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2014年11月 9日 (日)

ドイツ語多読本:Ann-Kathrin Karschnick: Phoenix - Tochter der Asche

Deutscher Phantastik Preisの2014年ベスト・ドイツ語長編受賞作。

スチーム・パンクの親戚なのか、テスラ・パンクというものがあるらしい。電気の直流・交流でエジソンと争ったとかいう、ニコラ・テスラ。スチーム・パンクが蒸気機関なら、こちらは電気ということ? たしかに、武器が「電流弾」(?)を発射するものだったりする、そんなレトロな未来が舞台。

1913年の「実験」で人口の3分の1を失ったヨーロッパ。その混乱から人間が何とか生きていける秩序をもたらしたのが、Saiwaloなる霊的存在。その技術的協力者がニコラ・テスラということらしい。が、ストーリーはその120年後の話。破局後の荒廃した雰囲気を残す舞台はハンブルク。主人公は20代半ばの女性の姿をしているが、フェニックス。そして、連続殺人事件の発生、事件の解明に乗り出す主人公、さらには、敵対する人間側の捜査官との確執、協力、恋愛感情・・・と、ファンタジーからミステリ、ロマンスまで色んな要素をぶち込んだストーリー。

日本のアマゾンには(まだ?)Kindle版がないので、Koboのepub版
Ann-Kathrin Karschnick: Phoenix - Tochter der Asche
Phoenix01

98000語

冒頭、ドローンに追われる主人公Tavi。最後は背中から翼を出して、ドローンを振り切る。Taviはフェニックなのだ。なぜ追われるのかというと、人間を悲惨に突き落とした120年前の「実験」は、デーモンとか妖魔とかフェニックスとか、そういう魔物が行ったものとされているからだ。彼らは「魂なきもの」と呼ばれ、Saiwaloにすべてを任せきった人間から、排除対象にされている。

魔物はオーラを発している。それは普通の人間には見えない。だが、たまに見える者がいて、そういう人はGeisterwächterになる。実はSaiwaloも人間の目には見えない。Saiwaloと人間をつなぐ役目をするのがGeisterwächter。フェニックスのTaviは不死で、何千年も生きているので、自分のオーラを抑える術を身につけている。それゆえ、人間に混じって暮らすことができる。さらには、Geisterwächterの素質を持った少年Nathanをこっそり育てている。見つかれば、NathanはSaiwaloの意志なき操り人形にされてしまうからだ。

そんなハンブルクで連続殺人事件が起こる。犠牲者はかつてTaviが命を救ったことがある人間たちばかり。不審に思ったTaviは犯人探しに乗り出す。そして、殺人事件を担当する捜査官がもう1人の主人公Leon。こちらは人間。Saiwaloに疑いを持つこともなく、魔物排除すべしの思想に凝り固まった、上昇志向の強い野心家。

同じ事件を追うわけだから、当然二人は出会うことになる。意気投合、一致協力して犯人を追う、みたいな話にはならないので、緊張感のある展開。二人は互いを利用し、あるいは陥れようとするからだ。その上、どこかでひかれ合い、それだけにまた反発する、というようなロマンス的展開も絡んでいく。

なぜ連続殺人犯はTaviに関わりのある人間ばかり狙うのか、その理由がわかったとき、犯人の次の標的もわかる。NathanかLeonか・・・。そこからクライマックスへ突入・・・。

ミステリ要素に引っ張られて、先を読み進めることができるので、読みやすいだろうと思う。ただ、3部作の1作目らしく、まだ不明の部分も多い。Saiwaloが何者で、何をしようとしているのかなど、まるで説明がないし、120年前の「実験」とやらの実態、真相も不明のまま。そのあたりは読んでいてもどかしいが、続巻を読めということなのだろう。

第2巻はすでに発売されているが、第3巻は未刊。

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