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2017年1月 8日 (日)

tolinoの補足情報

これも前回の続きで、ドイツ・テレコムの代わりにkoboが参入したtolinoの情報。

日本には直接関係ないだろうが、ドイツ・テレコムがtolinoの中に何をしていて、koboがこれから何を引き継ぐのか、その概略がわかる資料があった。

JPO、日本出版インフラセンターというところが2015年に行なったドイツ視察報告。そこにtolinoの情報がある。
http://www.jpo.or.jp/topics/index.html
【2015.08.03】「ドイツ出版業界実態調査報告書」のところにpdfの報告書

ドイツ・テレコムがtolinoのエコシステム内で担っていたのは、
・端末の開発・提供
・クラウドの開発・提供
・iOS、アンドロイドのアプリ開発・提供
・コンテンツ・ハブ=電子書籍の集約、管理(出版社から、一部は取次のLibri経由で書籍を入手)
だそうだ。これをkoboが引き継ぐのだろう。

そして各書店側
・ウェブ・ストア、それから端末とアプリのストアのフロントエンドの開発は各書店が行う。中小書店は取次のLibriが提供する電子書籍販売サイト・アプリサービスを利用できる。

これがtolinoのエコシステムのようだ。

tolinoで本を売るのはあくまでもtolinoに加盟する各書店であってkoboではないし、もちろんtolinoという電子書籍販売サイトがあるわけでもない。

tolino同盟("Tolino-Allianz"は頭に「いわゆる」がつけられることもあるので、正式な団体名称ではないのかも。上の資料ではtolinoアライアンスと英語にしている)を作ったのは、アマゾンのkindleに脅威を感じたドイツの大手書店とドイツ・テレコム。大手書店だけでなく、今では取次のLibriが提供するtolinoの書籍販売用サービスを使って、中小書店もtolinoで電子書籍販売が可能。

おもしろいのはアプリ利用者が少なく(5%程度)、専用端末の需要のほうが大きい、とされているところ。
それはおそらくtolinoがリアル書店の連合だから。ドイツ国内の1500店舗(ドイツ周辺国も入れると1800店舗)で端末が店頭販売されていて、実機を直接触ることができるし、直接サポートも受けられる。これはアマゾンやkoboにはない強み。当然、端末の認知度も日本とは比べ物にならないだろう。

詳しくは上記資料参照。

ひとつ補足しておくと、資料の中にもあるtolinoがアマゾンを越えたという2014年のGfKの統計は、売り上げ実数を反映したものではない。1か月にどれだけ本を買ったかというアンケート(2万5千人分)の回答に基づくもの(lesen.netの記事参照)。以後このような統計はなく、現在どうなっているのかはよくわからない。

-- 追記
もうひとつ補足。各書店への電子書籍の納入業者はTolino Mediaで、Thalia、Bertelsmann、 Weltbild、 Hugendubelの4書店が所有。こちらの記事参照。
-- 追記おしまい

--
koboがドイツ・テレコムの業務を引き継いだとして、それでどれだけ利益が得られるものなのか。ただ、自社のkoboストアはドイツではアマゾンとtolinoの2強にはさまれて、シェアを伸ばせていないのは事実のようだ。取り扱い書籍数もtolinoやアマゾンより少ないという話も聞く。koboストアで2強と戦うよりも、tolinoに入ったほうがいいということなのだろう。

たしかに今後は端末の販売は思い通りになるのかもしれない。tolino加盟書店の店舗に置くこともできる。上の資料によれば、端末を売っても書店に利益は落ちないらしく、全部koboの取り分になるのかもしれない。でも、端末販売でそんなに利益が出るものなのか。

ビジネスのことはよくわからないので、以下はユーザーの視点から、上の資料にないポイントを。

tolinoはアマゾンに対抗して「オープンなシステム」をセールスポイントのひとつにしている(tolinoのウェブページ参照)。
つまり、ユーザーを1つの書店に縛らない。独自フォーマットで独自DRMのアマゾンとは違うぞ、とでも言いたいのだろう。オープンなepubフォーマットを採用しているし、DRMはAdobe Digitaleditionsのものなので、tolinoのどの書店から買っても読めるし、tolino以外の端末でも読める(事実koboの端末でも読める。epub、Adobe DRM未対応のkindleは無理)。

もう少し詳しく言うと、端末は端末を買った書店にひも付けされている。そのストア用のフロントエンドがインストール済みの状態で販売されていて、端末のストアを変更することはできない。だが、各書店で購入した書籍のライブラリは結合することができる。だから別の書店で買った本も端末にダウンロードできる、ということらしい。クラウドが統一されているのでこういうこともできるのだろう。

また、ストアがなくなったり、ストアのアカウントを抹消したりしても、DRMがAdobeなので、Adobe Digitaleditionsで本をPCにダウンロードしてあれば、本が読めなくなることはない。

いろいろな書店から本を買えるのはいいと思うかもしれないが、日本のような電子書籍の割引はない。電子書籍もドイツでは価格が固定されているので、勝手に書店が割引販売できない(基本最低でも発売から18か月)。これも上記資料の「価格拘束法」の項目参照。書店毎にバーゲン本はあるようだが、koboのような全書籍〇〇%引きみないなものは不可能だろうし、新刊はどこの書店でも値段は同じ。

それからkoboにないサービスとしては、tolinoのクラウドがある。自分で作成したドキュメントをクラウドに保存、端末にダウンロードできる。これはkindleにあるサービスなのでアマゾンを意識したものだろう。


各ストアが自社のアプリ、端末でしか本を読めないようにして、客を囲い込もうとしている日本とは大違いのドイツの電子書籍。

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