ドイツ語書籍:Ju Hohisch: Das Obsidianherz
ドイツ語の本の紹介はひさしぶりな気もする。
2009年のDeutscher Phantastik Preis、Bestes deutschsprachiges Romandebütを受賞。新人長編部門のベスト。
歴史アクションファンタジーロマンスって感じの本。
いつものように日本のアマゾンやKoboストアにはない。ドイツのネット書店から、Koboで読めるepbub版。DRMはついていないので、mobiに変換すればKindleでも読める。
Ju Hohisch: Das Obsidianherz
220,000語
魔術や魔物(吸血鬼やら神話的な怪物やら)が存在するファンタジーな世界だが、実際の19世紀半ばを舞台にしていて、魔物みたいなものの存在はあまり信じられなくなっている。
時は1865年、場所はルードヴィヒ2世が治めるバイエルン王国の首都ミュンヒェン、そのまたNymphenburger Hotelを舞台にした、3日間にわたる、ある文書の争奪戦。
イギリスから姿を消したその文書、何やら世界を支配する力があるらしく、取り戻すべくミュンヒェンに派遣されたのがメインキャラクターの一人Delacroix。バイエルン側はそれに二人の将校をつける。さらに、なぜかルードヴィヒ2世はオペラ歌手(女性)をチームに加える。
争奪戦というからには、文書を狙う勢力は他にもある。
一つはカトリック教会のある教団。異端審問の生き残りみたいなもので、人殺しもいとわないし、魔物みたいな存在は、神の秩序に反すると、排除する。
さらにハプスブルクからの独立を目指すハンガリー人も文書を狙って、吸血鬼に依頼する。そして、壁でもどこでもすり抜けて現れる影の怪物。もう一人いるが、それは本の後半もかなり進まないと、正体がわからない。
そこに絡んでくるというか、巻き込まれていくのが、女性側のメインキャラクターのCorrisande。いい縁談を探して、ミュンヒェンの社交界に食い込もうとしているのだが、実は犯罪組織のボスの娘で、自分でも泥棒できる。ミュンヒェンにも父親の配下の殺し屋がいたりする。でも、そんな世界から離れて、ふつうの結婚をしようとしているのだが、影の怪物に襲われて、文書争奪戦に巻き込まれていいく。一番散々な目に会う。
魔術や戦闘シーンももちろんあるが、舞台がホテルの中だけということもあり、特徴的なのは人間関係の絡みあい。たとえば、Delacroixと将校の一人がオペラ歌手のかつての愛人だったり、Delacroixはいま争っている教団にかつて属していたり。あとは、オペラ歌手と吸血鬼のロマンスやら、将校の一人がCorrisandeに惚れたりと、いろんな脇筋の展開もある。
あとは、章ごとに話の視点が変わるので、いろんな角度から出来事を眺めることになるし、スリリングな展開になる。たとえば、策略を仕掛ける側の人間の視点から語られるかと思うと、仕掛けられる人間の視点から語られる、といった具合。
そんなわけで、紙の本にして800ページと長いが、まあ飽きずに読めるのではないかと思う。
結末はロマンス小説的なのりかなあ(ロマンス小説読んだことないが、想像するに)。
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