ドイツ語多読本: Perry Rhodan Neo 1: Sternenstaub
時代を2036年に移したペリー・ローダンの新シリーズ、Perry Rhodan NEOの翻訳が刊行開始されたので、記念に原書を読んでみた。
とりあえず第1期のVision Terrania編8冊の翻訳が7月から毎月1冊ずつ出るらしい。ドイツではNEOのほうもすで150冊以上出ていている。隔週で新しい巻が出るので、翻訳が追いつくことはないだろう。
Perry Rhodan Neo 1: Sternenstaub
48000語
オリジナルの『ペリー・ローダン』シリーズは知らないので、どこまでオリジナルをなぞっているのかよくわからないが、オリジナルへのオマージュでありつつも、新要素、新展開があるのだろう。
月面ステーションとの通信が途絶えたので、その救出に向かうローダンら4人の宇宙飛行士たち。だが、実は月で発見された未確認の人工物の調査が隠された目的。打ち上げ失敗続きの危なっかしいNOVAロケットで一か八かの出発をするスターダスト号、月に着いたと思ったら、いきなり攻撃を受け不時着、攻撃の出どころにたどり着くと例の人工物、超テクノロジーを持った異星人との交渉に臨むローダン・・・と、ハラハラドキドキの展開。おまけに、超テクノロジーを持った異星人への恐怖、またその技術によって力のバランスが崩れる懸念を抱いた、アメリカをはじめとする大国の思惑も絡んできて・・・。まあ、とにかくローダン大活躍。
そんなローダン側のストーリーとは別に、もうひとつ地球での話があって、ローダン側の話と交互に語られていく。それはストリート・チルドレンを保護する施設の話。施設の責任者のジョン・マーシャル視点から描かれる。施設で暮らすシド少年とスターダスト号打ち上げを見る場面からはじまるが、このシド少年が奇妙な能力を持つらしく、その能力を使って資金難に陥った施設を救おうとしたために・・・という話。
この2つのストーリーがどう結びつくのかは、第1巻では不明のまま。でも、次の"Perry Rhodan Neo 2: Utopie Terrania"を読んでみたら、この巻の最後でようやくつながりが少し見えてきた。安心を。
ドイツ語オリジナルの表紙は月で発見された異星人の宇宙船アエトロン号か。日本語訳はローダンの半身を正面から描いていて、対照的。
ドイツ語原文を読んだ感じと翻訳で違和感があるものかどうか、興味本位で翻訳も読んでみた。
翻訳は読みやすいと思ったが、ローダンと相棒のブルの言葉遣いが対等でないところには違和感があるかも。ブルはローダンに対して「です・ます」、ローダンはブルに対して「だ・である」で話しかける。アメリカ人だし、年は1歳しか違わず、テストパイロット時代からの親友らしいし、もっと対等な口のききかたをする感じで読んでいた。それとも、階級は少佐と大尉で違いがあり、ローダンは船長なので、身分の差を気にする日本人の感性にはそのほうがいいのか。
一文一文照らしあわせて読むなんて面倒なことはしていないが、読みやすさ・わかりやすさを考慮してか、少し変えている個所はありそう。
たとえば、冒頭部分は"Er lächelte ..."(「彼は笑顔を作った」)を何度も繰り返しているが、翻訳では繰り返しを省略している。原文はたぶんわざと繰り返してレトリック的な効果を狙っているのだと思うが、翻訳はそれより簡潔な表現を求めたのかもしれない。
また、細部のアイテムの変更っぽいものもあるようだ。スターダスト打ち上げの時にシドは自作の宇宙服を着ていけず、それっぽく見せようとしてかChromstreifen(クロームの金筋?テープ? ストライプ状ものの気がする)を上着にくっつけていたが、翻訳ではそれが金属のバッジになっていたりする。
とはいえ、物語の本質に関わらない細部だし、翻訳だけ読むならとくに違和感を感じることもないだろう。訳文は読みやすいと思ったが、感じ方には個人差があるだろうから、まあ人それぞれか。
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