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2016年11月

2016年11月28日 (月)

ドイツ語多読本: Guido van Genechten: Es spukt nicht unterm Bett

向こうの人はかなり小さい頃から一人で寝るようにしつけられるという話もあるから、こういう絵本はたくさんあるのだろう。
夜一人で暗い部屋でベッドの中にいると、何やら物音が聞こえる・・・。幽霊??

Guido van Genechten: Es spukt nicht unterm Bett

439語

ベッドの中で何度も寝返り、頭の中をいろんなことがよぎる、眠れない・・・。
と、ベッドの下からギシギシ音がする。おばけだ、パパ!!

パパがやってきて、おばけなんかこの世にいないんだよ、ベッドの音だよ、と言いつつも、ちゃんとベッドの下を確認するパパ。

で安心してまたベッドに入ると、また物音が・・・。こんどはカーテンの裏。そしてまたパパ登場・・・。

というふうに、物音を聞きつけてはパパを呼ぶのを繰り返しているうちに、今度は確認していない場所が気になりだす。物音もしないのにおもちゃ箱の中におばけがいる気がして・・・、パパ!!

もちろん最後は安心して眠ることになるが、それはやはりパパのおかげ。おばけなんかいないと口で言うだけでなく、いちいちベッドの下やらカーテンの裏やら、カーペットの下まで腹ばいになって覗いてみせて、実証していくパパだから安心なのだろう。

描かれているのはペンギンの部屋のみでシンプルだが、背景はやわらかい灰色で目にやさしく、ペンギンも愛嬌があって親しみやすい。あと、部屋の中のぬいぐるみやおもちゃがそれぞれの場面に合わせて表情を変えたり、場所を移動したりしているのは作者の遊び心か。そのあたりにも注目。


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2016年11月24日 (木)

ドイツ語多読本: Eric Carle: Die kleine Spinne spinnt und schweigt

クモは糸をspinnenする生き物なのでドイツ語ではSpinne。とても単純。

Eric Carle: Die kleine Spinne spinnt und schweigt

264語

農場の柵、柵の縦棒と横棒が作る四角形、そこに巣を作るクモ。そこに次々に動物がやってきて遊びに誘うが、クモは黙々と巣作りを続ける。
と、幼児向け絵本なので話はシンプルな繰り返し。

左ページにウマやらウシやらがページをめくる毎に登場して(それからハエも1匹かならずいる)、鳴き声を披露、クモに話しかける。が、クモは無言(クモは鳴かないし)。

右ページには柵の四角形の中に巣を作っていくクモ。
最初は2、3本の線(クモの糸)が描かれるだけだが、ページをめくる毎に線が増え、しだいにクモの巣ができあがっていく。単純な線だけでクモの巣のきれいな形になっていく様子を追っていくのは、大人でも楽しいはず。単純にクモの巣の形は見ていておもしろいし。

左ページのいろいろな動物はカラフルで目に楽しいが、単に筆で線を描き、色を塗り、模様を描くという一般的な絵ではないところが特徴的。紙に色を塗って模様を描いて、それを動物の形に切り取って、白い台紙に貼り付けたように見える。
それも、頭や首、背中から足、また腹の部分など、パーツに分けて切り貼りしている。だから、動物をどういうパーツに切り分けで、どういう色や模様にし、それをどう貼り合わせるかという、工作的な楽しさが感じられる。ちょっと工作心をくすぐるところもエリック・カールの絵本の持ち味。


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2016年11月20日 (日)

ドイツ語多読本: Roald Dahl: Die Giraffe, der Peli und ich

Roald Dahlのドイツ語訳、短めのもの。

Roald Dahl: Die Giraffe, derPeli und ich

7200語

翻訳だと「窓ふき会社」なんとかいうタイトルのはず。

売り家になっているお菓子屋の中をのぞいてみては、店が復活してお菓子がたくさん並んだ様子を思い浮かべる少年Billyだが、通りかかるたびに、ペンキで書かれた「売り出し中」の文句が変わったり、窓から浴槽やらベッドやら落ちてきたりと様子がおかしい。そして、ついに「はしごいらずの窓ふき屋」の看板が出たかと思うと、入り口のドアが巨人でも使うのかという大きさになっている。

すると、3階の窓からキリンの首、それからペリカンが出現、さらに2階の窓にはサルが現れる。話を聞いてみると、3匹で窓ふきをして金を稼ぎたいらしい。お金がなくてお腹がぺこぺこなのだ。そこにハンプシャー公爵のロールスロイスがやってきて、運転手から仕事の依頼を受ける。そしてお屋敷に行ってみると・・・。そういうストーリー。

キリンの首がはしご代わり、木登りが得意なサルがそこを登って高い窓に近づく、ペリカンが何をするのかというと、大きなくちばしで窓を洗う水を運ぶという役割分担。言われてみればなるほど、簡単な話だと思うが、そういうふうに動物を想像して組み合わせる発想ができる人とできない人の差は大きい。

お屋敷に着くと、もちろん窓ふきだけに終わらない一事件があって・・・。もちろん無事解決、3匹の動物だけでなくBillyも望みがかなう。ハッピーエンドだろうなとわかっていても、みんなしあわせになると、なぜかこちらもうれしくなる結末。

最初の方に出てくるペリカンの口の仕組みもそうだが、キリンの伸びる首も、何かメカっぽい感じがするんだが、気のせいか?


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2016年11月12日 (土)

電子書籍リーダーのブルーライトカットは流れなのか? Tolino Vision 4 HD

ドイツの電子書籍リーダー、Tolinoの新モデル発表。もちろん日本で買えるわけでもないので、参考までに。

Tolinoの最上位モデルが新しくなった。Tolino Vision 4 HD。

allesebook.de: Tolino Vision 4 HD im ausführlichen Test
lesen.net: Tolino Vision 4 HD im Test [+Video]

6インチでフラット、300ppiのE Ink Cartaは前モデルと変わらないし、筐体も同じ。防水も前モデルと同じHZOのナノコーティング。背面タップでページめくりという独自のシステムもそのまま。

変わったのは、ストレージが8Gになったこと、それからSmartLightと命名された色温度の調節機能の追加。Kobo aura Oneと違ってセンサーはない。色温度の設定を自動にすると、朝は青く、夜になると黄色っぽい色合いになっていくらしい。もちろん手動でも変更可能。色はaura Oneほど赤っぽくならず、見やすい黄色だそうだ。

値段は180ユーロあたり?という推測。Kindle Voyageあたりの価格帯か。最上位モデルなのでそんなものか。上のリンクの記事では、筐体に変化がなく、作りが安っぽいのでその点の評価だけは低い。


ストレージ8Gと色温度調節とくれば、Kobo aura Oneを意識したモデル。
というか、製造は台湾のNetronixで、koboを作っているところと同じ。つまり技術的には同じものを使っていると思われる。
でも、リフレッシュ頻度では圧倒的にKoboの負け。6ページ毎リフレッシュ必須とか何年前のスペックだよ、Kobo。Tolinoにはリフレッシュさせないという選択肢まであるというのに。koboはゴーストその他表示の劣化がひどいから、マンガでは1ページ毎にリフレッシュさせてるのかもしれないし。


上の2つの記事では、色温度の調節、ブルーライトカットはこれから他社も採用するだろうと言っているが、どうなんだろう。Kindleも真似する? それとも製造が同じNetronixなのでたまたま? BoyueBookeenIcarusなどの新モデルを見ても、ブルーライトカット機能を追加したのはKoboとTolinoだけ。
フラット・デザインはどこもKoboの後追いをしたけど、これはどうなんだろうな。電子書籍リーダーはたぶん新機軸を打ち出しにくいだろうから、今後他社も採用していくのかも・・・?

Koboは6インチ捨ててるのがなんとも・・・。
aura Edition2なんてgloHDよりスペックが劣るモデル、もし来年日本で発売されても誰が買うんだか。そもそもgloHD自体がKindle Paperwhiteより劣っているし、さらにマンガ・モデルの登場で、gloHDを選ぶ人はさらに減ったはず。そしてそのgloHDすらたぶん販売終了になるだろう。

7.8インチのaura Oneにしたって、アマゾンがかたくなに大きなディスプレイのモデルを作らないから売れているだけだろう(海外では在庫切れで買えないと少し話題になっている模様)。
でも、もしアマゾンが大画面のモデルを作ったら、たぶんaura Oneも一発でおしまい。そのあたり楽天Koboには危機感を持って欲しいところだが、どうなんだろうなあ。ただ、アマゾンも一般向けとは言いがたいOasisなんてモデルを出して、あとは売れ線のPaperwhiteにちまちま手を加えて、新モデルもどきを再生産してるだけだから・・・。


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2016年11月 7日 (月)

ドイツ語多読本: Michael Römling: Schattenspieler

1945年春のベルリン、まだ戦火も残るなか、やがて連合国がベルリンを分割統治していく、そんな歴史的背景を細かく描きながらも、ナチスが略奪した美術品を探すというエンターテイメント性も忘れない中高生向けの小説。

Michael Römling: Schattenspieler

70000語

1945年春のベルリン、無残に破壊された街を眺めながら、ゲッペルスのヒトラーの誕生日を祝うラジオ演説を聞く少年Leoと、もう一人は大人のWilhelm。二人は空疎な演説を冷笑する・・・。
そんな冒頭の場面だが、それもそもはず、Leoはユダヤ人で、戦争の間ずっと身を隠して生きてきたからで、WilhelmはそのLeoを助けてきた人間(この本の「あとがき」によると、ベルリンだけでそんなユダヤ人は1400人ほどいたそうだ)。

そして、隠れ家にナチスが迫ろうかという時、ベルリンへの空爆も重なり、混乱の中Wilhelmの姿が見えなくなる・・・。
Wilhelmの生死もわからないまま、Leoはとにかく逃亡をはかる。その途中で目撃してしまうのが、ナチスの将校Sommerbierが二人の男を射殺する場面・・・。
その後Leoはソ連兵に拘束されてしまう。ドイツのスパイじゃないかと尋問を受ける・・・。

と、ハラハラする展開だが、小説は何度か視点を変えながら進んでいく。
その視点となる人物の一人が、Sommerbier。28個の箱を積んだトラックを走らせ、検問をいくつも抜け、追跡者も追い落とし、目的地で荷物を下ろしたら、口封じのために人を殺す。そして、イギリス軍のパイロットになりすまし・・・。
それがこの小説の悪役Sommerbier自身の視点から生々しく描かれるので、サスペンスを盛り上げる。

そして、もう一人の少年Friedrich。
こちらはナチスの高官の息子。父親はいわゆるローゼンベルク特捜隊に配属されていて、占領地で美術品の略奪にかかわっているらしい。こっそり家を抜けだした後、戻ってみると父親の訃報を聞かされる。

そして、Leoを捕まえたソ連軍の部隊がFriedrichの家を拠点にすることから、二人の少年はまったく違う境遇ながらも親しくなる。さらに、姿を消していたWilhelmとも再会でき・・・。
ローゼンベルク特捜隊が略奪した絵画コレクションをSommerbierがベルリンに隠したのではないかと推理、証拠を集めようとする・・・。

さらに、Leoを捕まえたソ連軍部隊の責任者も実はSommerbierを追っているらしく、イギリス軍も含めた、ナチスの財宝争奪戦の様相も・・・? そして、このSommerbier、意外な人物となってまた姿を表わすのだが・・・。

と、ストーリーは飽きさせない展開。が、それだけでなく、細部もしっかり描き込まれていて、興味深いエピソードもたくさんある。たとえば、道を歩いていると突然ソ連兵に徴用されて、爆弾で空いた地面の穴を埋める作業にをさせられる、なんてことは実際にあったことかもしれない。また、Leoが尋問される場面でLeo Goldsteinと名乗ると、これまでそう名乗る人間(ユダヤ人によくある名前)はドイツにはいなかったのに、急に誰もがLeo Goldsteinだと名乗りたがる、と皮肉が飛び出してくる場面も印象深い。

こういう細部もしっかり描き込みつつ、中高生向けらしくストーリーはしっかり楽しめるバランスのいい小説。

巻末にナチス関連の用語集があるので、先に目を通しておくとよい。各章は短いので、適度に息継ぎしながら読める感じ。


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2016年11月 3日 (木)

ドイツ語多読本: Helme Heine: Das schönste Ei der Welt

世界で一番すてきなタマゴを産むのは誰? と争う3匹のニワトリの話。
穏やかでやさしいとも言えるが、妙にふわっとした話。

Helme Heine: Das schönste Ei der Welt

330語

王様とたくさんのニワトリの記念写真のような表紙だが、主役はこの中の3匹だけ。

昔あるところに3匹のニワトリがいました。Pünktchen、LatteとFederの3匹はケンカをしていたのです。誰が一番きれいなのかと・・・。

と、文章はオーソドックスな昔話テイストの出だしだが、絵のほうはちょっと変わった構図。
前景に大きな1本の木、そこからキツネが、遠くに小さく見える3匹のニワトリをうかがっている。主役が前面に出るのではなく、遠くに小さく見えるだけ。
おまけに、このキツネ、ストーリーに絡んでくるのかと思いきや、もう出てこないという、なにやら文と絵のつながりもゆるい。そのゆるさが逆にこの絵本の味。

さらにこのHelme Heineという作者は背景を描き込まないというか、ほとんど描かないので、水彩とあいまって、とてもあっさりシンプルな絵柄。最低限のものしか描かれないので(背景は白のまま)、その分描かれたものに集中しやすい。

ストーリーも単純。
誰が一番きれいなのか決着がつかない3匹は、王様に判定してもらうことにする。そこで王様は、一番きれいなタマゴを産んだものを勝者、プリンセスにしてやろう、と言う。さっそくタマゴを産みにかかる3匹・・・。
最初にタマゴを産んだのはPünktchen。これが形も色つやも完璧としか言いようがないタマゴ。これ以上のものはないだろうという声をよそに、次にLatteが産んだタマゴは・・・・? そして最後のFederのタマゴは? 

そんなストーリーだが、結末もゆるく穏やか。
タマゴの優劣はつかないから、3匹ともプリンセスだ・・・。白黒はっきりつけるのではなく、あくまでも穏やかに丸くおさめる。それがこの絵本の味。


あまりにふんわり穏やかな絵本なので、ちょっと突っ込みを入れたくなる・・・。
たとえば、誰が一番きれいか決めてくれという3匹に、王様は「中身(die innere Wert)が大切なのだ」と言う。外面ではなく内面の美しさが大切なのだという意味かと思いきや、タマゴで争えと・・・? 中身ってタマゴかよ、そりゃタマゴも中から出てくるだろうけど。

それから、同じ場面。王様の御前でかしこまって平身するニワトリ3匹だが、王様のほうは食事中。それはそれでいいけれども、食卓にあるのはローストチキン?? 平然とニワトリを食べながらニワトリに会う王様、そんな王にうやうやしく謁見するニワトリ・・・。そう考えると、食べる側も食べられる側もとても鷹揚、ある意味ユートピア的なゆるさ・・・?

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