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2014年7月27日 (日)

ドイツ語多読本:Marc Elsberg: Zero - Sie wissen, was du tust

グーグル・グラスみたいなスマートグラスやスマートウォッチが社会に浸透した、ありうるかもしれない未来のITサスペンス。

今のグーグル・グラスは見た目でそれとわかるが、小説の中では普通のメガネと見た目では区別できないくらいに進化している。グラスで撮影した映像をリアルタイムでネットに流したり、顔認識アプリケーションで、メガネ越しに見た人の名前や住所などいろいろな情報を視界に表示できたりする。また、スマートウォッチで心拍数やら血糖値やらを測定できるだけでなく、リアルタイムにネット上のプログラムに伝えて管理するなんてこともできる。そういう社会が舞台。

Marc Elsberg: ZERO - Sie wissen, was du tust

100,000語

出だしは、ドローンを飛ばして休暇中のアメリカ大統領を盗撮、その映像をリアルタイムでネットに流す、そんなショッキングな場面から始まる。パニックにおちいる大統領、あわてふためくセキュリティ・チームの様子がそのまま全世界に・・・。犯行声明を出したのがZeroを名乗るインターネット・アクティビスト。

主人公はロンドンのオンライン新聞Dailyで働くことになったジャーナリスト、Cynthia、40代女性、高校生の娘が一人いる。Dailyは世間を騒がせているZeroを追うことになるが、Cynthiaに仕事道具として上述のスマートグラスが支給される。そして電車の中で使ってみて驚く。顔を見ただけで、その人の個人情報が信じられないくらいわかってしまうからだ。Cynthiaはそこに危うさを感じるが、新聞社の若い同僚や自分の娘もそれをごくあたり前のように受け入れている。

そこで登場するのがFreemee。GoogleやFacebook、amazon、カード会社など、いろいろなところが個人の情報を収集、分析、利用しているが、自分の情報は自分で管理すべきじゃないかという主張のもと、その情報管理のためのプラットホームを提供するというのがFreemee。それで、ActAppsなんていうアプリがその情報を元に生活全般のアドバイスをする。体調や健康管理から、成績や業績を上げる、友だちや教師、家族とうまくつきあう、気になる異性に近づくにはどうしたらいいか、などなど。スマートフォンなどを通じてリアルタイムでアドバイスが届けられる。適切なアドバイスを得るにはそれだけ情報もたくさん出す必要もある。

さらに、提供する情報に応じてポイントがつき、ランクも上がるという仕組み。ポイントで買い物もできたりする。アドバイスに従わないと、ポイントがつかなかったりランクが落ちたりする。Cynthiaは、個人情報を売って金をもらっているようなものだと思うが、その一方で、自分の娘の素行が良くなったのはFreemeeのおかげだったりもする。

そして、スマートグラスを娘に貸したことから事件が起こる。娘は男の友だち二人と出かけ、スマートグラスを一人に貸す。その友だちが指名手配中の容疑者を顔認識アプリで発見、無理に追いかけて殺されてしまう。もう一人の友だちはそこの不信を抱き、Freemeeのことを調べ始める。そして、ある仮説に行き着くのだが、Cynthiaに話す前に事故で死んでしまう・・・。

ネット上でZeroの情報提供を一般視聴者にも求め、公開捜査のようなものを始めるDaily、アメリカの方では大統領が狙われたわけだから、FBIのような機関も動き出す。そして、Freemeeの幹部たちの気になる動き。CynthiaはZero探しの中で身の危険を感じるような事件に巻き込まれたり、最後には殺人事件の容疑者にされて、監視カメラが張りめぐらされたロンドンの街を、スマートグラスやスマートフォンで誰に映像を撮られているのかもわからないまま、逃げまわる。それがリアルタイムでネットで実況される・・・。

そんな、IT技術の進歩によって、ひょっとしたら現実になるかもしれないサスペンス・ストーリー。

ActAppsみたいなものが技術的に可能なものかどうかはわからないが、あれば興味を持つ人は多いかもしれない。「◯◯で成功するには」的な本が世の中にあふれているし、さらにアドバイスが一般論ではなく、自分個人のデータに基づくとなれば、気になる人も多くなりそう。それとランク付けやポイントなども、いいエサになるかもしれない。ただ、それが個人情報、プライベートをさらすという交換条件で行われるとなると、二の足を踏む人も多そう。それとも、それに抵抗を感じない、あるいは感じても実利を選ぶのが世の趨勢になっていくのだろうか。

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