ドイツ語多読本: Claude K. Dubois: Akim rennt
2014年のドイツ児童文学賞の絵本部門の受賞作。
http://www.djlp.jugendliteratur.org/bilderbuch-1/artikel-akim_rennt-3897.html
2013年の受賞作、Jon Klassen: Wo ist mein Hutとはまるで正反対の、シリアスなリアル世界のドキュメントのような絵本。
Claude K. Dubois: Akim rennt
425語
表紙を見てもわかるが、ごくラフなスケッチに、薄く色をつけただけといった絵柄。だが、中を見ていくと十分に迫力がある。
爆弾が落とされたのか、背後に爆発、そして前面には逃げまどう子どもに大人・・・。表紙を見ただけでどういう話なのかは予想できるだろう。対象年齢は7歳以上と、ちょっと高め。
文章だけのページが1ページあって、その後にそれを絵で描くページがしばらく続く。そのあいだ文に邪魔されずに絵に集中することができ、これは効果的な作り方だと思う。絵には文章で語られていない情報もたくさん含まれているから。
戦争が終わって川で遊んでいるAkim。ところが、爆音とともに飛来する飛行機、町から立ち上る黒い煙、逃げまどう人々、爆発で飛び散る石を避けようと頭を抱え、うずくまる人々・・・・。
混乱の中、家族とはぐれ、一人ぼっちになるAkim。
なんとか難を逃れ、焼け残った家に肩を寄せ合う人々、泣いているAkimを見て、手を差し伸べる女性がいて、抱き合って夜を過ごす・・・。
ところが兵士が突然やってきて、連れ出されるAkim。食事や洗濯などの雑用を強要される・・・。
文章は起こった出来事を淡々と語るだけ、その分、絵はかなり陰惨な場面も大胆に描いている。たとえば、Akimが路上に転がる死体を見下ろしている場面などはショッキング。Akim自身が死んだような顔をしている・・・。
その後、Akimはうまく逃げ出し、避難民たちの隊列に加わることができる。そして、どうにか川を渡って難民収容施設のようなところに行くことができるものの、これまでの体験や家族を思い出して、生活に馴染めない。が、最後はお母さんに再会。
ラストに救いがなかったら、やりきれない思いしか残らなかったところだ。
そして、書きなぐっただけのラフなスケッチのような絵柄も、事態の悲惨さを十分に伝えつつ、子供にショックを与えすぎないようにするには、これでよかったのかもしれない。
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