ドイツ語多読本: Quint Buchholz: Schlaf gut, kleiner Bär
クマのぬいぐるみの話だが、絵は子供向けのデフォルメもなく、文字通りカメラで写し撮ったかのよう・・・。
Quint Buchholz: Schlaf gut, kleiner Bär
806語
窓から外を眺めているぬいぐるみのクマ。画像で見えるかどうかわからないが、ぬいぐるみの毛羽立った質感も絵で再現されていて、窓ガラスにクマの顔や部屋のカーテンが写り込んでいる。そのくらい細かく描きこまれている。
おやすみの物語を聞いたり、お祈りをしたり、キスしてもらったり、一口水を飲んだりと、寝る前のルーティンをこなしてベッドに入るものの、寝つけない。窓際に本を積み重ねて、階段を作り、窓から外を眺めるクマ・・・。
そこに広がる風景、それと結びついた記憶。
たとえば昼に海賊ごっこをして遊んだ川の桟橋。川面に反射する月の光と暗い緑の草地に明るく浮かび上がる桟橋とボート小屋、川に浮かぶアヒル。
また、森の端、草地で大きな月に向かって両腕を上げているようなカカシの後ろ姿、草原にシカの黒い影。カカシの帽子には子供たちが通りかかった挿していった花、腕には鳥がとまり、傘がぶら下がっている。
また、クマの思いは窓から見えない風景にも飛んでいく。
隣町で見かけたサーカスのテント、今頃はきっと公演も終わって、道化がバイオリンで子ゾウに子守唄を演奏している・・・。
などなど、たとえばこんな風景がていねいに美しく描きこまれた一枚の絵になって、目に飛び込んでくる。で、この絵が写実的でもあり、妙な非現実感もある。
それは明るすぎる月の光のせい。窓から差し込む月の光が部屋にくっきりと影を作るほど。上の画像でもわかるかもしれない。それ以外の絵も、他に明かりはないのに、草地の緑、柵の木の色、風船の赤い色まで見えてしまう。
そして、絵の全体を覆う粗い粒子感。どこかで見たことがある感じだと思ったら、それはデジカメのディスプレイなんかで目にしたことがあるもの。無理に露出を上げると、暗い場所も見えてしまうあの粒子の粗い画面・・・。
ついでなので言っておくと、夜なのにヒツジが草を食べているんだけど、ヒツジって夜行性? 昼間の風景をそのまま夜に、太陽を月に変換して人工的に作り出した光景なんじゃないかって気もしてくる。
ともあれ、絵は写真のようにきれいでありながら、ただの写実ではないという絵がとにかく印象的な絵本。
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