楽しむ絵本。

Michael Roher: Fridolin Franse frisiert

14語

もちろん"Fridolin Franse frisiert"はfr音の繰り返し、頭韻で遊んでいる。
Fridolin Franseが身を沈めているのは髪の毛。そこにはたんぽぽがあったり、イスに乗ったネズミ(?)がいたりと、写実を旨とする絵本でないことはあきらか。

文章はない。見開きで単語がひとつ。"kämmen"とか"waschen"とかFridolinが行っている作業を名指しているだけ。

最初は"kämmen"。
女性が左にいて、その髪を櫛で梳かすFridolinが描かれる。その髪の上にいろいろなものが描き出されている。髪を梳かすというのは、土地を鋤いて耕すのを連想させるのか、農場を描いているようにも見える。農家らしい家があり、いろいろな動物が描かれている。でも、トラクターが引いているのはヘアブラシだったり、なぜかキリンがいたり、ドラゴンが髪の毛を滑り台代わりにして滑っていたりと、発想は自由、その細部を目で楽しむための絵本と言える。

髪の毛は途切れず次のページに続いている。次は"waschen"。
幻想の度は増す。Fridolinが握るシャワーのノズルの下にはティーポッド、その中で体を洗っている人がいて、ポッドの口から流れ落ちる水は池を作り、池の上に張り渡したハンモックにはゾウがいて鼻から水を吐く、その下には宙に浮いた水盤とそのほとりの城・・・。他にも様々なものが描かれている。

そして"Shampoonieren"、"spülen"とページが進んでいくと、水が出てくるせいか、これまで地面だった髪の毛は海のイメージになり、海賊船やらクジラやら潜水艦まで登場・・・・。

あとは、
"schneiden"
"färben"
"einwirken lassen"
"auswaschen"
"eindrehen"
"föhnen"
とFridolinは作業を進め、最後は"fertig!"で終了。
それぞれの場面でどんな連想で何が描かれているかは、実際に見てもらうしかない。切ったり、染めたり、ドライヤーを使ったり、それがどんなイメージと結びつくか。自由な発想と連想その細部を目で追っていく楽しみ。そういう絵本。

アマゾンの洋書バーゲンのページで70%オフで買ったが、今は元の価格に戻っているかもしれない。

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2016年11月28日 (月)

ドイツ語多読本: Guido van Genechten: Es spukt nicht unterm Bett

向こうの人はかなり小さい頃から一人で寝るようにしつけられるという話もあるから、こういう絵本はたくさんあるのだろう。
夜一人で暗い部屋でベッドの中にいると、何やら物音が聞こえる・・・。幽霊??

Guido van Genechten: Es spukt nicht unterm Bett

439語

ベッドの中で何度も寝返り、頭の中をいろんなことがよぎる、眠れない・・・。
と、ベッドの下からギシギシ音がする。おばけだ、パパ!!

パパがやってきて、おばけなんかこの世にいないんだよ、ベッドの音だよ、と言いつつも、ちゃんとベッドの下を確認するパパ。

で安心してまたベッドに入ると、また物音が・・・。こんどはカーテンの裏。そしてまたパパ登場・・・。

というふうに、物音を聞きつけてはパパを呼ぶのを繰り返しているうちに、今度は確認していない場所が気になりだす。物音もしないのにおもちゃ箱の中におばけがいる気がして・・・、パパ!!

もちろん最後は安心して眠ることになるが、それはやはりパパのおかげ。おばけなんかいないと口で言うだけでなく、いちいちベッドの下やらカーテンの裏やら、カーペットの下まで腹ばいになって覗いてみせて、実証していくパパだから安心なのだろう。

描かれているのはペンギンの部屋のみでシンプルだが、背景はやわらかい灰色で目にやさしく、ペンギンも愛嬌があって親しみやすい。あと、部屋の中のぬいぐるみやおもちゃがそれぞれの場面に合わせて表情を変えたり、場所を移動したりしているのは作者の遊び心か。そのあたりにも注目。


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2016年11月24日 (木)

ドイツ語多読本: Eric Carle: Die kleine Spinne spinnt und schweigt

クモは糸をspinnenする生き物なのでドイツ語ではSpinne。とても単純。

Eric Carle: Die kleine Spinne spinnt und schweigt

264語

農場の柵、柵の縦棒と横棒が作る四角形、そこに巣を作るクモ。そこに次々に動物がやってきて遊びに誘うが、クモは黙々と巣作りを続ける。
と、幼児向け絵本なので話はシンプルな繰り返し。

左ページにウマやらウシやらがページをめくる毎に登場して(それからハエも1匹かならずいる)、鳴き声を披露、クモに話しかける。が、クモは無言(クモは鳴かないし)。

右ページには柵の四角形の中に巣を作っていくクモ。
最初は2、3本の線(クモの糸)が描かれるだけだが、ページをめくる毎に線が増え、しだいにクモの巣ができあがっていく。単純な線だけでクモの巣のきれいな形になっていく様子を追っていくのは、大人でも楽しいはず。単純にクモの巣の形は見ていておもしろいし。

左ページのいろいろな動物はカラフルで目に楽しいが、単に筆で線を描き、色を塗り、模様を描くという一般的な絵ではないところが特徴的。紙に色を塗って模様を描いて、それを動物の形に切り取って、白い台紙に貼り付けたように見える。
それも、頭や首、背中から足、また腹の部分など、パーツに分けて切り貼りしている。だから、動物をどういうパーツに切り分けで、どういう色や模様にし、それをどう貼り合わせるかという、工作的な楽しさが感じられる。ちょっと工作心をくすぐるところもエリック・カールの絵本の持ち味。


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2016年11月20日 (日)

ドイツ語多読本: Roald Dahl: Die Giraffe, der Peli und ich

Roald Dahlのドイツ語訳、短めのもの。

Roald Dahl: Die Giraffe, derPeli und ich

7200語

翻訳だと「窓ふき会社」なんとかいうタイトルのはず。

売り家になっているお菓子屋の中をのぞいてみては、店が復活してお菓子がたくさん並んだ様子を思い浮かべる少年Billyだが、通りかかるたびに、ペンキで書かれた「売り出し中」の文句が変わったり、窓から浴槽やらベッドやら落ちてきたりと様子がおかしい。そして、ついに「はしごいらずの窓ふき屋」の看板が出たかと思うと、入り口のドアが巨人でも使うのかという大きさになっている。

すると、3階の窓からキリンの首、それからペリカンが出現、さらに2階の窓にはサルが現れる。話を聞いてみると、3匹で窓ふきをして金を稼ぎたいらしい。お金がなくてお腹がぺこぺこなのだ。そこにハンプシャー公爵のロールスロイスがやってきて、運転手から仕事の依頼を受ける。そしてお屋敷に行ってみると・・・。そういうストーリー。

キリンの首がはしご代わり、木登りが得意なサルがそこを登って高い窓に近づく、ペリカンが何をするのかというと、大きなくちばしで窓を洗う水を運ぶという役割分担。言われてみればなるほど、簡単な話だと思うが、そういうふうに動物を想像して組み合わせる発想ができる人とできない人の差は大きい。

お屋敷に着くと、もちろん窓ふきだけに終わらない一事件があって・・・。もちろん無事解決、3匹の動物だけでなくBillyも望みがかなう。ハッピーエンドだろうなとわかっていても、みんなしあわせになると、なぜかこちらもうれしくなる結末。

最初の方に出てくるペリカンの口の仕組みもそうだが、キリンの伸びる首も、何かメカっぽい感じがするんだが、気のせいか?


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2016年11月 7日 (月)

ドイツ語多読本: Michael Römling: Schattenspieler

1945年春のベルリン、まだ戦火も残るなか、やがて連合国がベルリンを分割統治していく、そんな歴史的背景を細かく描きながらも、ナチスが略奪した美術品を探すというエンターテイメント性も忘れない中高生向けの小説。

Michael Römling: Schattenspieler

70000語

1945年春のベルリン、無残に破壊された街を眺めながら、ゲッペルスのヒトラーの誕生日を祝うラジオ演説を聞く少年Leoと、もう一人は大人のWilhelm。二人は空疎な演説を冷笑する・・・。
そんな冒頭の場面だが、それもそもはず、Leoはユダヤ人で、戦争の間ずっと身を隠して生きてきたからで、WilhelmはそのLeoを助けてきた人間(この本の「あとがき」によると、ベルリンだけでそんなユダヤ人は1400人ほどいたそうだ)。

そして、隠れ家にナチスが迫ろうかという時、ベルリンへの空爆も重なり、混乱の中Wilhelmの姿が見えなくなる・・・。
Wilhelmの生死もわからないまま、Leoはとにかく逃亡をはかる。その途中で目撃してしまうのが、ナチスの将校Sommerbierが二人の男を射殺する場面・・・。
その後Leoはソ連兵に拘束されてしまう。ドイツのスパイじゃないかと尋問を受ける・・・。

と、ハラハラする展開だが、小説は何度か視点を変えながら進んでいく。
その視点となる人物の一人が、Sommerbier。28個の箱を積んだトラックを走らせ、検問をいくつも抜け、追跡者も追い落とし、目的地で荷物を下ろしたら、口封じのために人を殺す。そして、イギリス軍のパイロットになりすまし・・・。
それがこの小説の悪役Sommerbier自身の視点から生々しく描かれるので、サスペンスを盛り上げる。

そして、もう一人の少年Friedrich。
こちらはナチスの高官の息子。父親はいわゆるローゼンベルク特捜隊に配属されていて、占領地で美術品の略奪にかかわっているらしい。こっそり家を抜けだした後、戻ってみると父親の訃報を聞かされる。

そして、Leoを捕まえたソ連軍の部隊がFriedrichの家を拠点にすることから、二人の少年はまったく違う境遇ながらも親しくなる。さらに、姿を消していたWilhelmとも再会でき・・・。
ローゼンベルク特捜隊が略奪した絵画コレクションをSommerbierがベルリンに隠したのではないかと推理、証拠を集めようとする・・・。

さらに、Leoを捕まえたソ連軍部隊の責任者も実はSommerbierを追っているらしく、イギリス軍も含めた、ナチスの財宝争奪戦の様相も・・・? そして、このSommerbier、意外な人物となってまた姿を表わすのだが・・・。

と、ストーリーは飽きさせない展開。が、それだけでなく、細部もしっかり描き込まれていて、興味深いエピソードもたくさんある。たとえば、道を歩いていると突然ソ連兵に徴用されて、爆弾で空いた地面の穴を埋める作業にをさせられる、なんてことは実際にあったことかもしれない。また、Leoが尋問される場面でLeo Goldsteinと名乗ると、これまでそう名乗る人間(ユダヤ人によくある名前)はドイツにはいなかったのに、急に誰もがLeo Goldsteinだと名乗りたがる、と皮肉が飛び出してくる場面も印象深い。

こういう細部もしっかり描き込みつつ、中高生向けらしくストーリーはしっかり楽しめるバランスのいい小説。

巻末にナチス関連の用語集があるので、先に目を通しておくとよい。各章は短いので、適度に息継ぎしながら読める感じ。


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2016年11月 3日 (木)

ドイツ語多読本: Helme Heine: Das schönste Ei der Welt

世界で一番すてきなタマゴを産むのは誰? と争う3匹のニワトリの話。
穏やかでやさしいとも言えるが、妙にふわっとした話。

Helme Heine: Das schönste Ei der Welt

330語

王様とたくさんのニワトリの記念写真のような表紙だが、主役はこの中の3匹だけ。

昔あるところに3匹のニワトリがいました。Pünktchen、LatteとFederの3匹はケンカをしていたのです。誰が一番きれいなのかと・・・。

と、文章はオーソドックスな昔話テイストの出だしだが、絵のほうはちょっと変わった構図。
前景に大きな1本の木、そこからキツネが、遠くに小さく見える3匹のニワトリをうかがっている。主役が前面に出るのではなく、遠くに小さく見えるだけ。
おまけに、このキツネ、ストーリーに絡んでくるのかと思いきや、もう出てこないという、なにやら文と絵のつながりもゆるい。そのゆるさが逆にこの絵本の味。

さらにこのHelme Heineという作者は背景を描き込まないというか、ほとんど描かないので、水彩とあいまって、とてもあっさりシンプルな絵柄。最低限のものしか描かれないので(背景は白のまま)、その分描かれたものに集中しやすい。

ストーリーも単純。
誰が一番きれいなのか決着がつかない3匹は、王様に判定してもらうことにする。そこで王様は、一番きれいなタマゴを産んだものを勝者、プリンセスにしてやろう、と言う。さっそくタマゴを産みにかかる3匹・・・。
最初にタマゴを産んだのはPünktchen。これが形も色つやも完璧としか言いようがないタマゴ。これ以上のものはないだろうという声をよそに、次にLatteが産んだタマゴは・・・・? そして最後のFederのタマゴは? 

そんなストーリーだが、結末もゆるく穏やか。
タマゴの優劣はつかないから、3匹ともプリンセスだ・・・。白黒はっきりつけるのではなく、あくまでも穏やかに丸くおさめる。それがこの絵本の味。


あまりにふんわり穏やかな絵本なので、ちょっと突っ込みを入れたくなる・・・。
たとえば、誰が一番きれいか決めてくれという3匹に、王様は「中身(die innere Wert)が大切なのだ」と言う。外面ではなく内面の美しさが大切なのだという意味かと思いきや、タマゴで争えと・・・? 中身ってタマゴかよ、そりゃタマゴも中から出てくるだろうけど。

それから、同じ場面。王様の御前でかしこまって平身するニワトリ3匹だが、王様のほうは食事中。それはそれでいいけれども、食卓にあるのはローストチキン?? 平然とニワトリを食べながらニワトリに会う王様、そんな王にうやうやしく謁見するニワトリ・・・。そう考えると、食べる側も食べられる側もとても鷹揚、ある意味ユートピア的なゆるさ・・・?

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2016年9月30日 (金)

ドイツ語多読本: Walko: Die verlorene Weihnachtspost

Hase und Holunderbärシリーズ。紹介するのは2冊め。
(1冊めは「Walko: Der Dieb in der Heide」)。

今回はクリスマスの話。まだ早いけれども、そろそろクリスマス関連の新刊が出てくる時期ではある。

Walko: Die verlorene Weihnachtspost

1803語

もし売り切れていたら、こちらの新しい版で。

ようやく目的地にたどり着いて、クリスマスツリーに見入っているウサギとクマのコンビ。暗く寒い夜の、雪降る森を抜けてきただけに、暖かな光にほっとする。



クリスマス当日、楽しい夜までにはまだ時間があるぞと、雪合戦を始めるウサギとクマのコンビ。そこに空から手紙が落ちてくる。見ると郵便配達のハトがカバンを抱えて空を飛んでいる。自分たち宛の手紙と思いきや、病気のマーモットがサンタクロースに宛てて、うちに来て欲しいと書いた手紙。このままではサンタクロースに手紙が届かないぞ、と心配になる二人。
それで手紙をサンタクロースに届けようと、サンタクロース探しの冒険がはじまる・・・。

でも、どこをどう探したものか?とまず考え、推測を立てから行動するので、ストーリーも締まって安心できる展開。トナカイは森のエサ場に立ち寄るはずだから、そこを目指そう・・・。そりに食料を積んで出発。

最初は元気いっぱい、凍った川を飛び越えたり、山道を登ったり下ったり、そして、森の動物たちが雪の城を作って雪合戦をしているところに突っ込んでしまったりと、にぎやかで生き生きとした絵とともに楽しい展開。

森のエサ場についてから、先行きに暗雲が立ち込め始める(実際雪も降り始める)。
トナカイのそりの鈴の音が聞こえたと思ったら、エサ場には寄らず通りすぎてしまうのだ。あわてて追いかけるものの、道は二股に分かれている。右か左か・・・?

そして、地面に大きな亀裂、橋は見当たらない。どうにかそりでジャンプするものの、そりは粉々に・・・。

さらに降り続く雪で、クマの腰から下は雪に埋まり、歩けなくなっていくし、雪でサンタクロースのそりの跡も見えなくなっていく。

それだけではない。とうとう夜になってしまう。吹雪の中、周囲も見えなくなっていく・・・。それでも、かわいそうなマーモットを思ってあきらめない二人。

そして、なんとかマーモットの家にたどり着いたと思ったら、サンタクロースのそりはマーモットの家から遠ざかっていく。ああ、間に合わなかったか・・・。

と、はらはらさせつつも、がっかりな結末にはならないので安心。ウサギとクマのコンビがマーモットの家に行ってみると、マーモットの親子はなぜか二人のことを知っているのだ!! その訳は・・・?

もちろん、その答えはサンタクロース。最後まで読んで、あの時のあれはそういうことだったのか、と伏線がはられていたことがわかる、巧みなストーリー展開。さすがサンタクロース、憎いぜ、という結末。

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このシリーズは品切れで入手できないと思っていたら、3冊を1巻にまとめた合本板が2冊出ていた。値段も安いので、かなりお得感がある。
ただし、このクリスマスの話はどちらにも収録されていない

Walko: Hase und Holunderbär. Bärenstarke Freundschaftsgeschichten

Walko: Hase und Holunderbär - Die schönsten Abenteuer

このシリーズで読んだことがあるのはたしか8冊。合本板に収録されていないのがもう1冊あるが、これもクリスマスの話。クリスマスの話は単体でも売れるという計算?


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