カテゴリー「ドイツ語多読」の記事

2017年6月 6日 (火)

ドイツ語多読本: Andreas H. Schmachtl: Tilda Apfelkern. Viel Wirbel im Heckenrosenweg

ひさしぶりにTilda Apfelkernシリーズから。絵本もあるが、これは文字メインのほう。読み聞かせ用の本だろう。対象年齢は4歳から6歳。

どこか丘の間の小さな村、そのHeckenrosenwegに住む教会ネズミTildaとご近所の動物たちの日常をのんびり描くシリーズ。

Andreas H. Schmachtl: Tilda Apfelkern. Viel Wirbel im Heckenrosenweg

20,000語

電子書籍では、Kindle版は日本ではまだ売っていないが、koboのepub版は買える。

いつもの顔ぶれが登場する安心感とともに、冒険やファンタジーではなく日常生活のこまごまを穏やかに描いていくのが特徴のTilda Apfelkernシリーズ。

この巻も、Tildaをはじめ、隣(お向かい?)の樫の木(だったかな)の根元に住むハリネズミのRupert、同じ木の上に住むリスのEdna母さんと双子のBillyとBenny、郵便局に住むネズミのMollyなど、いつもの面々が話の中心。何かあるごとにTildaの家でお茶を飲んだりお菓子を食べたりする、そういう仲間たち。
この巻でWertierchenというやつには初めて会ったが、別の巻ですでに登場しているようだ(Wertierchenの"wer"は、Werwolfの"wer"と同じ? Werwolfは狼男、狼人間)。

一冊で一つのストーリーになっているというより、エピソードを重ねていくタイプの作り。
主なエピソードは、
・牧師が定年退職、新しい牧師とともに教会ネズミがやってきて、Tildaに立ち退きを求める・・・。
・Tilda、自分の家でペンションをやろうとするが・・・?
・今度はEdnaと組んでペンションを・・・。
・Wertierchenのホームシック、彼を故郷に連れて行こうと海に出ていくものの・・・。
・リスのBillyとBenny、小学校入学・・・。
・ハリネズミのRupert、その緑の上着は・・・?
・幽霊の噂、真相を探りに・・・。
・ペンションに商売がたき出現、偵察に行ってみると・・・。

立ち退きを要求してきたネズミが後半意外なところで再登場してきたり、Wertierchenの帰郷失敗が別のエピソードで補いがついたりと、ゆるやかにエピソードをつなげながら、春から寒くなり始める季節までを描いていく。

上の表紙のイラストを見てもわかるが、草木や花、古い田舎の家の様子など、とても雰囲気のある絵柄で、白いネズミのTildaもかわいらしい。絵が気に入ったら、絵本をおすすめする。最近、判型を小さくして値段も安くした新装版が出たようだ。
たとえば、

などは、家の外の自然よりも、代々Apfelkern家が住む古い家の中の生活感が印象的。

小型新装版は他には
 


などがある。語数は1200〜1400語程度、1ページあたりの語数も多めなので、ドイツ語にまだ慣れてない人は覚悟が必要かも。

あと変わったところでは、Tildaは料理が得意ということもあってか、レシピ本まである。

レシピ本としては2冊めのようだ。レシピ本はさすがに読んでない。

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2017年6月 2日 (金)

ドイツ語多読本: Rüdiger Bertram: Coolman und ich (Band 1)

「クールマンとぼく」シリーズ、第1巻。全部で8巻出ているようだ。
児童書、対象年齢は10歳から。第1巻しか読んでいないが、この巻は個性の強い登場人物たちの紹介と学園ドタバタコメディがメインか? とにかく笑える。

文章の間にイラストではなく数コマのマンガの挿入されている。おもしろいのは、イラストのように本文の内容を視覚化しているのではなく、本文の一部になっていること。マンガ部分が本文の続きになっていて、そのマンガを受けて、また本文が続いていく。マンガで主に活躍するのがCoolman。

Rüdiger Bertram: Coolman und ich (Band 1)

25,000語

Kindle版が日本未発売なので、電子書籍がいいならkoboで。もちろん電子書籍のほうが安い。
Kobo版:Coolman und ich Band 1

一本の道を思い浮かべてくれ、スキーのジャンプ台みたいに急な坂だ。次はゴミ収集のコンテナー、ゴムのキャスター付きのやつ。中はヨーグルト容器のゴミでいっぱい。その腐った臭いがしてきたかい? じゃあ次はそこに首までつかった少年を思い浮かべるんだ。坂を下るゴミ・コンテナーはぐんぐんスピードを上げていき、少年は叫び声をあげる。想像できた? OK、それが僕だ。

と、ブレーキがないまま交差点の信号に向かって、なぜかゴミ収集のコンテナーに乗って猛スピードで下っていくバカバカしくも危機的状況と、それを冷静に描写する軽妙な主人公Kaiの語り口。そのギャップがさらに話に滑稽味を付け加える(上の表紙の画像参照)。冒頭を読んだだけで、これはおもしろそうだと思えるはず。

さらにおかしいのは、黒いアイマスクに胸に「C」マーク、スーパーヒーロー的なコスチュームの男がいっしょに乗っていて、どうも面白がっている様子・・・。まるで意味不明だが、これがクールマン。

クールマンは主人公が4歳の時からいっしょにいるらしいのだが、主人公以外には見えない存在。主人公の両親は役者で劇場を渡り歩く生活、引っ越しを繰り返しているため、主人公には友達がいないらしい。それで、同級生とうまく口をきけなかったりと、人と接することに慣れていない様子。そういう時、クールマンが助けてくれる・・・のではなく、クールマンの言うことに耳を傾けたが最後、逆に面倒な事態が発生、ゴタゴタに巻き込まれてしまう・・・。そんなドタバタ・コメディ。冒頭のゴミ・コンテナー事件も実はクールマンの言うことに従ったためだったりする。

Kaiは事件に巻き込まれていくタイプの主人公で、ちょっと内気だがいたって普通の人間。強烈な個性を放っているのはまわりの登場人物たち。たとえば、クールマンに次いで強烈なのは主人公の姉。黒が好きで、着ているものも部屋の壁もカーテンも黒。変人と思いきや、主人公を不良から助けてくれたりもするが、スーパーでレジのゲートを突破しようとしたりと、いろいろ主人公を面倒に巻き込む。

そんな家族や学校でのおかしな出来事、滑稽な状況を、そこに否応なく巻き込まれていく主人公の視点から描いた話で、語り口もおもしろい。しょっちゅう笑わせられるので、すらすら読めると思う。終わり方は次巻に続く、という感じ。

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2017年5月28日 (日)

ドイツ語多読本: Michael K. Iwoleit: Das Netz des Geächteten

2017年ドイツSF大賞、ドイツ語ベスト短編受賞作。

ゲームをテーマにしたSFアンソロジーに収録されている。Kindle版が見つかったので読んだ。

拡張現実のネットに繋がることが日常化している世界、ゲーム中毒の男の話。

Gamer所収

Das Netz des Geächtetenは9400語程度。

タイトルは「追放された者たちのネット」ぐらいの意味。

アルコールやドラッグやらの更生プログラムにあるような、依存症患者のミーティングの場面が冒頭。たがいに自分の体験を告白しあうみたいなやつ。それに参加しなければならなくなった主人公。何の依存症かというとゲーム。ゲームに熱中するあまり、人のアカウントを乗っ取り、金を盗んだりして、裁判所にネットからの強制ログアウト、二年間のネット接続禁止、更生プログラムへの参加を命じられている。

で、同じ参加者の一人が話しかけてきて、海賊版ネットがあると言う。HUD(ヘッドアップディスプレイ)のプロセッサを使ったやつだろ、あんなもの使えないと答える主人公だが、その男は100ペタフロップ相当の巨大並行マルチプロセッサが頭の中にあるだろ、と言って主人公に生体チップを渡す。主人公はそんな怪しげなものを使う気にならないが、ゲームに没入していた時のプラッシュバックに苦しめられ、思わずその生体チップのインプラントに手を出してしまう・・・というストーリー。

拡張現実がごく当たり前の世界。去年話題になったポケモンGOも拡張現実だろうが、この話ではスマートグラスのようなメガネか何かで拡張現実を体験しているらしい。外を見れば、アニメーション化されたロゴや広告、イフォメーションのバナーやフィード、交通標識などなどが外の風景と一緒に視界に現れる。それだけなく、拡張現実で自分の容姿にもいろいろ手を加えたりと、生の現実を直接見ることがほとんどないらしい。主人公は拡張現実がない世界のことは親の世代の話でしか知らないという。

ネットから追放されるというのは、つまり何の美化も施されない生の薄汚れた世界で生活するということ。そのうちに生体チップの効果が現れ始め、最初は視界のぎりぎり外側で何か動いた気がするが、そのうち線やら立方体やら円柱やら幾何学模様が見え、しだいに建築物の形をなしていく。現実の町に重なりあうようにして、もうひとつの町が現出していく。実際に町を歩き回りながらゲームにのめり込んでいく主人公・・・。

その拡張現実を知覚していく描写が個人的には新鮮でおもしろかった。
そして、きれいに伏線を回収しつつ、「追放された者たちのネット」を利用しているように思わせながら実は・・・というラストもきれいに決まった読み応えのある短編。


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2017年5月23日 (火)

ドイツ語多読本: Marc Elsberg: Helix - Sie werden uns ersetzen

Elsbergの"Helix"をようやく読んだ。前作"Zero"は読んだので、去年出た時に買っていたもの。

これで3作目らしいが、前2作はどちらも翻訳されているので(『ブラック・アウト』『ゼロ』)、これもひょっとしたら翻訳されるのかもしれない。ドイツ語の普通の発音では「エルスベルク」じゃないかと思うが、翻訳本では「エルスベルグ」になっている。人名なのでよくはわからないが・・・。

この人はおそらく話題のテクノロジーを取り上げ、サスペンスに仕立てる感じの作風が売り。
今回はタイトルの「螺旋」からも推測できるように、DNA、遺伝子の操作、ゲノム編集が人間、社会にもたらすものは・・・?

今年、SFのラスヴィッツ賞の長編部門にもノミネートされていている。2017年ドイツSF大賞にもノミネートされていたが、受賞は逃している。

Marc Elsberg: Helix - Sie werden uns ersetzen

130,000語

前作ではアメリカ大統領をドローンで追いかけ回し、それをネット中継するという派手な出だしで、読者を話に引き込んでいったが、今回もやり方は同じ。ミュンヒェン訪問中のアメリカの外相が演説中か何かに突然倒れる。慌てて駆け寄るボディガードたち、パニックになる会場。

検死解剖してみると、心臓になぜかドクロマークが浮き上がるという謎。ホワイトハウスのアドバイザー・チームの女性に事件究明が命じられる。死因はどうやらウィルスによるものらしく、感染経路を辿って行くと・・・。これが主要な筋の一つ目。

これと並行して、アフリカのタンザニアでは、害虫と干ばつの被害が広がる中、なぜか健康なトウモロコシが育つ場所が見つかる。どうやらドローンらしきものが何かを散布しているらしい。品種改良した種やら殺虫剤を売りつけて金儲けしているバイオ企業にとっては、そんなことをされては商売上がったり。というわけで、誰がそんなことをしているのか、追求を始めるバイオ企業の暗躍がもう一つの主要な筋。

さらに、不妊治療を受けている病院で、不妊治療どころか赤ん坊の健康、容姿や知能までも自由にできるデザインできるところがある、と教えられる夫婦。これが主要な筋の三つ目。半信半疑ながらも、行き先がわからないように窓の外が見えないようにしたチャーター機に乗り込む夫婦・・・。

さらにもう一つの筋では、飛び級で大学に入学、容姿もモデル並みの女の子、いつもボディガードを連れている、というより見張られている様子。その女の子がボディガードの目を盗み、失踪。それを必死に探しだそうとする母親(?)には何か特別なわけがありそう・・・。

もちろん、これらの話はつながり合っていて・・・という話。

ゲノム編集によってピンポイントで遺伝子を改変することができるようになり、それによって難病の治療が可能になったり、病気や環境の変化に強い植物を作ったり、肉が多くとれる動物・魚を作ったり、と様々な恩恵がもたらされると同時に、遺伝子を永続的に変えてしまうことの倫理的問題、さらにはデザイナー・ベビーのような、かつての優生学的発想の問題も想起させられる。もちろんそこには金の臭いがプンプンするわけで、利権やビジネスも巻き込んだ、おもしろいストーリーが展開できそうなテーマであることは確か。

ドイツ語で読む人向けにコメントしておくと、短い章で区切りながら、いくつかの筋を並行して追っていくので、続きが気になってテンポよく飽きずに読める。文章もエンターティメント小説なので平易だろう。




以下はネタバレを含んでいるので、出るかどうかわからないが翻訳を待っている人、ドイツ語で読む人は注意。

現在ゲノム編集でどこまでできるのかよくわからないが、デザイナー・ベビーがすでに存在していたら・・・というのがこの小説。10歳ですでに20歳の容貌だったり、身体能力が人間離れしていたり、知能も一般の大人以上、というか専門的な科学者以上、そんな子供たち・・・。そして、盛大にネタバレすると、事件を引き起こしたのは、デザイナー・ベビーのプロトタイプとも呼ばれる男の子と女の子の二人(10歳)。ウィルスを作ってアメリカの外相を殺したのも、タンザニアで無償で改変トウモロコシを提供していたのものも、デザイナー・ベビー研究を主導しているのも、実はこの二人・・・。

それがわかった時点で、小説としてもありえない絵空事と切り捨てる人も出てきそうな気はする。だが、彼らがそういう行動に出た理由は? そういうデザイナー・ベビーから見た視点が存在することが、この小説のおもしろいところでもある。デザイナー・ベビーのようなものを生み出していいのかどうか人はいろいろ論議するかもしれないが、まだ存在もしていないデザイナー・ベビーの側から人間、世界を見るという発想はしなさそうだから。そこがこの小説のSF的なところかもしれない。SFの賞にノミネートされているのもそれなりに納得できる。

SF的な設定に拒否反応を起こす人もいるだろうし、また逆に、SFだったらもっと先の遺伝子操作なんか当たり前の世界も描いてしまうから、SFだと思って読むと物足りなさが残るかもしれない。が、現代のテクノロジーがもたらす可能性と問題を提起しながら、それをサスペンス仕立てのエンターテイメント小説にまとめ上げているのは間違いない。


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2017年4月28日 (金)

Kindleでは売っていないが、Koboでは買えるドイツ語児童書・マンガの出版社

多読となるとやはり児童書は不可欠。マンガも日本語で読んだことがあるものなら、なんとかドイツ語でもいけるかもしれない。

紙の洋書だと取り寄せに時間がかかったりするが、買ってすぐ読めるのが電子書籍の強み。紙の本のように場所も取らない。

でも、日本で買えないドイツ語の電子書籍があって、本当に不便。出版社によって買えるか買えないか決まっていて、児童書とマンガを多く抱えているCarlsen Verlagなどは日本ではいまだに電子書籍が買えない。

ところが、以前は日本では買えなかった出版社の電子書籍がKoboで買えるようになっていることに最近気づいた。じゃあ、Kindle版もあるのかと思ったら、アマゾンでは売っていないという・・・。

というわけで、今のところはkoboでしか売っていない児童書・マンガを出している出版社を紹介。

ドイツのストアからebubの本を直接買ったほうが安かったりするが(ドイツのアマゾンからkindle本は買えない)、楽天なら手軽に買える人もいるかもしれない。

楽天Koboで出版社で検索するには、検索欄に
出版社名:Arena Verlag
のように、頭に「出版社名: 」とつけて入力するといいようだ。日本の出版社にも使えるみたいだ。

○Arena Verlag
「出版社名:Arena Verlag」の検索結果
ここの児童書は昔よく読んだ。Tlida Apfelkernシリーズなどがおすすめ。ムーミンのドイツ語訳などもここ。

○Oetinger Verlag
「出版社名:Oetinger Verlag」の検索結果
こちらも児童書の出版社。"Büchersterne"と表紙にある本は小学生向けのレベル分けされた読み物。でも、いちばんやさしいレベルでも700語、800語以上あるだろうから、むずかしいだろう。絵本も少しあるようだ。

○Egmont
これは以前ドイツ語訳のマンガの紹介をした時(「ドイツ語多読本:ドイツ語訳マンガ」)、楽天Koboでは「お住まいの地域では購入できません」という表示が出て買えなかった出版社。今では買えるようになっていてちょっと驚いた。
この出版社からはマンガ、コミック(海外)、児童書などが手に入る。検索ワードを変えてやると探しやすい。
「出版社名:Egmont Manga.digital」の検索結果
これでマンガがリストアップされる。有名どころでは名探偵コナンとか?

「出版社名:Egmont Schneiderbuch.digital」
こうすると児童書がリストアップ。懐かしいところではEnid Blytonのドイツ語訳など。

「出版社名:Egmont Ehapa Media.digital」
ディズニーのコミックやLucky Luke(ベルギー?)、Asterix(フランス?)などのコミック。

これだけでもけっこうな数だと思うが、それが今のところ日本のアマゾンのkindle本では買えないという・・・。たぶんそのうちkindleでも買えるようになる気はするが、でもちょっとこの差は何なんだ。

絵本は紙の本がいいと思うが、紙の本は邪魔になって仕方がないので、それ以外はもう電子書籍で読みたい。

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2017年4月 5日 (水)

ドイツ語多読本: Erwin Moser: Winzig. Das große Buch vom kleinen Elefanten

Winzigという名の子ゾウの物語。
名前の通り、ゾウにしてはとても小さく、背の高い草の下で眠っている間に、両親の目から見えなくなってしまい、ゾウの群れから見捨てられてしまう・・・。

以前買ったもので、アマゾンの洋書バーゲンコーナーでたまたま見かけたので紹介。
今だと57%引きでかなり安い(400円程度)。バーゲンコーナーの洋書は、待っていると値段が下がっていって、70%以上オフになったりするものもある一方で、突然コーナーから消えるものもある。できるだけ安く買いたいと思うと、買い時がむずかしい。

Erwin Moser: Winzig. Das große Buch vom kleinen Elefanten

3712語

Winzig, der Elefant
Winzig geht in die Wüste
Winzig sucht die Elefanten
Winzig findet seine Eltern
の、1200〜1300語程度の4冊を1巻にまとめて、ソフトカバー版にしたもの。
3歳以上向けの読み聞かせ絵本。

これら元のタイトルを見るとあらすじはわかってしまうが、元の4冊目はタイトルですでに結末を明示しているようなもの。3歳児向けの絵本だし、当然そうなるはずの結末だろう。そこにいたるまでのストーリーを楽しむ。

語数は多めだが、イラストが各ページの半分もしくはそれ以上を占めていて、その場面に合わせた絵になっているので、ストーリーは追いやすく、わからない単語も推測しやいと思う。


印象的なのは第1話冒頭とと最終話の結末。
寝ている間に置き去りにされたWinzig、目覚めてまず感じるのが、何か足りない、という感覚。おかあさん、おとうさんはどこ? と考える知恵すらない子供の無力さ。そして、自分の長い鼻と似た形のものを持った生き物を仲間かもと思ったりするいたいけのなさ。

(表紙の絵もそんなイメージを暗示? ゾウの鼻はドイツ語ではRüsselだが、チョウとかハチの長い口もRüsselだったりする。じゃあ長いのがRüsselなのかと思うと、ブタの鼻もRüsselだったりして、ドイツ人的にはブタの鼻も長いのか、それとも、Rüsselにはもっと別な意味合いがあるのかとも思ったりする。日本語だとゾウだろうとブタだろうと鼻は鼻だから)

あとは、いつものErwin Moserで、いろんな場所に出かけて行っては、いろんな生き物に出会って、冒険・・・。

で、最終話の結末。元のタイトルが示しているように、最後は両親に再会するわけだが、ゾウの習性に反して群れには加わらないWinzig。そのわけは最後までのWinzigの物語をたどってきた人には納得。

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2017年2月27日 (月)

ドイツ語多読本: Andreas Brandhorst: Das Schiff

2016年ドイツSF大賞ベストドイツ語長編
http://www.dsfp.de/preistraeger/2016-2/laudatio-2016-bester-deutschsprachiger-roman
2016年クルト・ラスヴィッツ賞ベストドイツ語長編
http://www.kurd-lasswitz-preis.de/2016/KLP_2016_Bester_Roman_Laudatio.htm
のダブル受賞作。

Andreas Brandhorst: Das Schiff

130,000語


6000年後、想像したって仕方がないそんな遠い未来を舞台にできるのはSFならでは。

その頃、人間は不死を手に入れている。それは地下に広がるAIの集合体「クラスター」のおかげ。人間をはるかに超えるスピードで進化したAIには不死治療すら可能。人は30歳になると不死の治療を受け、その後は老いも病気も知らず、すべてをクラスターにまかせて、永遠の命を楽しむだけ。ただし気候変動で水面は上昇、全人口は400万人に減少。

そんな世界で主人公Adamは不死になれなかった男。ごくまれに発現する「オメガ因子」、それを持つ人間に不死治療はできない。30歳で自分もその一人だと知ったAdamもすでに92歳。外部骨格的な機械を装備しないと外出もままならない。もしくは肉体を生命維持装置に入れて、Faktotumと呼ばれる義体に精神転送して動きまわるか。そんな死を目前にしたAdamにもやれることがある。それは地球の外、宇宙に飛び出していくこと。

もちろん老いた肉体で宇宙に行くのではない。クラスターは無数のゾンデを宇宙に送り出し、1000光年先にまで到達している。ゾンデが行き着いた星は地球と量子リンクで結ばれ、精神を転送できる。そこでは最長1000年かけてゾンデによって運ばれた義体が精神を待ち受けているという仕組み。もちろん量子の絡み合いを利用するのでリンクは光速の制限を受けない。それを使って地球の外に出ていけるのは、Adamのように不死になれなかった人間だけ。彼らはMindtalkerと呼ばれる。地球に131人しかいない。不死を得た人間は地球に縛りつけられる。

クラスターがMindtalkerたちを宇宙に送り出すのは、かつて高度文明を作り上げたMuriahの遺産を探しているから。Muriahは「カスケード」というネットワークを宇宙に張り巡らし、銀河間の物理的な移動すら自由にできるほどだった。1000光年先にゾンデを送るのに1000年かかるクラスターなど足元にも及ばない。ところが、宇宙の高度文明をいくつも滅亡させた「宇宙炎上」を境に、Muriahは姿を消してしまった。それが100万年前の話。

そんなわけで、今回の行き先はCygnus 29だと告げるのは、クラスターの数ある人格の一つBartholomäus。Adamの教育係で、人型の「アバター」に身を包んで登場する。文明の跡を示すオベリスクと宇宙船らしきアーティファクトが見つかったのだ、という。若い頃からの知り合いで、かつてはいっしょに暮らしていたこともあるRebeccaと調査に出かけるが、謎の宇宙船が出現、攻撃を受ける。現地のAIやクラスターの制止を振りきって、Rebeccaを救いに行くAdam、どうにか彼女の義体の頭と胴体を抱えて地球に緊急帰還する。

これが事の始まりだが、ストーリー展開がおもしろくなっていくのは、クラスターに対する疑惑が生まれてから。謎の女性がAdamに接触してきて、「オメガ因子など存在しない」と言う。つまりクラスターは人間を欺いているのだと。Adamは最初それを信じないが、疑いを深めていく。クラスターは何を隠しているのか、Adamは何に巻き込まれているのか? 

と、不死になったらどうなんだろう、人工知能の進化の先には何があるのだろうなどと考えさせられつつも、先が気になってページをめくってしまう。とくにクラスターの意図がわかった後の展開はスリリング。最後にはMuriahや「宇宙炎上」の謎、Cygnus 29で攻撃してきた未知の宇宙船の謎もすべて繋がり合っていたことがわかる、練り上げられたプロット。安心して楽しめると思う。


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2017年1月22日 (日)

ドイツ語多読本: Lilli L'Arronge: Chaos in Bad Berleburg

ひとつのことから連鎖的に事件発生、カオスが現出する・・・?

Lilli L'Arronge: Chaos in Bad Berleburg

79語

バナナを食べてしまった男の子、皮を道路に捨てる。「そんなことしちゃだめでしょ」と言う(たぶん)姉。どうして?と尋ねる弟に姉は言う、「想像してみて」と・・・。

それで、男の子の頭から浮かんでくる吹き出し、その中にバナナの皮を踏んづけようとしている一本の足。

想像が進み、次には足を滑らせたサラリーマンの全身像、バナナの皮は通りかかったおばあさんに向かって飛んでいく・・・そんな吹き出しになって、男の子はほくそ笑む。

次の吹き出しでは、サラリーマンは転んだはずみに立てかけてあったハシゴの頭をぶつけ、バナナの皮はおばあさんの顔に当たり、買い物袋を落とす、そこに手押し車を押してやってくる男性・・・。

というふうに、想像が進むごとに吹き出しも大きくなり、描かれる人や物もどんどん増えていく。最初は怒っていた姉も想像の加速ととも楽しくなっていき、カオスの度も増していく。最後は想像はページ全体に広がり、吹き出しもなくなって、弟と姉はカオスとなった町の中にいる・・・。そんな絵の構成。

バナナの皮に滑ったらハシゴを倒して、上からペンキ缶が落ちてきて、通りかかった人の頭に・・・。とベタな展開だが、それぞれの出来事が連鎖的にさらに事件を引き起こしていくので、それを一枚の絵にして見せられると、絵のいたるところでドラマが展開していて、とてもにぎやかで楽しい。目で物語を読む絵本。


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2017年1月17日 (火)

ドイツ語多読本: Karsten Kruschel: Was geschieht dem Licht am Ende des Tunnels

ドイツSF大賞のベスト短編を紹介したので、同じくSFのKurd Laßwitz賞のほうも。
2016年のドイツ語ベスト短編。

Kurd Laßwitz Preis  2016 Beste deutschsprachige SF-Erzählung

これも電子書籍で読める。紙の本しかなかったら読まなかっただろう。
NOVA Science Fiction Magazin 23: Themenausgabe Musik und Science Fiction

これに収録。

NOVAは半年に一度出ているドイツ語の短編SFのアンソロジー、ということのようだ。
この号は「音楽とSF」というテーマで統一しているが、巻頭言にはテーマ設定をしたのはひさしぶりだとあったので、普段はただの短編アンソロジーなのだろう。ドイツSF大賞ベスト短編が掲載されていたphantastisch!は、出版の動向やら作家のインタビューやら、ハーラン・エリスンの特集記事などがあって、雑誌だったが、こちらは定期刊行のアンソロジー、あくまでも作品メインのようだ。

受賞作の"Was geschieht dem Licht am Ende des Tunnels"は、SF怪奇譚みたいな感じか。
語数は1万語を越える程度の分量。

表題にトンネルとあるが、道路や鉄道のトンネルではなく、坑道。ただし掘るのはゴミの山。廃物が積み重なり、層となった地面に縦穴を掘り、さらにいろいろな深さで横穴を掘っていく。採掘場の周りでは、掘り出された廃棄物から金属やプラスチック類を抽出する工場が煙を吐く。つまり、資源が枯渇した未来の話。

主人公はそんな採掘場の坑夫。冒頭の場面も坑道の中。もちろん資源探しが仕事だが、主人公にはもうひとつ目的がある。それは昔のCD、できればレコードの発掘。この場面でも、見つけたCDにテスターをあてて再生してみたりしている。すると、何か視界をよぎるものがある。いっしょに坑道に入っているパートナーの女性を見ると、彼女も見たらしく「手だ」と言う。そして、なぜか英語で何かを口走る。何を言ったのか聞き返してみるが、彼女は何も答えない。それで得体の知れない恐怖を感じつつ坑道を後にする・・・。

そんな冒頭だが、この女性が口走った英語に注がついていて、Tear For Fearsの"Mad World"の歌詞の一節だと読者にはわかる仕組み。音楽とSFというテーマに合わせた趣向なのだろう。不可解な現象が起こるときに主人公の直接頭の中に響いてきたりと、重要なポイントでいろいろな歌が出てくる。古くは1960年代から2006年あたりまでの歌、十数曲。

その後、主人公は別のパートナーと組んでお宝を発見。その坑道の採掘権を主張、会社に認めさせる。ところが、冒頭場面でいっしょに坑道に入っていた女性がやってきて、あの坑道を会社は放棄するのだと言う。どんな機械を使ってもマッピングできない異常な地域にあるため危険だからだと。そして、これから主人公が入ろうとしている坑道も同じ地域にあるのだ、と警告する。もちろん主人公は聞く耳を持たず、問題の坑道に入っていく。そこで目にするのは・・・?

そんな感じの話だが、不可解な現象を説明する理屈がないので、SFというよりは怪奇譚というか怪異譚というか。用途もわからなくなってしまった機械の残骸や数知れない廃物が積み重なり、押し潰された闇の中を穴を掘って進んでいく、そんないかにもな舞台に出現する不可解な出来事。それは音楽の亡霊か何かなのか?? 随所に現れる歌は闇の中の不可解なものからのメッセージとも読めるようになっている。

状況の異常さや恐怖感、その場の緊迫感などはあらすじの説明では伝わらない。それは描かれる細部に宿るものだろうから。

2つのSF賞のベスト短編を紹介したが、長編はドイツSF大賞もラスヴィッツ賞も2016年は同じ作品が受賞。Andreas Brandhorstの"Das Schiff"。最初のほうを少し読んだかぎりではおもしろそうだが、今は中断。長編はできるだけ一気に読まないとダメなんだよなあ・・・。


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2017年1月11日 (水)

ドイツ語多読本: Frank Böhmert: Operation Gnadenakt

2016年ドイツSF大賞(Der Deutsche Science-Fiction-Preis)、ドイツ語ベスト短編受賞作。

Laudatio 2016 Beste deutschsprachige Kurzgeschichte

"phantastisch! "という雑誌の57号に収録。電子版があったので読んでみた。

phantastisch! Ausgabe 57 (1/2015)

買ってから見つけたのだが、全編掲載しているサイトがあった。
TOR ONLINE: "Operation Gnadenakt (Frank Böhmert)"

ショート・ショート的な長さ。2ページ程度か。まあ、雑誌自体350円ぐらいだったしいいか。他の記事もあるし。

時は2033年。アメリカ大統領が定例の国防省長官との会談時に、"Gnadenakt"プロジエクトについて教えろ、と言う。前大統領からの引き継ぎの手紙に、奈落の底ばかり見て暗鬱になり、まともに未来を見られなくなったら、国防長官に聞いてみろとあったのだ・・・。
それに対して国防長官が言うには、それは最後の最後、藁にもすがる気持ちになった時にしか頼ってはいけないと、手紙にありませんでしたか、軍の頂点にいる大統領であっても知らなくて済むこともあるんですよ、と。

そんなふうに気を持たせてから語られる”Operation Gnadenakt"とは?
Gnadenaktは普通は恩赦とか大赦とか訳されるもの。で、誰に対するGnadenaktかというとヒトラー。つまりヒトラーは生き続けている。死を免れるんだから"Gnadenakt"というわけだが・・・。

当時のトルーマン大統領とその側近は死ぬだけでは罪の償いには足りない、比類のない罪には比類のない処罰を、と考えてヒトラーを生かし続けることにする。アメリカ最先端の医療技術を投入し、生かし続けること98年、今ではヒトラーの年齢は150歳にもなる。もちろん、たとえば延々と拷問を繰り返してやろうなどと考えて生かし続けているのではない・・・。

そんな感じの話。
罪に見合った正当な処罰を与え、正義を行なっているのだという側が、罰を受けるべき非道な悪の側とやっていることは同じになっている、そんな皮肉なのか、これは? そんな疑問符つきの感想にしかならないので、自分で読んで判断してください。

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