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2016年5月 4日 (水)

ドイツ語多読本: Torben Kuhlmann: Lindbergh

以前、同じ著者による、モグラが地下世界に文明を築いていく絵本(Maulwurfstadt)を紹介したが、今回はネズミが空を飛ぶ。

こちらがデビュー作のようだが、20世紀初頭のノスタルジーあふれる雰囲気、メカニカルなものが持つ独特の美しさへの感性もそのままに、ネズミの冒険が描かれる。

Torben Kuhlmann: Lindbergh: Die Abenteuerliche Geschichte einer fliegenden Maus

1633語

絵本の中で描かれている時代にあわせて、この本自体も当時書かれた本であるかのような表紙。端がかすれて色が落ち、古本のように見せかけている。本の中も古本のページのように、くすんだ色合いで染みがついたりしている。そういう時代感の演出も贅沢な絵本。90ページ以上あって絵もたっぷり。

20世紀初めのハンブルク。人間の図書館へ行っては本を読むネズミ。ある時、図書館から戻ると誰もいない。どうやら新しく発明されたネズミ取り機が大成功で(新聞に報じられるほど)、恐れをなした他のネズミたちはアメリカへ移住したらしい。自分も後を追おうとするが、港ではネコが見張って、船に乗り込めない。下水道に逃げこむと、コウモリに出くわす。そうか、翼だ、というわけで、飛んでアメリカへ行こうと思うネズミ・・・。

ここからファンタジーに走らないのが、この絵本の特徴。
コウモリの絵を描き、翼をデザインして(マッチの燃えさしが鉛筆がわり)、材料を集めて組み立て、飛行実験は風のないハンブルク駅構内、高い位置に備えつけられた時計から飛び降りる・・・。と、機械の製作過程をリアルになぞっている。

この最初の試みは失敗。だが、そこは駅。当然、蒸気機関車がある。そうか、蒸気機関か・・・。
というわけで、今度は蒸気でプロペラを回す機構の製作が始まる。図面を描き、組み立てて、実験・・・(ライターで金属球のようなものを熱して蒸気を発生させ、プロペラを回す。そんなものが宙に浮いていて、ネズミがをそれをヒモでつかまえている、なんて絵にはちょっとびっくり。そこまで細かく考えるかと思う)

そして、また時計やタイプライターその他いろいろなものから部品を調達して、改良型の翼が完成。今度は翼は4枚、蒸気エンジンといっしょに背中に背負う形。そして、ハンブルクの港のクレーンから飛び立つ・・・。
今回も失敗。重すぎて飛べない。おまけに、飛んでいるところを写真に取られ、新聞に。その新聞をなぜかフクロウが何羽も密集して読んでいる絵はちょっと不気味。ともあれ、それでなぜかフクロウから狙われることになってしまう。

でもネズミはあきらめない。重さ対策で、車輪付きの機体に変更(これでようやく見慣れた飛行機の形になった)。フクロウが飛び回らない雨の日を選んで、完成した機体を引きずって、教会の塔を目指す・・・。

これが成功して、大西洋を横断して、ニューヨークに到着する、という話。
で、飛行機ネズミのポスターを見ているリンドバーグ少年、というラスト。

ストーリーはごく素直なものだが、絵はメカ的な部分やネズミのいる狭い空間の精密さも目を引くが、ハンブルクの駅や港を俯瞰から眺めた情景も印象的だし、ネコやフクロウのアップの絵にも力強さがあって、絵はどれもすばらしい。

この絵本の本質とは関係ないが、飛行機に蒸気機関は無理な気が。ネズミに材料が集められるのはそこまで、という妥協かな。

出版社のTrailer

アプリ版もある。
ドイツ語を含め、5か国語に対応。もちろん朗読つきで、文章を表示させながら見ることもできるようだ(買ってない)。
値段は紙の本よりずっと安いので(600円しない)、タブレット、PCでいいならこっちがいいかも。
下のリンクはアマゾンのアプリだが、もちろんGoogel PlayやAppleにもある。
Lindbergh. The Tale of a Flying Mouse

出版社の解説ページはこちら。
App - Lindbergh. Die abenteuerliche Geschichte einer fliegenden Maus

翻訳はこれ。
リンドバーグ: 空飛ぶネズミの大冒険

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