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2016年3月

2016年3月31日 (木)

Kobo: glo HD カスタマイズ(パッチ、スクリーンセーバー、ランチャーなど)

去年の2015年は、koboもkindleもディスプレイを2014年リリースの300ppiのE Ink Cartaにすげ替えただけの機種でお茶を濁して終わっただけに、今年こそは新モデルに期待してみようかなんて考えつつ、gloHDはやはり見送りかと思っていたのだが・・・

迷ったが、この前のタイムセールの半額で購入。
koboを買うのは2013年のaura以来。Voyageの300ppiのCartaに慣れると、眼が贅沢になってしまって。

ディスプレイは予想通りきれいで満足。だが、懸念もあって・・・

◎個人的な注目点
◯gloと同じ赤外線方式のパネルの感度はどうか?
静電容量方式のauraと違って、gloのタッチの感度(ページの切り替えや描画の速度のことではなく、タッチしても無反応だったり、という意味での感度)にはけっこういらいらさせられたので、gloHDはどうかが個人的には一つの注目点。

⇒ gloのような感度の悪さはなく、一安心。プロセッサの処理速度の違いか?
でも、段差にホコリやゴミがたまると、感度が悪くなるのは赤外線方式の弱点。やはり、安定感では静電容量方式だろうし、赤外線方式ではフラットにもできない。

◯Regal Waveform技術を使っていないため、リフレッシュ(全画面の白黒反転)が多い。今どきこんな頻度(6ページ毎)はない。
これもgloHDを見送ろうと思った一つの理由。
もし買ったら、パッチをあててリフレッシュの頻度を変更、表示がどうなるか試してみたいと思っていた。

⇒ パッチで頻度を減らしても、思ったほど文字のにじみ・かすれは少なかった。人によっては50ページや60ページ毎のリフレッシュでもいけるかもしれない。もちろん、そこまでいくと、かすんだ感じも目立ってくるし、ゴースト(前ページの残像)も気になってくる。2、3ページで文字がぼやけ始めるgloでも平気だという人なら、けっこうリフレッシュなしでやっていけるかもしれない。

でも、ゴーストはやはりvoyageやauraより目立つ感じはある。
とりあえず、12〜16ページ毎のリフレッシュにしておくかな。


というわけで、
後悔するかも、と思いながら注文したが、あまり幻滅せずに済んだ。300ppiでCartaの表示がすぐれているのはわかっていたが、動作の軽快さはプロセッサの違いなのか、パネルのチューニングの仕方でも違うのか。でも、静電容量方式のフラットが希望なのは変わりない。

KindleだろうがTolinoだろうが、あるいはBarnes & Noble、InkBook、BooxやBoyueだろうが、上位機種はフラットなモデルだし、最上位機種で構造上フラット不可の赤外線方式のパネルにしているのはkoboぐらい。元祖フラットはkoboだったのに。
こんなにフラットの機種も増えているんだし、koboもそろそろまともな静電容量方式のパネルを手に入れてほしいもの。

去年は5月にgloHDが出たたが、今年はどうかなあ。
新プロセッサのiMX7はどうなんだろう。新プロセッサでちゃんと開発、それで秋・冬リリースでかまわないな。今年はちゃんとしたのを出して欲しいし。


◎パッチ
http://www.mobileread.com/forums/showthread.php?t=260100

いつも通りで、とくに言うこともないが、辞書のウィンドウのパッチはちょっと数値を変えた。
デフォルトのままでは辞書ウィンドウの下の方でフォントが切れるので、gloHDでもウィンドウの高さを大きくした。

nickel.patchの
#pop-up box diamension-Aura hd のところ
 min-height: 540px
 min-height: 540px
に変更。
Kobo: 辞書ウィンドウ・カスタマイズ(FW3.13.1以降)」参照。


◎スクリーンセーバー
http://www.mobileread.com/forums/showthread.php?t=255238

gloHDのスキャンの結果だけ書いておく。
言語設定が日本語で、FW3.19.5761のgloHDの場合(それ以外には使えない)
.addons/screensaver/screensaver.cfg で
 offset=140
 standby=38bfebf2d8056f80412a1dd2f821a53f
 poweroff=f44b930217bf893cfa3079c419a1764b

自分でスキャンするのが面倒な人はこれを試してみるといいだろう。
詳しいインストール・設定方法は「Kobo: FW3.18.0 アップデート & パッチ、スクリーンセーバー」参照。


◎ランチャー
Kobo: 行間・余白、フォント調節有効化、ページめくり方向変更を簡単にランチャーで」参照。

gloHDではランチャーの表示が乱れるようだ。スクリプト処理中の「更新中」のアニメーション(黒い画面に■■□□□が点滅するやつ)から、うまくランチャー画面に戻れない感じ。
だが、表示が乱れるだけ。少し待ってから勘でスイッチボタンあたりをタップすると、ランチャーが終了して、本棚作成その他の処理は終わっている。アニメーションとランチャーその他の画面の切り替えがうまくいっていないようだ。

途中にsleepでも入れてやれば大丈夫なようだし、修正はしたので、そのうちアップしておくかな。使っている人がいるのかどうか知らないが。

自分で直せる人は「更新中」のアニメーションを起動しないようにしても、とりあえずはOK。
各スクリプトの
 /etc/init.d/update-animator.sh &
の行をコメントにする。

ランチャー用のスクリプトはあちこちに散らばっているので、まとめておくと、
・「Kobo: cfwの本棚作成スクリプトをカスタマイズ & Calibreと連携
・「Kobo: cfwの本棚作成スクリプトを更新(著者名コレクションの修正その他)
・「Kobo: ランチャーのcfw本棚作成スクリプトを修正(言語コレクション)
・「Kobo: ハイフネーション辞書のカスタマイズ、カスタム辞書の復元

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2016年3月27日 (日)

ドイツ語多読本: krima&isa: Wo steckt Osterei? / Conni und der Osterhase

今年はきょうが復活祭、イースターの日らしいので、それにちなんだ絵本2冊。

クリスマスやハロウィンなら誰でも知っているだろうが、復活祭は日本ではまだマイナーかもしれない。が、最近はハロウィンに続いて、次の商機に仕立て上げようする動きもあるとかないとか。

でも、ヨーロッパではメジャーだろうし、イースター(ドイツ語ではOster)のウサギやらタマゴやらの話は、児童書では定番。

krima&isa: Wo steckt das Osterei?

188語

きれいに色を塗ったイースターエッグ(googleの画像検索参照)をOsterhase(イースターのウサギ)が隠すことになっていて、子供たちがそれを探すという行事が行われる。

表紙の真ん中がイースターのウサギ(Osterhase)。そしてタマゴを生むのはニワトリと決まっている。

他のニワトリはタマゴを生んでいるのに、Henriette(水色に白の水玉)だけはまだ。それを待っているOsterhase。

やっとタマゴを産んで、あとは絵を描くだけだと喜んでいると、タマゴが消えている・・・。
それで探しに行くHennriette。ブタのところへ行ったり、馬小屋に行ったり・・・。でも見つからない。

ガチョウのところにタマゴ発見。やっと見つかったタマゴにOsterhaseが色を塗り、最後は庭に隠れて、子供がタマゴを探すのを眺める動物たち。

そういうストーリーだが、文章に表れていない(絵だけで語られる)ドラマを見逃してはいけない。ネズミの動きに注目。Henrietteが見つけたタマゴは自分のタマゴじゃない・・・・。


もう1冊はSachbuch的な絵本。
つまり、架空のストーリーを楽しむフィクションではなく、「復活祭に何をするの?」的な、子供に現実の世界がどうなっているかを教える絵本。

Liane Schneider / Eva Wenzel-Bürger: Conni und der Osterhase

1017語

現実世界を説明する絵本なので、こちらではイースターエッグを作るのはウサギではなく、表紙の女の子Conni自身。こうしてイースターエッグの作り方からわかるし、復活祭に実際に何が行われるかが語られていく、そういう絵本。説明がしっかりしているので語数は多め。

キリスト教の知識や欧米の風習を知らない日本人にはありがたいはずなので、長めの文章でも平気な人はどうぞ。


ついでなので、
LesemausのConniシリーズはpixiという小型絵本(手の平サイズの10センチ)にもなっているので安く手に入るものもある。8冊で1000円程度。

Pixi-Bundle 8er Serie 190. Neue Abenteuer mit Conni

とか
Pixi-Bundle 8er Serie 220: Neues von Conni

残念ながら復活祭の絵本はどちらにも入っていない。

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2016年3月24日 (木)

ドイツ語多読本: Marta Altés: König Kater

吾輩は猫である。この家の王である・・・。

Marta Altés: König Kater

245語

王様だから人間のためにいろんなことをして、笑わせてやる。昼は寝ているが、それも夜に見張りをするため。だから、時に甘やかしてもらって当然。良き王だからだ。そして、とてもかわいい・・・。
と、わざとらしく転がってお腹を見せるところなんかは憎たらしいくらい。

こんな調子の王様気取りのネコだが、ある日よりによってイヌが家にやってきて・・・・というストーリー。

当然、ネコとイヌとでは習性が違うから、イヌなんかバカにしか見えないし、人間の注目もイヌに集まって、王様気分が味わえなくなって・・・。

最後はまた王様気分を取り戻すことになるが、コミカルな絵柄とあいまって、ネコの表情がくるくる変わって見ていて楽しい。いい気なネコのオレ様っぷりがユーモラスな絵本。

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2016年3月20日 (日)

Kindle: フォントサイズ・カスタマイズ(jailbreak版)

kindleのフォントサイズは8段階(koboはその4、5倍はある)なので、その中間のサイズが欲しいんだよ、ということもあるはず。そこでフォントサイズのカスタマイズ。以前にも書いたことがあるが、あらためて。

jailbreakしていない場合はFONT_RAMP/CJK_FONT_RAMPを使えばよいが、jailbreakしてあればフォント・ハックを使うやり方もある。

2つのやり方の違いは、
・フォント・ハック方式ではメニューや辞書のフォントサイズも変えられる。
・FONT_RAMP方式では、フォントサイズの変更はCJKフォント一括、欧文フォント一括。
対して、フォント・ハック方式ではフォント毎に変えられる。全フォント一括、和文フォント一括でのカスタマイズなども可能。
・FONT_RAMP/CJK_FONT_RAMP方式ではフォントのサイズを8つ個別に指定できるが、フォント・ハック方式ではデフォルトのサイズからの一律倍率指定になる。

注意点としては、どちらのカスタマイズ方式も、FW5.6.5以降の新フォーマットKFXの本には通用しない。
FONT_RAMP/CJK_FONT_RAMP方式は古いmobi形式の本もダメ。

◎条件
・jailbreak済みであること。(「Kindle: 5.6.5 jailbreak方法」、「Kindle:jailbreak方法(5.7.x - 5.8.1)その1 準備編」参照)
・フォントハックがインストール済みであること。(「Kindle: 和文・欧文フォント入れ替え(jailbreak版)」参照)

◎手順
1. kindleの linkfonts/etc/conf.avail フォルダにある 99-tweak.conf を編集する
2. 編集した 99-tweak.conf を、kindle の linkfonts/etc/conf.d フォルダに置く
3. KUALでframeworkリスタート
4. いろいろ試してサイズが決まったら、念のため最後にkindleを再起動

◯具体的に例をあげて説明
例)デフォルトの「明朝」(TBMincho)のフォントサイズを変える

1. kindleの linkfonts/etc/conf.avail フォルダにある 99-tweaks.conf をバックアップをとってから、編集。
◇サンプル: 99-tweaks-TBMincho.conf
(元の99-tweak.confで使われていない設定は削除してある)
また、複数のフォントを変更したいときは
◇サンプル: 99-tweaks-myfonts.conf
を参考に。
<?xml version="1.0"?>
<!DOCTYPE fontconfig SYSTEM "fonts.dtd">
<fontconfig>
        <match target="font">
                <test name="family" compare="eq">
                        <string>TBMincho</string>
                </test>
                <edit name="matrix" mode="assign">
                        <times>
                                <name>matrix</name>
                                <matrix>
                                        <double>1.0</double>
                                        <double>0.0</double>
                                        <double>0.0</double>
                                        <double>1.0</double>
                                </matrix>
                        </times>
                </edit>
        </match>
</fontconfig>
・太字のTBMinchoはファミリー名。ここにカスタマイズしたいフォントのファミリー名を入れる。
・4行ある<double>の数値のうち、太字の一番上と一番下(幅と高さにあたる)に倍率を入れる。真ん中の2つの数値は斜体にするときなどに使うものなので、そのままで。
・エディタは改行コードLF(unix式)のもので。

たとえば、0.94倍に小さくしたければ、
                                <matrix>
                                        <double>0.94</double>
                                        <double>0.0</double>
                                        <double>0.0</double>
                                        <double>0.94/<double>
                                </matrix>
のように、2カ所数値を変更するだけ。

2. 編集したファイルを所定のフォルダに入れる
99-tweak-TBMincho.conf

kindle の linkfonts/etc/conf.d フォルダへ

3. frameworkを再起動する
KUAL > Fonts▽ > Restart the framework now

4. 調整が終わって好みのサイズになったら、最後にkinldeを再起動しておく。
右上の「メニューボタン」 > 「設定」 > もう一度「メニュー」 > 「再起動」

左から、0.94倍、等倍(オリジナル)、1.06倍

Jb_tbmincho_fmenu

Jb_tbmincho_page

画像でわかると思うが、細かなサイズの増減が可能。
どのフォントも同じやり方でサイズをカスタマイズできる。


◎辞書やメニュー、本のリスト表示などのフォントサイズ変更
◯それらに使われているフォントのサイズを変えればよい
・kindleの言語設定が日本語の場合: TBGothic
・言語設定が欧米の言語の場合:
 FW5.6.5以前なら、FuturaとHelvetica neue LT
 FW5.7.2以降なら、Amazon Ember(UI専用で本には使われない)
を変更する。
(USB接続したときに出る「USBケーブルに接続して充電しながら・・・」のメッセージや、再起動時の「再起動しています・・・」なども、フォントのサイズが変更される)

上にあげた設定例(99-tweaks-TBMincho.conf)内の、"TBMincho"を"TBGothic"に変えるだけでよい。(もちろん、本の本文でも「ゴシック」のサイズは変わる)
逆に、メニューや辞書のフォントサイズを変えたくない場合は、日本語環境ならTBGothicはいじらない。

また、
以下の一括で倍率指定する方法でもメニューや辞書のフォントサイズは変わる。TBGothicがその中に含まれるので。
◇全フォント一括指定
サンプル: 99-tweaks-allfonts.conf
◇和文フォント一括指定
サンプル: 99-tweaks-jafonts.conf

左から0.94倍、 等倍(オリジナルのまま)、 1.06倍

Jb_page_dic

Jb_listmenu

フォントを小さくしても行間は変わらないので、情報量はたいして増えないかもしれない。むしろ、フォントを大きくしたい人向きかもしれない。

◯フォントを大きくしすぎると、(旧)ホーム画面の本の「リスト表示」などでフォントが切れる。
全フォント一括でサイズを変更している場合は融通がきかないので、フォントを個別にカスタマイズしたほうがいいだろう。上にあげた99-tweaks-myfonts.confは、KoKin明朝も加えた和文フォントと、UIで使われるフォントを追加してあるので、適宜追加・削除などして利用を。

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2016年3月17日 (木)

ドイツ語多読本: Kai Meyer: Die Sturmkönige 2 - Wunschkrieg

空飛ぶ絨毯や魔人のジンなど、アラビアン・ナイト的な世界を舞台にした冒険ファンタジー、Sturmkönigeシリーズ第2巻。(第1巻は「ドイツ語多読本: Kai Meyer: Die Sturmkönige 1 - Dschinnland」参照)

第1巻の翻訳『魔人の地 嵐の王』 (創元推理文庫)の続きを一足先に。

Kai Meyer: Die Sturmkönige 2 - Wunschkrieg

94000語

無料で借りられる電子書籍版はOnleiheで。

魔力で動く機械仕掛けの象牙の馬が空を舞い、イフリートを探している・・・

そんな場面から始まる第2巻のタイトルは"Wunschkrieg"。
イフリートは魔人ジンの一種だが、第1巻で人間を襲ったり殺したり、奴隷化したりしていたジンとは別物。願いを叶えてくれるとされる存在。イフリートも象牙の馬も第1巻で登場していたものの、どういう意味があるのかよくわからなかった。が、第2巻でようやくその役割も見えてくる・・・。イフリートがかなえるはずの「願い」(Wunsch)をめぐる「戦い」(Krieg)というわけで、"Wunschkrieg"というタイトルのようだ。

第1巻ではイフリートにかぎらず、いろいろな事柄が謎のままで終わっていたが、全3巻の真ん中にあたるこの巻では、少しずつそれらの謎が明かされていく。52年前、魔術の暴走を止めようとして何が行われ、その結果この世界がどうなったのかなど、物語の根本的な動因が垣間見えてくるので、より興味を持って物語世界に入っていくことができる。

第1巻では、サマルカンドを出発して、ジンの跋扈する危険な砂漠をどうにかわたってバグダッドに到着するまで経緯が語られたが、第2巻でもストーリーは前巻同様、メインの3人の動向を中心に展開していく。

主人公のTarikは、第1巻の最後でバグダッドの宮殿から放り出されたが、恋人になったSabateaを救出しようと、空飛ぶ絨毯で宮殿に突入しようとするが、失敗。父の知り合いの商人に会い、イフリートの「第3の願い」の話を知る・・・。

一方のSabateaはというと、カリフ暗殺のためにバグダッドにやってきたという正体は実はもう見破られていて、さて彼女の運命やいかに・・・と思いきや、実はこのカリフ、魔術の力でどうにか命を保っているらしく、それが辛くて本当は死を望んでいるという予想外の展開・・・。そして、権力維持のためカリフに死なれたくない宮廷魔術師が登場。この宮廷魔術師がイフリート狩りを行なっている。その目的はイフリートの「第3の願い」・・・。

そして、残る3人目はTarikの弟、Junis。彼は「嵐の王」たち(第1巻で出てきた竜巻乗り)のやり方に反感を覚えつつも、彼らと行動を共にする。「嵐の王」たちが駆使する力の中心となっているJibrilという新しいキャラクターも登場、彼らはジンのバグダッド侵攻を阻止しようと、決戦を挑む・・・。

竜巻を駆使する嵐の王たちと怪物を操ってそれに対抗するジンの戦闘場面をはじめとするアクション・シーンは、第1巻同様、緊迫したスペクタルを生み出しているが、それよりも、主人公たちが住む世界の成り立ちが意表をついていたし、イフリートの「第3の願い」の話もちょっとファンタジーらしい発想でおもしろかった。

次の最終巻では、「第3の願い」を求めてバグダッドを旅立つ主人公たちが描かれるようだ。
上では触れていないが、回収されていない伏線もまだいろいろありそうだし、今後の展開が気になるところ。何かどんでん返し的なことがあるのか?


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2016年3月14日 (月)

ドイツ語多読本: Eva Dicks / Andrea Petrlik: Noah rettet die Tiere

聖書の話。旧約聖書、創世記からノアの箱舟。
幼児向け絵本。

桃太郎の話を知らない日本人はいないだろうが、それと同じように西洋人は聖書の話を知っているのかもしれない。こういうふうに絵本やら何やらを通して。
そんなふうに知識を自然に身につけたわけでもない日本人は、小説でも絵画でも聖書やらギリシャ神話やらの暗示があると注釈やら解説やらに頼らざるをえなかったりで面倒くさい。バックグラウンドの差は大きい。

Noah rettet die Tiere

204語

あきらかに幼児向けなのがわかる絵柄。動物はぬいぐるみか何かのよう。文章もやさしい。

人や動物となかよく暮らすノアは神に愛されているが、多くの人間は争ってばかり。神はノアに、これから洪水にするから大きな船を作れという。動物をつがいで船にのせるノア。そして、洪水。40日間雨が降り続き、ようやく星が出た夜にハトを飛ばしてみると、枝をくわえて戻ってくる。それでじきに陸に上がれるとわかる・・・。

キリスト教系の出版社の本なのか、裏表紙には小さな子供に神の愛を語る絵本だと書いてある。
(そうかもしれないが、ノア以外は皆殺しの話、とも言えるけど・・・)

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2016年3月11日 (金)

ドイツ語多読本: Marie-Astrid Bailly-Maître / Antoine Guilloppé: Schattenspiele im Abendrot

空の暗くなっていくオレンジに赤、太陽の白と草原の緑。そこから浮き立つ影の漆黒のシルエット。影絵の話。

Marie-Astrid Bailly-Maître / Antoine Guilloppé: Schattenspiele im Abendrot

359語

夕暮れ時、草原に一本だけ立つリンゴの木を目指すネズミ。なぜかオオカミと会う約束。
緑の草原を上空から見下ろすツバメはネズミのほかに、オオカミの姿も見える。夕暮れ時なので影は長く伸びる。
ツバメはネズミに警告するが、意に介さないネズミ、木の下でオオカミに会う。そこで何をするかというと、夕焼けの光を利用して影絵を作る・・・。

緑の草原に大きく羽を広げたフクロウの姿に、尖った耳のウサギ。
地平線に沈む太陽を背に、ニワトリとイルカのシルエット。
ネズミとオオカミが協力すると、大きなユニコーンの姿が浮かび上がる・・・。

そんな光と影のマジックのおもしろさに魅了されたネズミとオオカミだが、読む方も影絵のおもしろさを堪能できる。真っ黒なシルエットしか見えないと純粋に形に集中できるから、形のおもしろさが浮き立つ。

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2016年3月 8日 (火)

Kindle:アップデート 5.7.3 & jailbreakその他(少し更新)

またアップデート、5.7.3。最近なにやらせわしないkindle。

◎ダウンロードページ
◯PW3(2015)
http://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201756220

◯Voyage
http://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201630670

◯無印
http://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201605570

◯PW2(2013)
http://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201307450

◎アップデート内容
詳細は不明。説明なし。
ユーザーの声:
◯本の最初のページを開いてから閉じると「100%読了」になっていたのが直った、という報告。
http://www.mobileread.com/forums/showpost.php?p=3276231&postcount=33

◯5.7.2.xでバッテリー消費が激しくなった問題への対処ではないか、という声が出ているが、問題の有無も含めて真偽は不明。


◎jailbreak関連
-- 情報更新 --
アップデートでjaibreakが無効化される危険はあるので、注意を。
つまり、5.6.5から5.7.2.xへのアップデートではjailbreakが生き残ったが、今回も生き残るかどうかはわかっていない。
まだ情報が出ていない。

情報が出た。問題ないようなので、PW2を5.7.3にアップデートした。
ただし、FWをアップデートしたら、スクリーンセーバー・ハックなどの*.binはインストールし直す必要がある。FWアップデート後、動かなくなったとあせる前に、KUALで*.binの再インストールを。KUALのextensionはそのままで可。

それから、前にも言ったが、ファクトリー・リセット(「端末のリセット」は厳禁。
FWのアップデートでjailbreakは生き残るかもしれないが、ファクトリー・リセットでは確実に死ぬ。
(5.6.5にダウングレードする方法がない以上、5.7.xでファクトリー・リセットしたらjailbreakは不可能になる。この意味では5.6.5のままアップグレードしないというのも一つの選択ではある)

フォント・ハック、スクリーンセーバー・ハックの動作は問題なし。それからUSBNetやktermなんかもOK。
-- 情報更新おしまい --


◎アップデート回避
update.bin.tmp.partialを使ったアップデート回避トリックは5.6.xで無効化されたということになっていたが、5.6.5ならばとりあえず通用するという結果が出たらしい。
http://www.mobileread.com/forums/showthread.php?p=3275701#post3275701

が、5.7.2.1でこの方法が5.7.3へのアップデートを防ぐかどうかは、これからテストが始まることになるので、現段階では未知数、ということ。

-- 更新 --
5.7.2.xに上げている場合アップデート回避トリックも不確定状態ので、jailbreak環境が不可欠なら、安全策をとってWiFiはオフで。それで少し様子を見ることを勧める。そのうち、あえてアップデートする人、あるいは自動アップデートされてしまう人が出てくるだろうから。
5.7.3でjailbreakが生き残るのは、上述のように確認済み。
-- 更新おしまい --


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2016年3月 5日 (土)

Kindle: PW1(2012、第5世代)、5.6.1.1へ強制アップデート勧告

amazon.comではすでに告知されていた2012年以前のモデルの強制FWアップデート。
3月22日までにアップデートしないと、クラウドやストアなどが使えなくなる。

日本で該当するのは初代Paperwhite(2012、第5世代)のみ。

「Kindle電子書籍リーダーのソフトウェアアップデートに関する重要なお知らせ」
https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201994710

もうほとんど使わないが一応アップデートした。
単なるフォントの入れ替えではなく、いくつも追加することができた5.3.9ともお別れ。

ひさしぶりにディスプレイを見て、PW1とPW2の差は大きいとあらためて思う。
E Ink PearlとCartaとでは大違い。
PW2を出した時にアマゾンが「白はより白く、黒はより黒く」なんて宣伝していたのは嘘ではなく、並べてみると、初代PWのPearlディスプレイの灰色感はやはり気になる。それだけ白黒のコントラストが落ちる。
それから、文字のかすれ具合もひどいし、あとフロントライトが均一ではない。
その上、今ではCartaで300ppiがスタンダードだから、さらに差は大きくなっている。

◎jailbreak関連
jailbreakしてから、アップデートした。

一応書いとくか。
5.6.xはjailbreakできない。さらに、5.6.xはFWのダウングレードができないから、5.6.xの人はjailbreakは不可(シリアル接続するなら別だが)。
・5.6未満ならば、jailbreakした後に5.6.1.1.にアップグレードすればよい。jailbreakは生き残る。
(ただし、5.4.5のjailbreakは先にFWのダウングレードが必要だったはず)
・jailbreakは最新版(snapshot)で。

要するに、5.6未満の古いバージョンのままの場合は先にjailbreakしてからFWのアップデートを。先にアップデートしてしまうとjailbreakはできなくなるぞ、ということ。

-- 訂正 --
PW1(2012)は従来の方法でダウングレード可能(「Kindle Paperwhite:FWダウングレード方法(その2)」参照)なので、5.4.4.2以前にダウングレードしてからjailbreakすればよい。
-- 訂正おしまい --

◯jailbreak方法
http://www.mobileread.com/forums/showthread.php?t=225030
Packages targeting the Kindle 5 (Touch/PW1/PW2/KT2/KV/PW3): から
1) K5 JailBreak (5.0.x - 5.4.4.2) | kindle-jailbreak-1.14.N-rXXXXX.tar.xz
をダウンロード・解凍。

2)さらに、その中にある kindle-5.4-jailbreak.zip をPCにつないだkindleのルート(ドライブの一番上)に解凍。
 Update_jb_$(cd mnt && cd us && sh jb.sh).bin
 bridge.conf
 bridge.sh
 developer.keystore
 gandalf
 jb.sh
 json_simple-1.1.jar
の7つのファイルがkindleにできているのを確認すること。

3) USBの接続を解除して、
「ホーム画面」 > 「メニューボタン(右上三本線)」 > 「設定」 > もう一度「メニューボタン」 > 「Kindleをアップデート」
とタップしていく。
そのままの画面の下の方に、「*** JAILBREAK ***」の文字が出るはず。それでおしまい。

4) 一応bridgeをインストール
kindle-jailbreak-1.14.N-rXXXXX.tar.xz を解凍してできたフォルダの中に、
 Update_jailbreak_bridge_1.14.N_install.bin
がある。これをkindleのルート(ドライブの一番上)にコピー。

5) USB接続を解除したら、さっきと同じように、
「ホーム画面」 > 「メニューボタン(右上三本線)」 > 「設定」 > もう一度「メニューボタン」 > 「Kindleをアップデート」

ここまでやったら、5.6.1.1に上げてもかまわない。
FWのアップデートが終わって、再起動時に、
「**** BRIDGE+ ****」の表示が画面下に出るはず。

6) 必須ツールのインストール
絶対に必要なのは、
1. KUAL
2. Helper(KUALのextension)
3. MR Package Installer(KUALのextension)

Kindle: 5.6.5 jailbreak方法」の「◯あとはいろんなツールのインストール」以下、もしくは「Kindle:jailbreak方法(5.7.x - 5.8.1)その3 jailbreak後のツールのインストール」を参照。

もうひとつ念のため言っておくと、スクリーンセーバーやフォント・ハックなどのインストールに使う*.binファイルは、
Update_XXXXX_install_touch_pw.bin が初代PW(2012)用。
(Update_XXXXX_install_pw2_kt2_kv_pw3.binと間違えないように。ちなみにkt2が無印。かつてのKindle Touchの2代目という認識)


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2016年3月 3日 (木)

ドイツ語多読本: Tom Hillenbrand: Drohnenland

2015年のLaßwitz賞ドイツ語長編部門の受賞作。
http://www.kurd-lasswitz-preis.de/2015/KLP_2015_Bester_Roman_Laudatio.htm

読もう読もうと思っていたら、いつのまにか翻訳が出ていて、ちょっと驚いた。が、グラウザー賞受賞作とあって、なるほどミステリだからか・・・と思い直す。ドイツのSFの賞なんか取ったって、日本語に訳されるとは思えないから。

というわけで、近未来を舞台にしたSFミステリ。読んだ感じだとミステリ要素のほうが強いかな。もともとミステリの作家のようだし。

残念ながら、日本から電子書籍版は買えないので、紙の本。
Tom Hillenbrand: Drohnenland

94000語

エンターテイメントなので、文章は平易で読みやすい。
主人公視点の一人称小説。主人公はなにやらハンフリー・ボガード好きらしい。ハードボイルド小説というのは一人称でないと格好がつかないらしいのだが、それを意識しての一人称? あと、文章がすべて現在形なのもそれと関係ある?

でも、映画が3Dどころか360度パノラマになっている近未来、ボギーのポスターを自分のオフィスに貼っているのはどういうつもりなんだろう、主人公40代後半、刑事(男)? ただのレトロな趣味ならいいが、たまに「ボギーがこっちを見てやがる」的なことを思ったりするのは、ちょっと恥ずかしい気がしないでもない。でも、相手がEU議会の大物だろうが大企業のトップだろうが、堂々とわたり合って捜査を進めていく姿はハードボイドなのかもしれない。たまに皮肉なセリフを漏らしたりもする。データを一週間もこねくり回してようやく被害者の性別がわかるのが検死官だ、とか。

一言で近未来と言ってもわからないだろうから、少し説明。
アラブは核で汚染されているらしく、アフリカでは太陽光発電をめぐって紛争、アメリカは没落し、波力発電でポルトガルが興隆。そして、気候変動か何かでオランダや北ドイツは海に水没、主な舞台のブリュッセルはずっと雨ばかり降る・・・。

テクノロジーは進歩していて、車は自動運転、口で命令すればOK。フロントガラスはモニタに早変わりして、警察のコンピュータと通信できたり。モニタといえば、いろんなものがモニタになってネットにつながるといっていいくらい。店のテーブルもそうだし、着ている服、さらにはスプレイで壁に噴射したらモニタになる、なんてのまで。それから、メガネもネットとつながって、データを表示したり記録したり。

警察小説なので捜査テクノロジーも見所。ユーロポールの捜査コンピュータTEREISIAS(通称Terry)は「ミラースペース」なる仮想世界を作って、事件現場を視覚や聴覚だけでなく、触覚や味覚も含む全感覚で再現。刑事はそこに潜って現場をリプレイ、被害者が銃で撃たれる瞬間を、脇に立って見ていたりすることもできる。EUの諜報機関が持っているコンピュータはさらに高性能で、過去の再現ではなくリアルタイムで「ミラースペース」を作ることができる。だからたとえば、テロリストのアジトをライブで「ミラーリング」、その「ミラースペース」に捜査員を送り込み、そこから敵に姿を見られずにリアル世界の突入部隊を先導させる、なんてことも可能。その上、捜査コンピュータは過去や現在を再現するだけでなく、人の未来の行動予測までする。Aさんがいつ何々をする確率は〇〇パーセント、みたいに。

そんなことが可能なのはそれだけの膨大なデータがあるから。で、そのデータを集めているのが、一般の監視カメラは言うまでもなく、いろんなドローン。Kolibri(ハチドリ)とかMolly(分子何とかの略)とか、Mite(ダニサイズ?)なんてのもある。というわけで、タイトルは"Drohnenland"(翻訳では『ドローンランド』)か。

こんなSF的な舞台設定で、SF的ガジェットを駆使して行われる捜査やアクション・シーン自体が興味深く、スリリングな読みどころではあるが、話はミステリの枠をきっちり踏まえた感じで、ミステリ読者も安心な展開と言えそう。まあ、SF読者よりミステリ読者のほうが圧倒的に多いだろうし・・・。

殺人事件が発生、刑事が捜査に乗り出していって・・・という、いかにもミステリな発端。
イギリスのEU離脱を決めるには憲法改正が必要、というので、その投票を間近に控えた頃、EU議会の議員が射殺される。捜査にあたるのが主人公Westerhuizen、ユーロポールの主任警部。もちろん捜査にはコンピュータTerryの行動予測やミラーリングが活躍するが、そこにはコンピュータ分析官Avaの存在も不可欠(後に人間不要の自律型の次世代Terryも登場するが・・・)。主人公と若い女性分析官のコンビで事件を追うという筋立て。

近未来のハイテク利用を除けば、きわめてオーソドックスな展開。現場検証をして、被害者の自宅を家宅捜索、被害者の関係者の証言を取り・・・と、こんな感じで手がかりを探し、推理。また、被害者がEU議会の議員だけあって、政治的なネゴシエーションがあったりもする・・・。

結局、コンピュータが割り出した容疑者が犯人だろうということになるが、逮捕時にドローンが暴走、容疑者は死亡・・・。とりあえずは一件落着したかに見えるが、もちろん本当の話はここから始まる。

主人公がライブのミラーリングを行った際、本来ありえないことだが何者かがミラースペースに侵入して、メッセージらしきものを残していた。それ自体が謎だが、そのメッセージをたどると、他にもEU議員が死亡していることがわかる。事故死とされているが、ひょっとして・・・? さらに、そこから浮かび上がる、TalConという企業の存在(上述のデータ・メガネなどを作っている企業)・・・。

さらに、殺された議員の殺人現場にもう一度行ってみると、犯人が発砲したはずの場所(ミラースペースで弾道を見て確認した)がそもそも存在しない。つまり、ミラースペース自体が改ざんされていた・・・・。

ユーロポールのデータ改ざんと、ここまでくると、ちょっとやばそうな陰謀の匂いがしてくる。実際、主人公は命を狙われ・・・・と、あとは真相があきらかになるまでのスリリングな展開が待っているのみ。

翻訳まで読んでいないが、これ。
トム・ヒレンブラント:ドローンランド


それにしても、2015年はドイツSF大賞のほうも、取ったのはSF作家じゃないみたいだし(「Markus Orths: Alpha & Omega. Apokalypse für Anfänger」)、どういうことなんだろう。
2作を較べれば、ただのSFホラ話とも取れなくもない、"Alpha & Omega"のほうが型破りなおもしろさがある。ミステリって結局、事件が起こって、それが解決されるという結末は決まっていて、その意味では先がわかりきった話だし(読んでいる間はもちろんおもしろい)。

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