« Kobo: FW4.20.14622 アップデート | トップページ | Kobo: データベース用ランチャー更新、2020.03.26版(kobo Libra H2O対応) »

2020年3月25日 (水)

E Inkの新カラーディスプレイ搭載の電子書籍端末が中国で発売ということで・・・

いつも見ているthe-ebook-reader.comやthe-digital-reader.comが話題にしていたので、新型のカラーE Inkディスプレイについてちょっと調べた。

Ireaderc6

"New Color E Ink eReaders Getting Released in China Soon"
"Color eReaders Are Being Announced in China"
を参照。

両記事ともcnTechPostの"Chinese reading app iReader launches color e-ink reader that can display 4,096 colors" を元にしているとのこと。

発売されるのは、中国のiReader C6。6インチでカラー4096色、プロセッサはクアッドコア、ストレージ16G。
もう一社発売するところがあって、iFlytekという会社。こちらはフラットなデザインで、同じ6インチ。重さは150g、厚さ6.9mm。ライトは24個、ということらしい。
どちらも値段は不明。

ついでに言っておくと、E Ink搭載の白黒スマートフォンを出しているHisenseが、このカラーE Inkのスマートフォンも発売するらしい。デモ機の映像。



で、これらの端末が搭載しているカラーのE inkディスプレイだが、去年発表された"Print-Color ePaper"と言われるもの。

これは数年前からあるE Ink社のACeP(Advanced Color ePaper)とは別物。
ACePは今のところデジタルサイネージ(看板)用途だが、Print-Color ePaperは電子書籍端末、教育用途に作られたものらしい。

ワコム社主催のConnected Ink 2019で、E Ink社による「デジタルライティングにおけるePaperの開発トレンド」という発表があり、その時に使用されたスライドをPDFで見ることができる(こちらのページにリンクがある)。以下の画像はそのPDFから。
Eink09

ACePはイエロー、シアン、マゼンタと白の粒子を動かすことでフルカラー(32万色)を実現。

売りはなんと言っても、カラーフィルター(CFA,Color Filter Array)を使っていないこと。それで「表示ピクセルそれぞれが色を表現するため、隣接する複数ピクセルで色を表すCFA方式のディスプレイよりも、表示品位が高いとしている」(CNET Japanの記事)。

対して、Print-Color ePaperだが、こちらは4096色。
PDF画像を見ればわかるように、仕組みはACePとはまったく違う。白黒のE Inkのカプセルを使っていて、その上に赤・緑・青の層がある。つまり、カラーフィルター(CFA)を使っている。E Ink社のプレスリリース(E Ink Announces Color Portfolio for Smart Retail, Education and Consumer Electronics)ではっきりそう言っている。
"This new ePaper platform utilizes a new printed Color Filter Array (CFA) technology in conjunction with E Ink’s second generation, faster and brighter, Carta 1100 ink."

技術的なことはよくわからないが、カラーフィルターというのは液晶ディスプレイでも使われているもので、RGB(赤緑青)のフィルターに当てる光の量を変えることで様々な色を作り出す、という話。その光の量を変える役割を果たしているのが液晶(電圧によって透過率が変わる)。

そこで、Print-Color ePaperに戻ると、この液晶に相当する層に白黒の顔料が入ったカプセルの層(プレスリリースの言い方ではCarta 1100 ink)が来ている。もちろん液晶ディスプレイはバックライトなので、内側の液晶層からカラーフィルターに向かって光が進むが、こちらは外から来る光かフロントライトを利用することになる。それを白黒カプセルにあてて反射させ、カラーフィルターを通すということになるのだろうか。それで様々な色が出るのだとすると、白黒カプセルを動かして光の量を変える? ふたたびPDFの画像。
Eink12
フロントライトは必須だが、ほんの少しだけ、という表記(Required FL on, but...)。10%と書かれている。
"300dpi B/W text"というのは白黒テキストは300ppiということだろう。ということは、カラーにすると300にならないということかもしれない。

そして、このカラーフィルター方式のE InKディスプレイというのは、実はすでに10年ぐらい前に作られている・・・。それがE Ink Triton。E Ink社のホームページにも名前は挙がっている。Engadget 日本版の記事はこちら。数年後にTriton2も出ている(ITmediaの記事)。採用して商品化するメーカーもあったらしいが、もうどこにも姿は見えない。
E Ink TritonのYouTube動画:


Print-Color ePaperは昔のTritonの改良版といった感じなのではなかろうか。

Connected Ink 2019の発表資料のPDF画像をもう一枚。
E Inkカラーディスプレイの今後の目標を説明しているが、そこに初のカラーディスプレイだったはずのTritonの名前はない。Eink10 

ACePの"G1 10 Sec"というのは、「第1世代、10秒」か。10秒というのは描画速度? それが「2.8秒」になり、今後の「第2世代では、1秒以内」を目標にする、ということだろう。
Print-Color ePaperのほうは、描画は現時点で「0.35秒、6インチ300dpi、10.3インチ226dpi」だが、これからは「0.3秒以内、発色を改良するのが目標」という感じか。

というわけで、カラーの電子書籍端末といっても、クオリティーにはあまり期待しないほうがいいかも・・・?
現行のモノクロ電子インクに光を当てて反射させるわけだから、発色はよくなさそう・・・これはもちろん素人の感想。KindleやKoboで使われているCartaディスプレイはどう見ても灰色で、紙のように白くはない。反射光もくすむのではなかろうか・・・? カラーフィルターが新しくなっているというが、どの程度のものなのだろうか。

では、ACePがあるのに、なぜまた(成功しなかったTritonみたいな)カラーフィルター式のカラーディスプレイが出てきたのか?
参考になるのは、今年1月のICCE 2020(IEEE International Conference on Consumer Electronics )での E Inkの Johnson Leeのスピーチ。YouTubeに動画がある。
ACePは新聞レベルで、カラー雑誌のレベルにはまだ達していないので、努力中だみたいなことを簡単に言って、Print-Color ePaperの話に移っていくあたりから再生。


ACePは読書やノート用の端末としては遅すぎて使えない。そこでPrint-Color ePaperの登場だ、という話らしい。中国では教科書のデジタル化を進めて、今後10年で生徒に紙の教科書ではなく、端末を持たせる計画があって、表示のクオリティーを落としても、動画も見られる端末が欲しいという要望があるのだ・・・というようなことをたぶん言っている。(さらに補足すると、Print-Color ePaperではペン入力が可能。学校で使うならノートを取れるほうがいいはず)


というわけで、今後の注目点はamazonやkoboの動きだろう。カラー化を目指すのかどうか。Booxみたいな小さなところは何か動きがある?

the-digital-reader.comあたりは、amazonがPrint-Color ePaperを気に入っていたら、金に物を言わせて独占使用権でも得ていたはずだ、みたいな想像をしている。天下のamazonが中国の弱小企業に遅れを取るわけがない、と。それにカラーにはClearInkという別の選択肢もあるし、amazonがずっと前に買収したLiquavistaだってこっそりと開発を続けているかもしれない、とも言っている。

いずれにせよ、これから発売される端末の実際の出来次第か。中国で評判がよく、売れるようだったら、amazonやkoboもカラー化に向かう?


|

« Kobo: FW4.20.14622 アップデート | トップページ | Kobo: データベース用ランチャー更新、2020.03.26版(kobo Libra H2O対応) »

Kindle」カテゴリの記事

kobo」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« Kobo: FW4.20.14622 アップデート | トップページ | Kobo: データベース用ランチャー更新、2020.03.26版(kobo Libra H2O対応) »