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2016年5月

2016年5月30日 (月)

Kobo: ダメ文字対策

CFWの追加機能はいらない、ダメ文字問題だけなんとかしたい人向け。
CFWのパッチをあてたdosfsckに入れ替える。

CFWをダウンロードして、必要なファイル(dosfsck)を取り出して、それをKoboRoot.tgzにすればいいだけ。Windowsでもできそうなものだが、どうなんだろう。

1. CFWを解凍。.koboフォルダ内のKoboRoot.tgzをまた解凍して、
2. binフォルダだけ取り出す。中にsqlite3とdosfsckがある。sqlite3は削除。
3. dosfsckが入ったbinフォルダをアーカイバーでKoboRoot.tgzにする。
KoboRoot.tgzの中身は、binフォルダとその中のdosfsckだけ。

あとはFWの手動アップデートとやり方は同じ。KoboRoot.tgzをPCにつないだkoboの.koboフォルダに入れて再起動。

CFW: Kobo_CFW_Ver0.96β2.zip(パスワード:koboaya)

できない場合はこれで: KoboCFW_dosfsck.zip

FWをアップデートするとdosfsckは元に戻されるので、そのたびに再インストールが必要。

dosfstoolsを新しくすればダメ文字もなくなるんだったら、さっさと修正して欲しいものだが、これまでずっと放置だったから、期待はできないんだろうな。


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2016年5月26日 (木)

Kobo: SD換装、CFWなしでswapを有効にする

gloHDのSDを換装。ついでなのでスワップ・パーティションも作成。
そんなに大量の本を端末に入れることはないから、たぶん必要ない。が、スワップ・パーティション作成自体はたいした手間でもないので。

大量に本を端末にため込みたい人は、換装のついでにスワップ・パーティションも作っておいたほうがいいかもしれない。データベースが大きくなると処理が大変になるらしいので。

CFWをインストールしていれば、スワップ・パーティションが利用できるが、CFWをインストールしていない場合は、作成したスワップ・パーティションをシステムが利用するように、少し手を加える必要がある。

CFWはrcSなどの起動時に読み込まれるファイルでスワップをオンにしているが、rcSはFWのアップデートのたびに上書きされてオリジナルに戻されてしまう。そのたびにrcSを書き換えるか、もしくはCFWを再インストールしなければならない。そういう面倒があるので、できればrcSはいじりたくない。

最近はrcSなどの起動ファイルはいじらず、udevを使う流れもあるようなので、そっちでやってみた。
CFWと違って、FWをアップデートしても面倒はないはず。


◎殻割り
100円ショップのプラスチックのもんじゃ用へらを隙間に差し込んだら、あっさり裏蓋は開いた。

◎SD換装
Windowsの場合はちょっと探せば、画像入りで説明しているサイトも見つかるだろう。
うちはLinuxなので、
1. microSDカードを基板から抜く。
2. ddでgloHD内蔵のmicroSDのディスク・イメージをPCにコピー。
3. それをddで新microSDにコピー。
4. それから、パーティショニング・ツール(gpartedを使った)で、新microSDのFAT32領域を広げて、さらにスワップ・パーティションを新規作成。
5. できたmicroSDカードをgloHDに戻して、蓋をしておしまい。
これでハードの準備は終了。

◎swapをオンにする
これをダウンロード・インストール: Kobo_addswap.zip
(すでにCFWを使っている場合はもちろんいらない。むしろインストールしないこと)

Kobo_addswap.zipを解凍、中のKoboRoot.tgzをPCにつないだkoboの、.koboフォルダにコピー。再起動でインストールは終了。

KoboRoot.tgzの中身はファイルが2つ。udevのルールとswapをオンにするスクリプト。スクリプト自体はCFWと同じ。ついでにtelnetも有効にできるようにしておいた。

使い方:
◯swap
起動時に自動的にオンになる。

オフにしたければ、PCにつないだkoboドライブのトップに、SWAPOFF(大文字、拡張子なし)というファイルを置いて、koboを再起動。

◯telnet
インストールしただけでは無効のまま。
他の方法ですでにtelnetを有効にしている場合は無効のままにしておくこと。

有効するには、PCにつないだkoboドライブのトップに、ENABLE_TELNET(大文字、拡張子なし)というファイルを置いて、koboを再起動する。

無効にするには、ENABLE_TELNETを削除してkoboを再起動。常時telnetを有効にしておくことに抵抗がある場合は、使ったらこれでオフに。


スワップが有効になっているかどうかは、telnetやsshでログインして
free
とか
cat /proc/swaps
で確認できる。

本のページをパラパラめくった程度では元々のメモリ(gloHDは500MB程度割り当てられている)が使われるだけで、スワップは利用されないようだったが、試しに本を10冊ほど追加してみたら、その処理ではスワップが使われていた。その程度の処理でも使われるなら、スワップはあったほうがいいのか? 


CFWであと残っている重要事項はダメ文字対策?
マウント・オプションは"utf8"があるから変更する必要はないんだったか? あとはdosfsckをCFWのものに差し替える程度でいいんだっけ? 
確認作業をする気が起きないので放置しているが、試したい人がいるならインストール用のファイルなんかはすぐに作れるけど・・・。


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2016年5月23日 (月)

ドイツ語多読本: Géraldine Elschner / Antoine Guilloppé: Wie ein Wolf

Webで本の中が全部見られるmineditionからまた一冊。

ここから全ページ見られる。
http://www.minedition.com/de/book_detail.php?id=313

Géraldine Elschner / Antoine Guilloppé: Wie ein Wolf

400語

闇に屹立する都会のビルと、夜に吠える犬の黒と白のコントラストが印象的な表紙。

最初のページは、金網越しに、耳を立て、牙を剥き、こちらをにらむ恐ろしげな犬の姿。
人々は「まるでオオカミみたい」と言った・・・。

次は、都会のどこかの片隅なのか、コンクリートに深く打ち込まれた杭に鎖でつながれ、フェンスで入口を塞がれている、犬の姿。
誰も近づかない・・・。

と、ここまでだとそこがどこで、この犬が何なのかよくわからないだけに、犬の存在そのものが不気味だが、読み進んでいくと、判明する。

毎日、人間たちが通りかかる、みんなかわいくておとなしいイヌを探しているのだ・・・と。
つまりは、イヌの収容施設。訪れる人間たちはそこからイヌを引き取っていく、そういう場所。で、こんなオオカミみたいなイヌには誰も用がないのだ、と・・・。

というわけで、表紙からなんとなく都会をさまよう野犬の話だろうか、と勝手に推測していたが、そうではなく、すでに人間に飼われたことのある、人の手のぬくもりを欲するイヌの話だった。

ある時、杖を持った大きな男がやってきて、じっと目を見つめて、首筋をなでる・・・。なでられている時のイヌの表情は、最初のこわい印象があるだけに、こちらもほっとさせる。

最後は、牧羊犬として野を駆け巡る日々・・・。

ストーリーよりも絵で読ませる力を持った絵本。

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2016年5月20日 (金)

Kobo: いつものパッチの簡易編集Web版

Koboの便利なパッチ、以前GUIで編集できるツールを紹介したが、それより簡単。Webでやってしまうのでインストールの必要もないし。このサイトができたので、GUIツールの作者は開発をやめたようだ。

いつものmobilereadの開発者コーナーから。
Kobo Hacks Database

http://pip.cat/khd/ にアクセス。

必要なものにチェックを入れて、ダウンロードするだけ。
オリジナルのパッチだけでなく、ユーザーによる追加されたものも含まれている。

ただし、パッチはオリジナルに含まれているlibnickel.so.1.0.0.patch、librmsdk.so.1.0.0.patch、libadobe.so.patchのみで、辞書のフレームサイズ変更などに必要なnickel.patchは含まれない。それは自分でダウンロードしてくるしかないようだ。また、かつてのゲームを復活させるパッチも追加作業が必要。
でも、それらのパッチのスレッドへのリンクがはられているので、簡単に見つかるだろう。

ダウンロードは"Settings"から"Tools and .patch files"を選んだほうが楽かも。
あとはファームウェア(kobo-update-xxxx.zip)を3.19.xxxx_sourceフォルダに放り込むだけで準備完了だから。
-- 追記 --
"Settings"のダウンロード・オプションに".patch files, Tools, Firmware"が追加された。
というわけで、ファームウェアを別途ダウンロードする必要もなくなった。
上のスレッドの#6のポスト参照。
-- 追記おしまい --

ただし、パッチをあてるか、yesかnoの選択ができるだけなので、フルスクリーン・バグの修正や行間のカスタマイズその他、エディタで編集する必要がある箇所はこれまで通り手動でやるしかない。そう考えると、エディタでの編集に慣れている人は、はじめからエディタでやっても手間は変わらないかも。まあでも見やすいから。

和書の場合、フォントの太さを変更可能にするには、パッチ(Freedom to advanced fonts control)をあてる他に、ランチャーなどでデータベースをいじる必要があるので注意。さっきのこの記事を参考に。

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2016年5月16日 (月)

Kobo: データベース用ランチャー更新(H2Oの不具合修正その他)

行間・余白の有効化やコレクション作成などデータベース変更ランチャーのアップデート。

Kobolauncher_v03

更新内容:
・H2Oでコレクション作成後にランチャーの表示が逆さまになる不具合を修正(acrossさん、問題の指摘&テストありがとう)
・Pocketの記事がコレクションに入る場合があったので、入らないように修正(CFW Plus)
・ストア購入本が最下層/最上層フォルダコレクションに混じってしまう場合があったので、とりあえずの修正(CFW Plus)
KoboLauncher本体をBuild 2016.03の最新版にアップデート

これでおそらくH2Oも大丈夫か。
CFW Plusで上記の不具合が出ている人はアップデート推奨。

左側タップでページめくりではなく、フロントライトが変わってしまって、わずらわしいなんて人は「ページ送り > ltr 右」に変更するなど、お好きにどうぞ。
また、余白、フォントの太さを調節可能にするには、さらにFWにパッチをあてる必要があるので、この記事など参照。

ダウンロード: KoboLauncher_for_db_scripts_v0.4.zip

アップデートの場合はKoboRoot.tgzを.koboフォルダにコピー(koboCFW.confは初期設定に戻るので、変更している人はバックアップしてから)。
はじめてインストールする場合は、readme.txtのインストール方法をチェック。

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2016年5月13日 (金)

Kindleでテキスト読み上げ機能(Text to Speech)を・・・ただし英語のみ

先日、amazon.comが視覚障害者用としてオーディオ・アダプターとバンドルで発売されたPW(Kindle Paperwhite Blind and Visually Impaired Readers Bundle)。その後、USBアダプターのみの別売りもされるようになったらしい。

New Kindle Audio Adapter Adds Text-to-Speech to Kindles
Kindle Audio Adapter Now Available to Purchase Separately
などの記事参照。

本の読み上げはもちろん、ホーム画面やメニュー操作などにも音声ガイドがつく。YouTubeに動画が上がっているので、どんなものかは確認できる。
ボイス・データはFireなどのタブレットですでに使われているものらしいが、おそらく英語しかない。

たぶん今後も他の言語には対応しないような気もする。
というのも、Paperwhite以前の読み上げ機能がまだついていたKindle TouchやKindle Keyboardの時も対応していたのは英語だけだったし、ドイツ語などには対応していなかったので。
日本語はもっと無理そうな気がする。日本語のTTSの現状もよく知らないが・・・。

それでもまあ、英語の本の読み上げ機能が欲しい人にはいい話だろう。
バッテリーを食うらしく持つのは6時間程度らしい。

で、今のところamazon.comではPaperwhite限定となっているが(そのうち他のモデルでも使えるようになるらしい)、もうすでにOasisでは使えるという報告もある。
http://the-digital-reader.com/2016/05/12/voiceview-for-kindle-works-on-the-kindle-oasis-and-voyage-and-other-things-amazon-didnt-tell-you/
届いたアダプターをつないだだけでOasisでは使えたそうだ(すでにボイスデータが入っているので)。
ただし、カバーをつけた状態でないと使えないらしい。


で、アマゾンの専用アダプターでなくても実は読み上げ機能が実現できるし、PWやOasisでなくても可能、という話(無印はだめらしい)。FWは5.7.4のままでOK。
元記事は
VoiceView: Neue Vorlesefunktion auf Kindle Paperwhite und Oasis
そして、
Anleitung: DIY Kindle Audio Adapter, VoiceView Video-Demo
こちらの動画ではあきらかにVoyage(動画は英語)。

実際に試してみたわけではないが・・・
◎必要なもの
・市販のUSB OTGケーブル
・市販のUSBオーディオ・アダプター
・ボイスデータ
OasisやFireから持ってくる。もしくは、アマゾンからボイスデータ(update_voice_kindle_all_new_paperwhite.bin)をダウンロードして、データを取り出す。

手順
1. ボイスデータ(voiceというフォルダ)をPCにつないだKindleのドライブの一番上にコピー。
2. 英語環境でないと機能が有効にならないらしいので、言語設定を英語に。
 「設定」 > 「端末オプション」 > 「言語と辞書」 > 「言語」 > 「English」選択
3. あとは、OTGケーブルとUSBオーディオ・アダプターをKindleにつなぐ。

たぶんこんな感じ。実際にやってみたわけではないので保証はしない。

参考:
update_voice_kindle_all_new_paperwhite.binからボイスデータを取り出す方法。
WindowsではCygwinなどの環境が必要なようだ。
Snapshots of NiLuJe's hacks からKindleToolをダウンロード・解凍。あとはコマンドで、
$ kindletool extract update_voice_kindle_all_new_paperwhite.bin voicedata
$ cd voicedata
$ kindletool convert -w data.stgz
$ tar xzvf data_unwrapped.tgz
これで、voiceというフォルダにデータが入っている。
(update_voice_kindle_all_new_paperwhite.binをそのまま、通常の手動アップデートのやり方でインストールできるのかもしれないが・・・)

-- 追記 --
update_voice_kindle_all_new_paperwhite.binはFW手動アップデートと同じやり方でインストールできるようだ。PW3(2015)だけでなく、Voyage、それからPW2(2013)や無印にも。Mobilereadのこのポスト参照。
ただし、TTS機能が使えるのはPW3(2015)、Oasis、Voyageだけらしい。
ボイスデータはRAMが512MBないと使えず、無印とPW2(2013)はRAMが256MBしかないからだ、ということらしい。Mobilereadのこのポスト参照。

Voyageは持っているが、FW上げないと使えないみたいだし、5.6.5以上に上げてしまうとバッテリー残量の数値表示ができなくなるからなあ。ドイツ語の読み上げでもしてくれるというなら話は別だが、英語だけだし・・・。
-- 追記おしまい --


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2016年5月12日 (木)

ドイツ語多読本: Jon Klassen: Das ist nicht mein Hut

"Wo ist mein Hut"は2013年のドイツの児童文学賞を受賞しているが(ドイツ語多読本: Jon Klassen: Wo ist mein Hut」)、これもやはりブラックなユーモアなのか、帽子を盗んだ魚の話。

残念ながら今のところアマゾンからは買えないようだが
Jon Klassen: Das ist nicht mein Hut

199語
紀伊国屋などでは注文できるようだ)

真っ黒な背景に浮かび上がる小さな魚。その独白と絵との対比のおもしろさ。
文章は小さな帽子をかぶった小さな魚の心の声。で、絵が小さな魚の思惑をいちいち裏切っていく・・・。

たとえば、大きな魚が眠っている時に帽子を盗んだから、まだ当分寝ているはずだ、という心の声に、大きな魚がぱっちりと目を開けている絵。

また、起きたとしても帽子がないのに気づいてないはずだ、という予想に対して、大きな魚があきらかに帽子がなくなっていることに気づいている絵、という具合。

こんなふうに、良心のやましさのせいか、悪事が露見しないかという不安のせいか、事態を都合よく考えようとする小さな魚の思考と、それを次々に裏切っていく現実を描くイラスト。この対比が巧みに描き出されていて、最後まで緊張感を持ってページをめくることができる。

そして、最後はやはりブラックな結末?

これはオリジナル版、英語の朗読。絵本の中身がわかる。

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2016年5月 8日 (日)

ドイツ語多読本: Tove Jansson: Mumin und das Lieblingsding

ムーミンの絵本。
絵はヤンソンのものを切り貼りして、色をつけた感じ? 話は新しく作ったものか。2冊読んでみたが、600語と1000語程度だったので多読にはいいかも。オリジナルは児童書とはいえ、数万語の本格的な小説だから。

Tove Jansson: Mumin und das Lieblingsdings

1141語

冬が終わって春が来るとスナフキン(ドイツ語:Schnupferich)がムーミン谷に戻ってくるはず。橋の上で来る日も来る日も待ち続けるムーミン。ところが、スナフキンがやってくる気配はない。いい加減うんざりして、トゥーティッキ(おしゃまさん:Too-ticki)のところへ行ってみると、春の大掃除の最中。しょんぼりしているムーミンを見て、望遠鏡を貸してやるトゥーティッキ。その帰り道に出会ったトフスランとビフスラン(Tofsla、Vifsla)は望遠鏡に興味津々。そして、この望遠鏡がなくなって・・・という話。

もちろん望遠鏡を持っていったのはトフスランとビフスランで、ムーミンもこの二人を怪しいと思っているのだが、印象的なのは、あからさまな態度を取るミイ(Klein-Mü)を除いて、誰もそれを口にしようとはしないこと。
ムーミンママは二人を叱ったり、善悪を説いて反省を促したり、という態度とは無縁で、「盗んだ人はちょっと借りようと思っただけだろうから、返せば大丈夫だよ」と解決の方向性をそれとなく二人に教える。また、望遠鏡を見つけたと言って返しに来た二人を見て、ミイは「そらみたことか」という態度を取るが、ムーミンは見つけてくれたんだから、逆にご褒美が必要だ、と言う・・・。

善悪、白黒をはっきりさせるよりも、さりげない気遣いが主導権を握っていると言ったらいいのか、やさしい雰囲気の物語。トフスランとビフスランの二人にしてからが、「望遠鏡が盗まれた」という言葉を聞くまで自分たちが何をしたのか自覚がなかったようでもあり、確信犯ではないのだろうけれど。

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2016年5月 4日 (水)

ドイツ語多読本: Torben Kuhlmann: Lindbergh

以前、同じ著者による、モグラが地下世界に文明を築いていく絵本(Maulwurfstadt)を紹介したが、今回はネズミが空を飛ぶ。

こちらがデビュー作のようだが、20世紀初頭のノスタルジーあふれる雰囲気、メカニカルなものが持つ独特の美しさへの感性もそのままに、ネズミの冒険が描かれる。

Torben Kuhlmann: Lindbergh: Die Abenteuerliche Geschichte einer fliegenden Maus

1633語

絵本の中で描かれている時代にあわせて、この本自体も当時書かれた本であるかのような表紙。端がかすれて色が落ち、古本のように見せかけている。本の中も古本のページのように、くすんだ色合いで染みがついたりしている。そういう時代感の演出も贅沢な絵本。90ページ以上あって絵もたっぷり。

20世紀初めのハンブルク。人間の図書館へ行っては本を読むネズミ。ある時、図書館から戻ると誰もいない。どうやら新しく発明されたネズミ取り機が大成功で(新聞に報じられるほど)、恐れをなした他のネズミたちはアメリカへ移住したらしい。自分も後を追おうとするが、港ではネコが見張って、船に乗り込めない。下水道に逃げこむと、コウモリに出くわす。そうか、翼だ、というわけで、飛んでアメリカへ行こうと思うネズミ・・・。

ここからファンタジーに走らないのが、この絵本の特徴。
コウモリの絵を描き、翼をデザインして(マッチの燃えさしが鉛筆がわり)、材料を集めて組み立て、飛行実験は風のないハンブルク駅構内、高い位置に備えつけられた時計から飛び降りる・・・。と、機械の製作過程をリアルになぞっている。

この最初の試みは失敗。だが、そこは駅。当然、蒸気機関車がある。そうか、蒸気機関か・・・。
というわけで、今度は蒸気でプロペラを回す機構の製作が始まる。図面を描き、組み立てて、実験・・・(ライターで金属球のようなものを熱して蒸気を発生させ、プロペラを回す。そんなものが宙に浮いていて、ネズミがをそれをヒモでつかまえている、なんて絵にはちょっとびっくり。そこまで細かく考えるかと思う)

そして、また時計やタイプライターその他いろいろなものから部品を調達して、改良型の翼が完成。今度は翼は4枚、蒸気エンジンといっしょに背中に背負う形。そして、ハンブルクの港のクレーンから飛び立つ・・・。
今回も失敗。重すぎて飛べない。おまけに、飛んでいるところを写真に取られ、新聞に。その新聞をなぜかフクロウが何羽も密集して読んでいる絵はちょっと不気味。ともあれ、それでなぜかフクロウから狙われることになってしまう。

でもネズミはあきらめない。重さ対策で、車輪付きの機体に変更(これでようやく見慣れた飛行機の形になった)。フクロウが飛び回らない雨の日を選んで、完成した機体を引きずって、教会の塔を目指す・・・。

これが成功して、大西洋を横断して、ニューヨークに到着する、という話。
で、飛行機ネズミのポスターを見ているリンドバーグ少年、というラスト。

ストーリーはごく素直なものだが、絵はメカ的な部分やネズミのいる狭い空間の精密さも目を引くが、ハンブルクの駅や港を俯瞰から眺めた情景も印象的だし、ネコやフクロウのアップの絵にも力強さがあって、絵はどれもすばらしい。

この絵本の本質とは関係ないが、飛行機に蒸気機関は無理な気が。ネズミに材料が集められるのはそこまで、という妥協かな。

出版社のTrailer

アプリ版もある。
ドイツ語を含め、5か国語に対応。もちろん朗読つきで、文章を表示させながら見ることもできるようだ(買ってない)。
値段は紙の本よりずっと安いので(600円しない)、タブレット、PCでいいならこっちがいいかも。
下のリンクはアマゾンのアプリだが、もちろんGoogel PlayやAppleにもある。
Lindbergh. The Tale of a Flying Mouse

出版社の解説ページはこちら。
App - Lindbergh. Die abenteuerliche Geschichte einer fliegenden Maus

翻訳はこれ。
リンドバーグ: 空飛ぶネズミの大冒険

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2016年5月 1日 (日)

Kindle Oasis:allesebook.deのテストとレビュー、その他

allesebook.deのテストが出たので紹介。
プロセッサがPW2(2013)から変わらずi.MX6のまま、ディスプレイもE Ink Cartaの300ppiで、基本性能に大きな変化はないと思うけれども・・・。

◎allesebook.de: Kindle Oasis im ausführlichen Test

アマゾンでわかるスペックなどは省略。適当にかいつまんで。

◯デザイン
・第一印象は小さい。
 横幅は増えているが、他のモデルよりかなり背が低い。
 ベゼルはボタンがある方は2.2cm、ボタンがないほうは1cmの幅。
・背面は持ち手側(ボタンがあるほう)が厚くなっていて握りやすい
 重心が手の方にくるので、130gがさらに軽く感じられる。
 触った感触もよい。ただ、指紋が目立つのが難点。
・カバーをつけると100gプラスされるが、カバーは完全に折り返すことができるので、カバーつけたままで読むことは可能(Oasisの軽さ、持ちやすさは犠牲になるが)

◯ボタン
・ボタンの位置は(個人的には)完全。持つとちょうどページ送りボタン(上のほう)に親指がかかるので。
・押し具合も良好。長いボタンのどこを押しても問題ないし、固すぎることもない。

見た目は個人の趣味の問題だが、持ちやすさに文句のつけようはないだろう、という結論。

◯ディスプレイ・フロントライト
・ディスプレイの背景の色味:
PWは少し青みがかり、Voyageがそれより明るい感じで、Oasisはその中間。
Oasisは薄さを実現するためにこれまでとは違うディスプレイを使っているのかもしれないし、導光版が変わったのかもしれない(とallesebook.deは推測)。
(*一応補足しておくと、ディスプレイは個体差があるので、この個体がたまたまそうだったと思っておくほうがいいかもしれない。実際Oasisは暖かい色味だという人もいる)

・フロントライトなしでのコントラスト(数値は大きいほうがよい)
Ko_kontrast_unbeleuchtet
(個人的感想:値段が高いからと言ってOasisがトップというわけではないようだ。ライトなしだとH2Oがトップだが、はっきり言えばどれも大差はない)

・フロントライト最大でのコントラスト(数値は大きいほうがよい)
Ko_kontrast_vollbeleuchtet
(個人的感想:LEDの数が多くなって明るくなったOasisがトップかと思いきや、そうでもないらしい。
とはいえ、これもどのモデルも大差はない。以前のように同じCartaでもアマゾンに一日の長があったという時代はもう終わり。どんぐりの背比べみたいなものだが、この2つのテストではVoyageがOasisより上)

・フロントライト最大時の明るさ(数値は大きいほうがよい)
Ko_hellig_max
LEDが10個で一番多く、サイドにLEDを配置したので照射距離も短くなったので、Oasisがトップ。
周囲が明るい場所で読む時、フロントライトは明るいほうがコントラストが上がるという意味で有益。

・フロントライト最低時の明るさ(数値は小さいほうがよい)
Ko_hellig_min
暗いところで読む場合、ライトが明るすぎると読みにくいので、暗くできたほうがよい。

・フロントライトの均一度
Ko_beleuchtung_verteilung
ディスプレイを9分割して明るさを測定している。数値の差が少ないほど均一。Oasisが一番すぐれている。これもLEDをサイドに配置して照射距離が短くなったため。

以上のように、照明の均一度ではトップだし、フロントライトの明るさの調節範囲もすぐれているし、コントラストも良好で、ことさら問題にすべきところはない。
ただ、気になる程ではないが、ライトの明るさと見る角度によっては、LEDの光の暈がサイドに見える場合がある。

(個人的補足:このLEDの光漏れ問題のひどいものがmobilereadのフォーラム、アマゾンのカスタマー・レビューでも報告されているので、運が悪ければ不良品にあたってしまうかもしれない。後述)

◯バッテリー
・本体のバッテリーの容量が小さいので、これまでになかったスタンバイ・モードが用意された。
長く使わないような時に使用する。スリープと違って、カバーを開けて画面が復帰するまでに5秒程度かかる。

・また、これまでのモデルとは違って、はじめてフロントライトを完全に消せるようにしたのも、バッテリー消費を抑えるためだろう。

・本体250mAh(こちらのサイトの画像では245mAh) + カバー1290mAh = 1.540 mAh。
参考までに、PW=1420mAh、Voyage=1320mAh。
アマゾンの主張では、WiFiオフ、フロントライトの明るさ10で1日30分の使用で、8週間使えることになっている。計算し直すと、28時間になる。これをOasis本体のみに適用すると、本体の単独使用では約4.5時間ということになる。
使ってみた実感から言うと、この計算で合っているようだ。フロントライトをオフにすれば、8時間から10時間だろうか。

補足:c't Magazinのテスト"Kindle Oasis im Test: Handlich, aber ohne Ausdauer"
ここは30秒に1度パネルをタッチする機械まで作ってテストをするところだが、それによると、フロントライトなしで30秒に1度のページめくりで、バッテリーのもちは12時間を切るぐらいだったと言っている。ライトをつけた場合については不明。雑誌本誌に詳細が載るのかもしれない。参考までにPWはライトなしなら50時間。表の"Laufzeit"のところ参照。
(最初c'tは、ライトを中間レベルにした場合は3時間、ライトなしで5時間しかもたないと言っていたが、FWが5.7.4にアップデートされて結果が変わった、としている)
-- 追記 ---
c't MagazinのOasisの完全記事が出た。バッテリーのテスト結果も明示されている。
Lesen mit Rucksack. E-Book-Reader Amazon Kindle Oasis mit Akku-Hülle
◯バッテリーのテスト結果:
30秒に1度パネルをタッチしてページをめくった場合
ライト・オフ: 17時間 / カバーをつけると105時間
ライト・オン(50cd/m²): 5.9時間 / カバーありで30.8時間
(50cd/m²がどの程度なのかはよくわからないが中間ぐらいの明るさ)
◯コントラスト: 17:1
VoyageやTolinoよりコントラストは落ちるとしている。
-- 追記おしまい --

・カバーによる充電時間
バッテリ残量20%から50%の段階でカバーに入れると、45分から90分で充電が終わった。

・本体の小さなバッテリーの寿命を心配する人もいるが・・・
サイクル耐久性についてはっきりしたことは言えないし、メーカーによっても違うだろう。が、アマゾンも何らかの対策をしているものと推測はできる。カバーをつけている時はつねに充電が行われているわけではなく、周期性があって何らかの条件に従っている模様。これまでの観察では残りが94%になると充電が行われるようで、こまめな充電は寿命を伸ばす。
(個人的補足:バッテリーのことはよくわからないので、文章が十分理解できているか、いまひとつ自信がない)

--
allesebook.deは中国のサイトから流出した画像を見た時点で、これは手に馴染む、これまでの最高の端末になるはずだと言っていたので、当然ながら高評価。本体のバッテリーの弱体化を批判する声に対しては、数時間読んでカバーに入れるというサイクルで、日常的には十分実用的だろうとしている。


◎リフレッシュ間隔
c't Magazinの記事。
・リフレッシュの間隔が章単位になっている(表の"Invertieren des Displays"のところ"kapitelweise")
(個人的感想:これは2013年のkobo auraですでに実現されていたものなので、はっきり言えば何をいまさらだが、とりあえずVoyageの14ページ毎よりはよくなっている。c't Magazinのスペック比較表ではPW3(2015)も14ページ毎になっているが、これは正しい?)


◎ディスプレイ問題
プレス向けの評価機はおそらくアマゾンが事前にチェックしているだろうから(と、自身が評価機をもらっているlesen.netが言っている)、そういうサイトでディスプレイを問題にしているところはないかもしれない。が、アマゾンのカスタマー・レビューなどでは個人ユーザーから問題が報告されている。

それを記事にしているのがlesen.net。
"Offenbar große Qualitätsprobleme bei Kindle Oasis"
LEDのところが照明がまだらになって影ができる、というアマゾンのレビューが多数ある。LEDを10個に増やして照明はより均一になったはずではなかったのか。また、先日のプレス向けのOasisiお披露目で、アマゾン関係者が「Voyageのディスプレイ問題はもう過去のものだ」と語っていただけに、残念な結果だ、と。

いくつか画像が添付されているレビューへのリンク。
Ko_fehlerhaft01 Ko_fehlerhaft02
左がアマゾン・ドイツ、右はイギリス

レビューは星5つが多く、問題のある個体は少数だろうが、運が悪ければ交換しなければならないかもしれない。それで何週間も待たされる?

・mobilereadでもスレッドが立っている。
"My Oasis has splotchier lighting than any early Paperwhite or Voyage I've seen."
画像をひとつ。
Ko_splotchier

同じスレッドから、こういう画像を見てしまうとVoyageのカラー・グラデーション再びか?と思ってしまう。
post#49の画像
Ko_colorshift
左Oasis、右Voyage

LEDの光源から離れたところが黄色っぽくなる。Voyageの場合はLEDが下にあるので、上部が黄色くなり、OasisはサイドにLEDがあるので、左から右にグラデーションができる(スレッドの反応を見ていると、このグラデーションが本当に見えない人もいるようだ)。

というわけで、Voyageのディスプレイ問題は根本的には解決していない、という嫌な予感がする。これはPWには見られない現象なので、フラットのVoyageとOasisに固有の問題なのかもしれない。Voyageが出たのは2014年。それなのにいまだに問題を残しているというのは・・・? 

ディスプレイの色に個体差が出るのは仕方がないにしても(こちらの方のOasisはずいぶん黄色い)、グラデーションになっていたり、LEDの影が見えたりするのは嫌だろう。なんと言っても高価格の最高級プレミアム・モデルなんだから。
Voyage以来のディスプレイ問題が解決できていなかったとしても、高級品のOasis向けに特別に品質チェックするなんてことはできないのかな。どんな割合で問題のあるディスプレイが混じっているのかは知らないが。

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