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2020年3月

2020年3月25日 (水)

E Inkの新カラーディスプレイ搭載の電子書籍端末が中国で発売ということで・・・

いつも見ているthe-ebook-reader.comやthe-digital-reader.comが話題にしていたので、新型のカラーE Inkディスプレイについてちょっと調べた。

Ireaderc6

"New Color E Ink eReaders Getting Released in China Soon"
"Color eReaders Are Being Announced in China"
を参照。

両記事ともcnTechPostの"Chinese reading app iReader launches color e-ink reader that can display 4,096 colors" を元にしているとのこと。

発売されるのは、中国のiReader C6。6インチでカラー4096色、プロセッサはクアッドコア、ストレージ16G。
もう一社発売するところがあって、iFlytekという会社。こちらはフラットなデザインで、同じ6インチ。重さは150g、厚さ6.9mm。ライトは24個、ということらしい。
どちらも値段は不明。

ついでに言っておくと、E Ink搭載の白黒スマートフォンを出しているHisenseが、このカラーE Inkのスマートフォンも発売するらしい。デモ機の映像。



で、これらの端末が搭載しているカラーのE inkディスプレイだが、去年発表された"Print-Color ePaper"と言われるもの。

これは数年前からあるE Ink社のACeP(Advanced Color ePaper)とは別物。
ACePは今のところデジタルサイネージ(看板)用途だが、Print-Color ePaperは電子書籍端末、教育用途に作られたものらしい。

ワコム社主催のConnected Ink 2019で、E Ink社による「デジタルライティングにおけるePaperの開発トレンド」という発表があり、その時に使用されたスライドをPDFで見ることができる(こちらのページにリンクがある)。以下の画像はそのPDFから。
Eink09

ACePはイエロー、シアン、マゼンタと白の粒子を動かすことでフルカラー(32万色)を実現。

売りはなんと言っても、カラーフィルター(CFA,Color Filter Array)を使っていないこと。それで「表示ピクセルそれぞれが色を表現するため、隣接する複数ピクセルで色を表すCFA方式のディスプレイよりも、表示品位が高いとしている」(CNET Japanの記事)。

対して、Print-Color ePaperだが、こちらは4096色。
PDF画像を見ればわかるように、仕組みはACePとはまったく違う。白黒のE Inkのカプセルを使っていて、その上に赤・緑・青の層がある。つまり、カラーフィルター(CFA)を使っている。E Ink社のプレスリリース(E Ink Announces Color Portfolio for Smart Retail, Education and Consumer Electronics)ではっきりそう言っている。
"This new ePaper platform utilizes a new printed Color Filter Array (CFA) technology in conjunction with E Ink’s second generation, faster and brighter, Carta 1100 ink."

技術的なことはよくわからないが、カラーフィルターというのは液晶ディスプレイでも使われているもので、RGB(赤緑青)のフィルターに当てる光の量を変えることで様々な色を作り出す、という話。その光の量を変える役割を果たしているのが液晶(電圧によって透過率が変わる)。

そこで、Print-Color ePaperに戻ると、この液晶に相当する層に白黒の顔料が入ったカプセルの層(プレスリリースの言い方ではCarta 1100 ink)が来ている。もちろん液晶ディスプレイはバックライトなので、内側の液晶層からカラーフィルターに向かって光が進むが、こちらは外から来る光かフロントライトを利用することになる。それを白黒カプセルにあてて反射させ、カラーフィルターを通すということになるのだろうか。それで様々な色が出るのだとすると、白黒カプセルを動かして光の量を変える? ふたたびPDFの画像。
Eink12
フロントライトは必須だが、ほんの少しだけ、という表記(Required FL on, but...)。10%と書かれている。
"300dpi B/W text"というのは白黒テキストは300ppiということだろう。ということは、カラーにすると300にならないということかもしれない。

そして、このカラーフィルター方式のE InKディスプレイというのは、実はすでに10年ぐらい前に作られている・・・。それがE Ink Triton。E Ink社のホームページにも名前は挙がっている。Engadget 日本版の記事はこちら。数年後にTriton2も出ている(ITmediaの記事)。採用して商品化するメーカーもあったらしいが、もうどこにも姿は見えない。
E Ink TritonのYouTube動画:


Print-Color ePaperは昔のTritonの改良版といった感じなのではなかろうか。

Connected Ink 2019の発表資料のPDF画像をもう一枚。
E Inkカラーディスプレイの今後の目標を説明しているが、そこに初のカラーディスプレイだったはずのTritonの名前はない。Eink10 

ACePの"G1 10 Sec"というのは、「第1世代、10秒」か。10秒というのは描画速度? それが「2.8秒」になり、今後の「第2世代では、1秒以内」を目標にする、ということだろう。
Print-Color ePaperのほうは、描画は現時点で「0.35秒、6インチ300dpi、10.3インチ226dpi」だが、これからは「0.3秒以内、発色を改良するのが目標」という感じか。

というわけで、カラーの電子書籍端末といっても、クオリティーにはあまり期待しないほうがいいかも・・・?
現行のモノクロ電子インクに光を当てて反射させるわけだから、発色はよくなさそう・・・これはもちろん素人の感想。KindleやKoboで使われているCartaディスプレイはどう見ても灰色で、紙のように白くはない。反射光もくすむのではなかろうか・・・? カラーフィルターが新しくなっているというが、どの程度のものなのだろうか。

では、ACePがあるのに、なぜまた(成功しなかったTritonみたいな)カラーフィルター式のカラーディスプレイが出てきたのか?
参考になるのは、今年1月のICCE 2020(IEEE International Conference on Consumer Electronics )での E Inkの Johnson Leeのスピーチ。YouTubeに動画がある。
ACePは新聞レベルで、カラー雑誌のレベルにはまだ達していないので、努力中だみたいなことを簡単に言って、Print-Color ePaperの話に移っていくあたりから再生。


ACePは読書やノート用の端末としては遅すぎて使えない。そこでPrint-Color ePaperの登場だ、という話らしい。中国では教科書のデジタル化を進めて、今後10年で生徒に紙の教科書ではなく、端末を持たせる計画があって、表示のクオリティーを落としても、動画も見られる端末が欲しいという要望があるのだ・・・というようなことをたぶん言っている。(さらに補足すると、Print-Color ePaperではペン入力が可能。学校で使うならノートを取れるほうがいいはず)


というわけで、今後の注目点はamazonやkoboの動きだろう。カラー化を目指すのかどうか。Booxみたいな小さなところは何か動きがある?

the-digital-reader.comあたりは、amazonがPrint-Color ePaperを気に入っていたら、金に物を言わせて独占使用権でも得ていたはずだ、みたいな想像をしている。天下のamazonが中国の弱小企業に遅れを取るわけがない、と。それにカラーにはClearInkという別の選択肢もあるし、amazonがずっと前に買収したLiquavistaだってこっそりと開発を続けているかもしれない、とも言っている。

いずれにせよ、これから発売される端末の実際の出来次第か。中国で評判がよく、売れるようだったら、amazonやkoboもカラー化に向かう?


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2020年3月15日 (日)

Kobo: FW4.20.14622 アップデート

またkoboがばたばたしている。
アップデート最新は4.20.14622だが、実はこの直前に日本未配布の4.20.14617がリリースされたばかり。
更新内容はよくわからないが、バグフィックスがあった模様。

affiliatesを見るかぎりでは、カナダ周辺では最新版が配布されているが、それ以外は4.20.14601になっている模様。もちろん日本でも配布されていない(2020/3/15現在)。

-- 追記(2020.3.27) --
日本も4.20.14622になっている。
-- 追記おしまい --


◎FWダウンロード
いつものKobo Firmware Downloadsから。

手動アップデート方法:
・自分のモデルにあったFW(kobo-update-4.20.14622.zip)をダウンロード
・kobo-update-4.20.14622.zipをPCの適当な場所で解凍
・その中の、KoboRoot.tgz、manifest.md5sum、upgradeを、kobo端末の.koboフォルダにコピー
・USB接続解除、ケーブルを抜く
これでおしまい。


◎更新内容
リリースノート
内容は4.20.14601と同じで、変わっていない。


4.20.146717での変更
・電源ON時に端末のロックがスキップされるバグ
・ページをめくるとPDFのズームが維持されないバグ
・CYMK jpgが表示されないバグ
の修正。
あとはハイライトがうまくできないバグが修正されたという声もあり。

4.20.14622(mobilreadのスレッド参照)での変更
今のところ詳細不明・・・。


個人的に気になっている点。
4.20.14601の時にちょっと書いたが、辞書やハイライト目的で語句を選択すると、これまでは下線が引かれていたが、それが見えなくなったこと。今回の4.20.14622でも見えないまま。
なんかまだしばらくばたつきそうな予感・・・。


◎パッチ
Instructions for patching firmware 4.20.14622
からどうぞ。
ホーム画面のストアやおすすめを消したり、Forma以外でも横画面を可能にしたり、左右どちらをタップしてもページがめくれるようにしたり、スリープに入る時間を調節したり・・・その他いろいろカスタマイズを可能にしてくれる便利なパッチ。

知らない人は一度どんなパッチがあるか見てみたほうがいいと思うが、いつでも公式のFWに戻せることすらわかってないんだろうし、怖いんだろうな。上に書いた手動でのFWアップデートの手順も理解できないなら、無理かもしれないが。


ランチャー
一応動作は確認した。


koreader
こちらも動く。





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2020年3月 8日 (日)

Kobo: FW4.20.14601 アップデート

もう何日か前にリリースされている4.20.14601だが、楽天はまだ日本には配布していない。
最近は日本も海外とほぼ同時期にアップデートが提供されていたが、一時期日本だけアップデートされない暗黒時代もあったので、今回はどうなることやら・・・。
-- 追記 --
日本でも配布が開始された。
WiFi接続して同期すれば、アップデートされるだろう。あるいは自動同期をオンにしていれば、そのうちアップデートされるはず。
-- 追記おしまい --

たぶん今回のアップデートの目玉は、ライブラリに「すべての本」、「著者名」、「コレクション」のカテゴリーにもう一つ「シリーズ」が追加されたことか。


◎FWダウンロード
いつものKobo Firmware Downloadsから。

楽天はまだ4.20.14601を配布していないので、アップデートするなら手動で。

アップデート方法:
・自分のモデルにあったFW(kobo-update-4.20.14601.zip)をダウンロード
・kobo-update-4.20.14601.zipをPCの適当な場所で解凍
・その中の、KoboRoot.tgz、manifest.md5sum、upgradeを、kobo端末の.koboフォルダにコピー
・USB接続解除、ケーブルを抜く
これでおしまい。


◎更新内容
リリースノート
シリーズ表示
シリーズ単位で本を表示できるようになりました。ライブラリでシリーズを選択してください。
右上のメニュー[…]からリスト表示または表紙一覧を選べます。
シリーズを選択中に[その他の巻]リンクをタップすると、同シリーズの持っていない巻を確認できます。

辞書
読書中に単語を長押しすると表示される辞書のポップアップが新しくなりました。
ポップアップから辞書の全画面表示、Google 検索、Wikipedia 検索に切り替えられます。

Wi-Fi
スキャンまたは接続試行中に表示されない Wi-Fi 2.4GHz ネットワークが生じる問題を修正しました。
(Freeboxルーター、OpenWrt ソフトウェア搭載のルーター等への対応)

バッテリー
スリープ時に想定(以?)上にバッテリーが消費されていた可能性があることから、前回閉じたページがきちんと表示されるよう複数の修正を加えました。


◯いつものdavidforさんによる補足
新機能:
▽「シリーズ」タブ
・シリーズのリストが表示される。表紙、著者名、冊数がわかる。
・リスト表示と表紙一覧の切り替え
・ソートは更新日、シリーズ名、冊数の3種類
・リストは「シリーズ名」に基づいているのではなく、データベース中のあるidから作られている。したがって、「インポートした本」(自炊本その他)はシリーズのリストには入らない。このidの扱いは次のcalibreで対応するはず(対応済み。下記参照)。

▽テキスト選択部分は下線ではなく、白黒反転(マーカー的なやつ)になった。(うちのgloHDでは反転しない・・・)

▽テキスト選択時のポップアップメニューの変更

▽WiFiの修正(たぶんリリースノートで言われていること)

▽ストア購入本を読み終えたとき
・評価とレビューへの誘導が変更
・本を90%以上読んだところで閉じると、読了にするかどうかたずねるようになった。
・本を開いている時の上のメニューで、フォント、進行状況、ズームバー(pdfや画像の時)のアイコンをタップして現れるポップアップ(フォントならフォントサイズのスライダーなどが現れるやつ)が、画面の下から画面の上部に移動。(要するに、Aaアイコンの直下に出る)

▽開発者モードをオンにすると、すべてのベータ機能も使えるようになる。
 注:Koboは新しめのモデルで正しく動くとは言っていない。
 個人的な注:"Unblock It"は使うな。

バグフィックス
・著者名リストのソートが大文字小文字を区別できるようになった。
・epubでのフォントの太さ変更がすぐに反映されるようになった。(たしか一旦本を閉じないと反映されなという話だったような)
・左手持ちで、縦画面固定で読んでいる時の、画面方向バグの修正。
・適切な辞書が選択され、記憶されるようになった。

Calibre
calibre 4.12.0ですでに新ファームウェアに対応済みで、「シリーズ」タブにも対応。Kobo Utilities plugin 2.11.0でも対応済み。
(ちょっと補足すると、たぶん「シリーズ」対応というのはKoboTouch pluginなんかを使った場合、つまり、「デバイスに送信」を使った場合だろうと思われる。ファイル名を日本語のままコピーする「ディスクに保存」を使った場合は、「シリーズ’」リストには追加されない気がする。未検証だが。)

以上、こんな感じか。

*シリーズのまとめ機能について、実際に見てみた感想:
これはKindleではマンガで提供されている機能で、Koboにも追加されたってことになるが・・・。

きれいにシリーズにまとまるものもあれば、まとまらないものもある。ちょっと見た感じでは古めの本はシリーズにまとまらないという印象。
それから、シリーズ物ではない一冊本がシリーズとして登録されるってのもなあ・・・。

上のdavidforさんのコメントでは、なんらかのidに基づいているらしいが、それは書籍自身のメタデータだろうから、本自体を修正してもらわないとストア購入本はどうにもならない気がする。
自炊本その他の購入本以外は、calibreは対応したという話だが、未検証。下記ランチャーでフォルダ管理方式にしているので。
誰かやってみたら結果を教えて欲しい。


◎パッチ
Instructions for patching firmware 4.20.14601
からどうぞ。


ランチャー
一応動作は確認した。


koreader
最新版にはしていないものの、動作は確認できた。
koreaderの最近の動きとしては、アラビア語とかヘブライ語とか右から左に読んでいくテキストに対応。(縦書きはたぶんこれからもないと思う。MuPDFが縦書き対応しないので無理だ、とか昔どこかで読んだ気がする。違うかもしれない。)
あと、読書統計を見るのが好きな人は、koreader 2020.02版でカレンダーみたいな表示になっているのでおもしろいかも。最新は2020.03版。



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2020年3月 7日 (土)

Kindle: 5.12.4に暗雲が・・・アメリカでは5.12.3に巻き戻されている

前回話題にしたKindleのアップデート5.12.4だが、問題が発生したのか、アメリカのamazon.comでは引っ込められている。

amazon.comのアップデートダウンロードページでは、5.12.3に戻っている。

ライブラリが見えなくなる問題が発生しているらしい。そのせいで巻き戻されたのではないかと言われている模様。
amazon.comのforumのスレッド"Kindle Paperwhite 7th Gen will not display my library or my home screen. Any ideas?" やmobilereadの"Help! Paperwhite library suddenly invisible"で話題になっている。

日本のダウンロードページではまだ5.12.4のまま。ダウンロードできるようになっている(2020/03/07現在)。
さて、今後どうなる?

-- 追記((2020/03/18) --
5.12.4が復活している。
新たにダウンロードして確認してみたが、前にダウンロードしたものとMD5チェックサムが同じだった(第10世代のPWで確認)。というわけで、中身に変更はない。けっきょく元の5.12.4そのままで行くってことにしたわけか。
-- 追記おしまい --

第10世代のPaperwhiteは5.12.4に手動でアップデートしたが、とくに問題は出ていない。古い世代のKindleで問題が発生しているという話もあるらしい。

すでに対処法も出ているようだ。
Kindleの登録を解除して、再登録するとよいらしい。
上記リンクのamazon.comのforumに、アマゾンのサポートから対処法を教えてもらったというポストがある。それをそのままmobilereadのスレッドが引用してる(こちらを参照)。

簡単に言うと、以下の手順で。
・「設定」画面の「マイアカウント」から「端末の登録を解除」。
・Kindleを再起動
・Kindleを登録し直す
本はダウンロードし直し。

Kindleはファームウェアのダウングレードができない作りになっているので、5.12.3を手動でダウンロードしたところで、インストールできないし、WiFi経由での自動アップデートで5.12.3に勝手に戻ることもないと思う。

5.12.4で問題が出ている場合は参考までに。



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