ドイツ語書籍:Ferdinand von Schirach: Tabu
『犯罪』、『罪悪』、『コリーニ事件』と、翻訳のKindle版まで出ているので、それなりに売れているのだろうFerdinand von Schirach。どれも読んだことがない。でも、なんか評判のようだし、せっかくだからシーラッハの最新作を。
日本のアマゾンKindleストア、Koboストアにはないので、ドイツの書店からepub版。
Ferdinand von Schirach: Tabu
40000語
宣伝文句には、芸術家小説にして法廷劇、最後には人間の深淵を描き出す、みたいなことが書いてある。たしかに、前半はある芸術家の肖像みたいな感じ。
乗馬のことばかりで子供に関心がない母親、酔っぱらいで狩猟が趣味の父親。Sebastian自身は共感覚みたいのものを持っていて、いろんなものを色で認識したりする。父親は銃で頭を撃って自殺。その死体を見て、トラウマに受けるSebastian、母親は屋敷を売り払い、他の男と結婚。Sebastianは寄宿学校へ。そんな少年時代を経て、写真家になり、アーティストとして成功していく。そんなことが淡々とした筆致で、いらない感情を交えることもなく、描かれていく。ほんとに前半は映像アーティストの話。
そして、後半、物語の視点はSebastianから離れる。Sebastianは若い女性を誘拐し殺したという容疑で逮捕され、物語はその真相を追うことになる。真相を知るSebastianの視点からストーリーを追うわけにはいかないだろう。で、検事のLandauやら、Sebastianを取り調べた警官やらが登場、そして、Sebastianの指名で弁護を担当する、ちょっと偏屈な感じのBiegler。
後半から法廷でのやりとりもあり、事件の真相にせまるBieglerの行動ありと、話はおもしろくなってくるが、ネタバレするので、ここまで。
でも、この事件の真相で、何が言いたいんだろうねえ。
「世界は舞台、人はみな役者」ってわけでもなかろうが、自分自身の現実をも作品化・芸術化したってこと? 現実と芸術の見境もなくなった狂気? あるいは、おかしな芸術家のただ迷惑行為か、それとも売名行為?
単に話が読めていないだけなのかもしれないが、前半のSebastianの生い立ちやら創作活動やらと、後半の事件とその真相がどうつながっているのか、よくわかないし。
芸術みたいなテーマを持ち込んでどうしたかったんだろう。一般受けはしなさそう。
ってことで、評判がよさそうな『コリーニ事件』のほうを素直に読んでおけばよかったかな。
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